#295 弱みに付け込む? ここは日本じゃねぇんだ何が悪い!
「ふぅ……楽しかった」
数時間散策しまくった結果。十数人の綺麗で可愛い獣人方とお茶する事が出来た。やはり暑くて開放的な女性は色々とオープンなんだろう。声をかけて軽く会話するだけですぐにお茶に誘う事が出来たし、2人からはほっぺだけどキスもいただいた。未だかつてここまでの好成績を収めた街はここが初めてかも知れんな。
気になった事と言えば、随分と大食漢が多いなぁと感じたくらいか。
アニーやリリィさんと比べて倍以上は飲み食いしてた。アンリエットみたいに貪るように食す女性もいれば、お淑やかに食す女性もいたが、例外なく俺が想像するより大食らいだった。きっと食材の値上がりが関係してんだろう。この数時間で金貨15枚くらい消費したからな。
後は飯を食って寝て起きてまたナンパして飯を食って寝てを期限が来るまで繰り返すだけだが、それが終わったらどうすっかな。獣人領がこんなんじゃ、ほとんどの場所が肌が乾燥するほどの乾燥と暑さに晒されてるんだとすると、ここと同じように女性が薄着で日々を暮らしている場所の情報を得るとしよう。
そうと決まれば行商人はいないかね――っと、非常に都合のいいのを見つけた。
「そこの狐男。お前は行商人だろ?」
「ええ。そうでございますが……何か?」
捕まえたのは笑みを張り付けたみたいな糸目の狐獣人。こういう輩は何となくだけどやり手な感じで、ちょっとの油断でケツの毛までむしり取られるかもしれんが、俺であればいくら財を吐き出そうとも痛くもかゆくもないんで、見せつけるように白金貨を取り出す。
「ここみたいに薄着の獣人女性が往来を闊歩してる場所を知らんか?」
「……それでございましたら、王都に向かいはったらよろしおすよ。あの場所やったらここと同じくらいに過ごしやすい気温に保たれとりますよって。人もようさん居りますんで、お嬢はんの要望通のはずや」
「そうかそうか。ご苦労さん」
良い情報が聞けた。と言う訳でさっさと帰ろうとしたが、ぬるりとした動きで狐細目が立ち塞がる。
「どこ行きますのや?」
「宿に帰るんだよ」
「情報料をまだ貰ぅてへんよ」
「ああ。じゃあこれで」
素早く胸に剣を突き刺し、エリクサーで回復。それを目にも止まらぬ速さで首と四肢へ合計5回ほど繰り返すと、狐細目はたっぷりの脂汗を噴き出し顔面蒼白のまま立ち尽くしていた。
「い、いきなりえらい事しよりますな」
「なぁにお前らほどじゃない。今回は人が多いからこの程度で済ませたが、街道で出会ったら容赦しないからせいぜい神にでも祈っておけ。後、俺の事を誰かに喋ったりすんなよ。まだ地獄の門をくぐりたくないだろ?」
最後に、情報料として銅貨1枚をその懐にねじ込んでやる。
一体何を扱ってるのか知らんけど、奴を発見した時、その反応はかなり真っ黒――つまり罪人って事だ。一応そばにあった馬車に人の反応が無かったんで奴隷商的なモンじゃないならとりあえずは良し。この先も俺という影におびえながら暮らすといい。
「次の目的地も決まったし、後はゆっくりと女性との一時を――お?」
そろそろ飯が出来てるだろうと宿に向かおうとした俺に、この街では大分と厚着をした小さい何かが掴み掛り、何かから隠れるように背後を位置取る。
よく状況が確認できないまま、とりあえず野郎か幼女か原石か即救助かの確認をするためにフードを取ってみると、クリッとした金と銀の瞳に俺と同じ銀だけどぼさぼさのヘアーの犬耳っぽい獣人子供。
「男か女か言え」
「……女」
「よし助けよう」
こいつは将来有望な獣人だ。格好と薄汚れ具合を見るに、外からの不法侵入でもしたんだろう。これが野郎だったらいくつか手順を踏んで助けるか助けないかの判断を下すところだが、これほどの美幼女だ。10年もすりゃかなりの美女になるはずだ。助けん理由がない。
って訳で、すぐに〈万物創造〉で俺と同じ許可証を作りだして分かりやすいように下げさせ、適当な屋台で串焼き肉と飲み物を購入して店先に椅子を出して腰を下ろす。
「食え。たんと食って大きくなれ」
「いいの?」
「構わんぞ」
俺がGOを出すと、顔面を押し付けるようにしながら串焼きにかぶりつく。どうやら久しぶりの食事らしいな。美味いかどうかを聞いてもただ頷くだけで喋ろうとしないので、屋台から勝手に一本抜き取っては幼女に渡すを5回くらい繰り返してようやく一息ついたのか、ココナッツみたいな物から出たジュースを一気に飲み干す。
「満足した」
「そりゃよかったが、レディとして口がベトベトなのはいかんぞ」
ウェットティッシュで幼女の口元をぬぐっていると、武装した野郎獣人が慌ただしく駆けている姿を発見。何を探しているのか何となく当たりがついてるんでチラッと横に目を向けてみると、顔を青くしながら俯いてしまった。
そのくらいで身を隠せれば世界には暗殺が蔓延るんだが、そう言う所はキチンとしてるんですぐにそいつらが近づいて来る。表情から目当ての物だとの確信を得てるんだろうが、残念ながら事前に手は打ってるんだなぁ。
「おい。そこの小汚い格好をしたガキ。許可証を見せてみろ」
「あ……あぁ……」
「馬鹿なのかお前等。ここにあるのが何か分かんねぇ訳?」
堂々とした態度で幼女と俺の許可証を見せつけてやると、野郎共は予想だにしてなかったようで分かりやすすぎる程目ン玉を見開いて驚き、幼女自身も気づいてなかったようでビックリしてるのでさりげなくフードをかぶせて隠蔽。
「分かったか無能。その容量の少ない頭で状況が理解できたならさっさと視界から消えろ。薄汚ぇ野郎が可愛い幼女の目を汚すような真似をすんな」
「貴様ぁ……っ!」
「止めろ。だが、君もあまり我等に生意気な口を利くな。今回は此方に非があるが、そうでなければ十分に処罰対象だ」
「おいおい。たかがこの程度で処罰されるって殺伐とし過ぎだろ」
「我等はこの街の守護を担っている兵士だ。それを相手に無体を働くとなると、此方にも守護しようという気概が無くなるのも至極当然だろう?」
「確かにそうだな。それがお前さんみたいにまともな思考回路を持っていれば信用できるが、人ってのは権力を持つと増長する生き物だ。兵士って事を笠に着て女に性行為を強制したり、微罪を大罪に仕立て上げて金銭を要求しない保証がどこにある?」
「論点のすり替えをするな。此方が言っているのは年相応の口の利き方をしろと言っている」
「残念。こっちはロクな教育を受けてねぇし、ここの住人でもなんでもない俺がお前等に気遣う理由なんざ皆無だろうが。それよりもサボってていいのか?」
「……行くぞ」
勝ったな。
最後にチラリとこっちを一瞥した野郎と、今にも咬みつかんばかりに牙を剥きだしにしてた野郎が立ち去ると、青い顔でぶるぶると震えていた幼女がようやく落ち着きを取り戻したんで、本題と行こうか。勿論、ちょっとした騒ぎを起こしたって事で串焼き屋台から離れなきゃなんなくなった訳だがどうせ宿に帰る途中なんで問題ねぇ。
「で? 何だって不法に街に入って来たんだ」
「っ!?」
「逃げんで良い。捕まえる予定であればあの馬鹿共に突き出してっから。聞いたのは単純な興味だ」
まぁ、そこそこ厳重である門の警備をどう突破したのかも気になるところだが、問題なのは何をしに来たかだ。
「おかーさんに、薬」
「病気か?」
「分かんない」
何でも、この幼女は母親と冒険者をしている父親の3人で別の場所で暮らしていたらしいが、この暑さのせいで魔物が寄り付かなくなり、目に見えて稼ぎが下降。それじゃイカンと父親が遠征。今日で半年くらい帰ってこないとなると、まぁ……そう言う事なんだろう。
そうして父親を失った2人は、母が生まれつき病弱と言う事もあり、肉体労働くらいしか働き口のない寒村では生きていけないだろうとここまでやって来たはいいが、あまりにも高額すぎる税にどうにもできず、かといって戻ったところで待っているのは緩やかな死。なので、あそこで暮らしていたが限界を迎えたようで、昨日から苦しそうにしたまま目を覚まさないらしく、コッソリと馬車の下に潜り込んで強引に入って来たらしい。
「ふーん。で? 薬を買う金はあるのか?」
「これ」
差し出されたのは銅貨2枚。一応金は持っているようだが、どうやって稼いでんだろう。あんな場所にどんな働き口があるんだろう。ちょっと嫌な予感がする。
「なぁ。お前の母親って綺麗か?」
「? よく分かんない」
「言い方を変えよう。父親が居なくなってお前の母親に話しかけて来る男はいたか?」
「沢山いた」
こいつは美人さんって線が濃厚だな。この幼女にしても将来有望過ぎる容姿をしてるんだ。その遺伝子を丸々保持しているとなると、病弱と言うオプションも加わってそりゃあもう野郎がほっとかんでしょ。俺だって同じ選択をする。
幼女の母親は美人。そしてその労働は、あんま考えたくないが娼館まがいをしてると判断しよう。
こうなると元々病弱+不衛生な環境での性行為=病気を移されたとの思っておこう。そして、当然ながら銅貨2枚でそれを何とかできるような薬は買えない。そう告げるのは簡単だけど、ここで恩を売っておけば男に戻った時に親子丼なんてできるかも知れん。げへへ。
「運が良いな。ちょうどいい薬を持ってるから売ってやるよ」
「いいの?」
「ただし。母親が綺麗かどうかによって値段が変えるつもりだから住んでる場所まで連れてけ」
ニッコリ笑顔でエリクサー原液を見せびらかすと、事前に通行パスをくれてやったり腹いっぱいになるまで飯を食わせ、甘いジュースまで飲ませた行為がここで生きる。
「こっち」
うむ。実に楽ちんだ。




