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#275 お仕事の邪魔しちゃいかんよ?

「どうやろうか。似合ってますやろか?」

「もちろんですとも。これがリリィさんの言っていたドレスかぁ……素晴らしい!」


 そう褒めると、リリィさんも嬉しそうに笑みを浮かべながら抱き着いてくれる。

 俺のためにと選択したそのドレスは、前は首から臍辺りまで大胆に布地がカットされ、背中は丸出し。腰辺りから首の後ろで結ぶような形になっているから、あの2つの大山がそれはそれは柔らかそうに揺れて眼福だし、生の体温と甘い香りが堪らんですばい♪

 スカートは残念ながら床に届かんばかりのロングであるものの、生地ごしでもすらりと伸びる足が透けて見えるのはGJ。こいつぁ〈写真〉に収めねぇって野郎が居たら、そいつは間違いなくゲ〇かイン〇だろう。これほどまでに股間にビンビン来るほどエロい格好を見て興奮しなけりゃ、お気の毒だがそう結論付けるしかねぇ。


「……ちょっと。リリィばかり褒められると興味ないウチでもイラッとするんやけど?」

「何言ってんだ。アニーもアニーで綺麗だぞ? 意外と長い髪も似合うんだな」


 ボーイッシュで猫獣人なだけあって目つきは若干鋭く映るアニーでも、〈万物創造〉で取り出した長いウィッグを着けて紅いドレスを見に纏い、女性らしさを強調するような化粧をすれば、切れ長の瞳と捉えられて魅力的な女性として野郎共の目を十分に惹くだろうが、俺はいつものアニーの方が好みだ。

 ドレスも布が多くて歩きずらい! とひざ上までの短いタイトめのドレスを選んで、リリィさんが2時間以上かけたのと対照的に5分もかかってない。


「ご主人様。あちしはどうなの? 似合ってるのなの?」

「おうともさ。アンリエットも十分に可愛いぞ」


 アンリエットはひらひらしたドレスが全く好みに合わなかったようで、長い髪を短くまとめてスーツっぽい格好をして嬉しそうに飛び跳ねている。


「……まぁ、それはそれで嬉しいんだけど、やっぱアスカと比べると自信失うわぁ」

「何言うとるのん。アスカはんが史上最強に可愛ええのは当然の事や」


 当然の流れとして、俺も王の前に出るのだからと着飾った訳だが、当初の予定としてはいつも通りのシャツにジーンズ姿で出るつもりだったんだが、リリィさんがそれはそれはゴネにゴネた。アンリエットですらドン引きするほどのゴネに、仕方なしに黒いドレスを身に纏っている。


「ったく……動きにくくて仕方ねぇ。万が一親衛隊とかが襲い掛かってきたらどうすんだよ」

「何言うとんねん。アスカが人類相手にまともに傷つくわけないやろ」

「んなのは当然だがお前達だよ。助けんのが遅れて怪我でもされたら王宮ぶっ壊すかもしれん」


 魔神討伐の一戦で2人ともレベルが上がっただろうが、やっぱ見知って一定以上の好意を抱いてもらっている相手が傷つくのは見たくないからな。メディスが2人をズタボロにしてたのを見た時もかなり頭に血が上ったからな。もし野郎なんかに傷モノにされたなりゃあ……イカンイカン。想像だけでこの王都を消し炭にすることろだった。


「嬉しいですわぁ♪ アスカはんにそないな事言うてもらえるやなんて」

「何言うとんのやアホ。怪我程度で都市1つ潰しとったら魔族と何ら変わらんやろ。ウチ等もレベルがぎょうさん上がってすぐ死ぬような事になら片へんから、ちぃとはモノ考えて喋れや」

「へいへい。どうせ俺が悪いんですよ」

「せや。それにやな、アスカに危害を加えようモンなら、ユニにアンリエットが黙っとらんわ」

「え? アンリエットはまだしもユニは王宮に入れんのか?」


 ペット禁止って訳じゃなさそうだけど、さすがにユニレベルの従魔を入れるのは、従えている俺側からしても大丈夫かよと心配になる。何しろ、魔神を討伐したおかげでそのレベルが大きく上がって、今ならあの時の鳥にも勝てるだろうとかなり息巻いている。そんなユニに互角以上の戦いを繰り広げたリエナって……。

 まぁそれは置いておいて。とにかく、ドエライ強い従魔が王のすぐ側までやってくる事は、防衛の観点から見ても断固たる拒否をするのが家臣の務めだろ。


「マリュー侯爵にホンマに大丈夫なんか聞いたんやけど、大丈夫や言うてたで?」

「ユニ本人はなんて言ってんだ?」

「受けて立つと言ってましたな」

「じゃあ連れてくとするか」


 てっきり、ああいった場所が嫌いで本でも読んで俺達の帰りを待ってるんだとばかり思ってたが、侯爵のその返答を連中からの挑発と受け取ったんだろう。ここには居ないがさっきから殺意を感じるので、やる気は十分ってところか。


「さて。準備も整ったし行くとしますかね」

「軽いわぁ。これから人族の頂点に会いに行くんやで? 緊張とかないんか?」

「ないね。別に嫌われようが、俺の人生には何の意味もない奴だからな」

「やからって、王の前でそないな事言わんとって下さいよ」

「わーかってるよ。出来る限り我慢する努力はする」


 さて。一応ドレスコードはキッチリ揃えたし、馬車で来るようにとの指示があるのでいつも通りの馬車で王都内を走り、特に何かある訳でもないまま王城前の跳ね橋の所までたどり着くと、そこにはアクセルさんとマリュー侯爵が立っていた。


「お待ちしていましたよアスカさん。今回もまた随分とご活躍だったようで」

「魔神と言うのはおとぎ話の類だと思っておりましたが、まさか実在し、あんな事を可能にしてのける強さ……いやはやアスカ殿の強さにはもはや神の領域ですな」

「いい迷惑だよ。俺は単純に綺麗で可愛い女性を助けて好感度を稼いだだけなのに、こんな目に合わなきゃなんないなんて最悪だ。ジジイ団長だけで十分だろ」

「確かにそうかも知れんが、それは常識の範囲内に収まる魔物に限られるに決まっとるじゃろ。ドラゴン等ならまだしも、今回は魔神。おまけに会話をしたなどと言う情報はお主でなければ提供できぬのだから仕方あるまいて」

「分かってるよ。って訳だから、さっさと王のとこまで案内してくれや。スパッと終わらせたい」

「それでは案内します」


 マリュー侯爵先導の下、王城の中に足を踏み入れた訳だが、やっぱ城って言うだけあって今まで見てきた領主の屋敷なんかとは比べモンにならんほどデカいし頑丈そうだし警備をする騎士やメイド・執事の数が桁違いに多い。

 執事は無視するとして、メイドちゃんは誰もが美人さんだけど、随分と可愛い系のエンカウント率が異常だ。恐らく、綺麗系よりこっちの方が王の趣味だろう。


「ではこちらでお待ちください」


 通された一室は、随分とファンシーなデザインで埋め尽くされている。ソファもテーブルもピンクを基調としてるし、カーテンなんかもふりっふりだし、壁紙なんかも随分と少女趣味だ。

 それに関してはまぁ別に構いやしないんだけども、てっきり真っすぐ王のとこまで案内してもらえると思ってただけにこの肩透かしはちょいと気になる。


「こんなとこに通されたって事は……待機か。どんくらい待たされんだ?」

「一応30分ほどと聞いております」

「長くね?」

「アホか。普通やったら王に会うのに何か月も前から謁見内容を書いた手紙を送り、許可が出た思うたらそっから何日も前から延々と待たされてようやく叶うもんなんやで?」

「こんな短時間で会ってくれる言うんは、それだけ魔神の脅威を知っとるからや思いますわ」


 それもそうか。てっきりテンプレ通りにノータイムで王様ん所まで直通出迎えると思ってたのに、現実はそう言った面倒な手順を踏まにゃならんらしい。アニー達の話を聞くに随分と無茶をして割り込んだようだが、ただ茫然と待つってのも無駄だからな。


「じゃあ暇だし、漫画でも呼んで待ってるわ。侯爵とアクセルさんはどうするんだ?」

「では……ご一緒してもよろしいでしょうか?」

「読みねぇ読みねぇ」


 と言う訳で全員での読書タイムに入った訳だけども、これは一体どう反応していいんだろうな。

 現在、この部屋の四方八方に人を示す光点が全部で20ほど存在し、そのほとんどが俺に目を向けているが特に殺意や害意と言った物は感じない。

 まぁ、十中八九城の人間なんだろうけど、特に何もしてこないなら呼び出しがあるまではぐーたらするかとベッドを取り出し、ゴロゴロしながら漫画に目を向けつつ、意識は〈万能感知〉に向いている。


「アスカ。ドレスがシワんなるで?」

「いいんだよ。別にシワの1つや2つくらい出来たってデザインだといかいって誤魔化せば。アニーもどうだ? 寝っ転がりながらは楽でいいぞ? 眠くなったらすぐ寝れるしな」

「さすがにそこまでの度胸はあれへんから遠慮するわ」

「そうかい」


 適当な会話をしながらさりげなく王をディスってみたが、特に変化は見られない。よほどの精神訓練を積み上げたのか。それとも単純に王を王と思っていないのか。まぁ、どっちにしろ襲って来ないって言うのならこっちも無視を決め込むだけだ。


「主。良いのですか?」

「何がだ?」

「気付いていない訳ではないのでしょう? 放って置くつもりですか」


 俺にそう訊ねながら部屋中をぐるりと見渡す。たったそれだけなのに周囲の人間から恐怖の感情が確認できる。どうやらあの程度の隠形でバレていないと思っていたらしい。


「別に何かしたわけじゃないしいいだろ」

「何か起きてからでは遅すぎるのでは?」

「お前は……この程度の相手に遅すぎる反応しか出来ないと本気で思ってんのか?」

「い、いえ……決してそのような事は」

「なら無視しとけ。連中もきっと仕事をしてんだから、気付かないフリをしてやるのが良いんだよ。30分もあれば終わるだろうから我慢しとけ」

「分かりました」


 そんなやり取りを終えれば、俺もユニも周囲の視線など完全に無視。時間が来るまで読書に明け暮れた。

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