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#223 耐えられるかなぁ~耐えられないだろうなぁ~

「さて。まず初めにどうしてこの連中を襲ったんだ?」

「決まってんだろ。貴族ってのは金になるからなぁ。冒険者と偽って近づいたのさ」

「理由としては真っ当だな。しかし罪人ってのは街に入れないんじゃないのか?」


 30人からなる盗賊団を昨日今日に作りだすのはまず不可能。そこそこの成功とリーダーであろうおっさんのそこそこの実力が合わさったうえにそこそこの幸運が降りかからないとここまでデカくはならない。

 黒幕がこの日の為だけに用意したと思えなくもないが、大人数を雇うとなれば金の動きから足が付きやすいので、その線は薄いだろうと考えている。


「それはそうせざるを得ないほど大きな都市か大きな利益を出している街だけね。わたし達が暮らしていた場所は、規模の点から見てもそこまで厳重に罪人かどうかを取り調べをしたりしない――違うわ。そこまで凶悪な罪人を裁くほどの実力者が居ないと言った方が正しいかしらね」

「世知辛いなぁ。アンタら貴族的な連中だろ? そういう事に力をいれないなんてやっぱ……「グリュッセン」そう。そいつが一方的に悪いってのは改める必要があると思う」


 俺の沈黙に対して、ユニがため息交じりで名を告げてくれたのでそのままへらっと言ってのけると、さすがに自分達も悪いと自覚し始めたのか誰もが反論してくるような事はなかったので、続きをする。


「まぁ入った方法はどうでもいい。聞きたいのは誰に頼まれてやったかって事だ。まずはレベル1」


 どうせ素直に喋る訳ないだろうと分かってるんで、問いかけ終わると同時に二の腕に剣を突き刺す。


「ぐあああ!」

「さぁ答えろ。無駄な時間は使いたくないんですぱっと答えれば楽になるぞ」

「へ……っ。そう簡単に――ぐおおおおおおお!!」


 2本目3本目とさらに追加。それを四肢に突き付けたのを契機にユニが足をどけたので4本目は肋骨の隙間に。


「レベル2。どうだ。少しは素直になる気になったか?」

「ぐ……っ。知ら、ねぇなぁ。襲ったのは貴族だからってだけだって言ってんだろ」

「……残念だ。レベル3」


 〈万能感知〉の前に嘘は通用しない。という訳で突き刺した剣の1つにMPを込めると、刀身から白い靄が滲み出し、穏やかに吹き付ける風に絶対零度を乗せるが目的はそっちじゃない。


「あ……あ……」

「どうしたんだ? 随分と寒そうじゃないか」


 俺が突き刺したのは属性剣で、今MPを注いだのは氷の魔法剣。使用者のMP次第では湖すら凍らせる事が出来るとかできないとかいう代物で、今は大体マイナス30℃くらいをイメージしてるんで、徐々に皮膚や肉が凍り、流れる血液がその極寒を全身にかけ巡らせ、結果としておっさんは全身が青くなっていく。


「なな、なにを……」

「まぁ死にはしないから安心しろ。依頼主を吐けばすぐに開放してやるって。今日1日はここで寝泊まりするから、我慢できずに白状したくなったら教えてくれ」


 最悪凍死したってなんとでもなるんで、少しの間放置しよう。生憎天気は晴れてるけどそこまで温かい訳じゃないので、1・2時間放っておいても溶けるような事はないだろ。


「ふあ……っ。MP使って疲れた。これが鳴ったら起こしてくれ」

「分かりました」

「ほんじゃ。あんた等も少し休んでるといい。俺ぁゴロゴロしてっから起こしたりすんなよ」


 そう釘を刺して愛用の枕を取り出してさくっと寝る。さすがに某昼寝の天才の速度には及ばないが、俺も十分に早い自信は――ぐぅ……。


 ――――――――――


「――るじ。主。時間ですので起きて下さい」

「んぁ? もうそんな時間か。さてさてどうなったかね」


 ユニに揺すり起こされ、10秒くらい伸びをしてからおっさんの様子を確認すると、どうやら寝すぎたせいで凍死してしまっていたので、四肢に突き刺さった剣を一度抜いてエリクサーをひとたらしするとすぐに全身に張り付いていた氷が水になって、青色だったおっさんが元の色を取り戻したので再び四肢に剣を突き立てる。


「おはよう。凍えて死んだ感想はいかに?」

「ぐ……う……」

「さぁ質問だ。連中を襲えと指示した人間はどこのどいつだ?」

「……知らん」

「ふぅ……何がお前をそこまで義理立ててるのか知らんが、俺は一切容赦しない。レベル4だ」


 ユニに視線を向けるとすぐに意図を察したようで背中を踏みつけたので一度剣をしまってから別の剣を取り出してそれにMPを流すと、刀身が一瞬で真っ赤に染まって猛暑の様な熱気が広がる。

 それをあえて見せつけるように眼前の雑草に刃先を触れさせようとしたが、発生する熱気がそれよりも先に焼き焦がす。


「これを今からお前の太ももに突き刺し、足首に向かって進めて行くのを何度も繰り返す。答えたくなったら止めろなり助けてなり言えよ~」


 出来れば四肢を同時にやりたいんだが、俺のやり方に完全にドン引きしたやんごとなき連中はもう役に立たないので、両手に握りしめた炎の魔法剣を突き刺す。


「~~~~~~~~っ!?」

「お。頑張るねぇ。しかし何がお前にそこまでさせるのかねぇ」


 じゅうじゅうと肉の焼ける音。

 鼻をつまみたくなるような異臭。

 耳を塞ぎたくなるような野郎の気持ち悪い悲鳴。

 その全てが合わさった時。大抵の奴はいなくなる。そりゃそうだろ。これだけのえげつない光景を見せられて平気って方がどっかおかしい。俺は〈恐怖無効〉があるんでどこか別の世界の出来事みたいに映る。平たく言えばゲーム画面っぽい。

 やっても罪に問われないなら、殺人もまた楽しみの一環。だから普通に盛り込まれてるし、人を殺すと言ったジャンルのゲームが主題でなかろうとちゃんと存在する。

 人間だって所詮は獣。本能では他を排斥したいと思っている表れなんじゃないかね。


「人の焼ける匂いは何とも不快ですね」

「美味しくなさそうなの」

「別に食うために焼いてる訳じゃないぞ。さて……気が変わったか?」


 現状で話を聞いてもまともに喋れないだろうから、またエリクサーをひとたらしして炭化した両足をもう一度炭化させるために再生する。


「……」

「言っておくが、お前が口を割るまで死ねないぞ? 人殺しの依頼を受けることが悪とは言わんが、命を懸けてまで黙る理由ってのはなんだ?」


 盗賊団なんて事をやらかす人間にしては異常なくらい義理堅いように見えるが、どう見たっておっさんは三下。そもそも山賊なんてやってる時点でそこまで我慢強い人間には思えない。一体何がこいつをここまでの我慢を強いているんだろうか。


「アンリエット。そいつの腕を動かないように押さえてくれるか」

「分かったのなの」


 俺の指示に嬉しそうに答えたアンリエットがニコニコ笑顔で近くの腕を押さえつける。その時に力加減を間違ったのか骨が折れる事が聞こえたが、指摘したら泣きそうな気がするから努めて聞かないフリをする。


「さーてと。それじゃあ始めるとしますか」


 意図せずアンリエットの馬鹿力のおかげで、血管が破裂するんじゃないかってくらいに浮き出てるんで苦も無く打ち込む事に成功した。まぁ……それでも失敗はしたんだけどね。


「アンリエットだけ放していいぞ」

「はいなの」


 こうする事で全身に薬が回り、ほどなくして意識がもうろうとして素直になってくれるだろう。


「主。この男に一体何を打ち込んだのですか?」

「自白剤って言われるモンでな。これを打ち込めば大抵の人間は素直になる」

「では何故初めから使わなかったのですか?」

「そりゃもちろん。俺のダラダラタイムを邪魔した憂さ晴らしがしたかったからに決まってんだろ」


 他に様々な拷問を体験させる事で意志の力をそいでおくという目的もあったんだが、大部分はそっちが理由なんでさらっとそう言ってのけると、さすが〈品質改竄〉でよりグレードアップさせただけはあってすぐに顔から表情が消えうせた。


「さて……それじゃあ初めにお前を雇った人間の名前を教えてもらおうか」

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