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#185 アスカも悪よのぉ……。いえいえ。魔族ほどではありませぬ

「さてと。死体にエリクサーを、振りかけよ~う」


 いつものように斬り払った死体を形だけくっつけた後。特製ワイヤーでがんじがらめにしてからエリクサーをひと吹き。たったこれだけで切断面はあっという間に影も形もなくなり、ゆっくりとだが光彩が色を取り戻し始める。


「っ!? ぬああああああああああ!!」

「無駄無駄。諦めなって」


 メフィレニアは生き返ると同時に戦闘態勢に入ろうと力を込めるも、実験に実験を重ねた特製ワイヤーは俺でもかなり力を込めないと千切れない代物だからな。負けてる時点で抜け出すのが不可能なのは揺るがない。


「……まさか、アンタみたいなガキに負けるなんてね」


 散々抵抗した挙句にようやく状況を理解し、何かを諦めたようにため息をつきながらすっと戦意を霧散させた。


「敗因は油断とかしてっからだよ。さてメフィレニア。完膚なきまでに負けたんだから俺の言う事をちゃんと聞いてもらうが異論はないな?」

「いいさ。アタイは敗者だからね。煮るなり焼くなりすればいいさ。なんなら犯してもいいんだよ?」

「最後の提案に関しては非常に魅力的だが、このナリでそう言うのは今はいい。問題なのは俺があんた等を倒したという事実がこの世界に知れ渡る事なんでな。悪いがあの脳筋岩コロと共に事の顛末に対する口裏を合わせてもらうぞ」

「変なガキだね。アタイ等魔族に勝ったなんて最高の栄誉だろうに。何が不満なんだい」

「俺には俺の事情があるんだよ。あんた等だって、シュルティス達が戦争に参加しない事が不思議なんだろ? それと同じだと思えばいい」

「まぁいいさ。勝者がそれを望むってんならアタイもギギも従うさ。それが魔族ってモンだからね」

「ヨワイ。キョウシャニシタガウ。オキテ」


 とりあえず了承は得たが、メフィレニアはともかくギギの方はどうも怪しい。主に頭の出来に関しては不安しかないが、とりあえず話すだけは話すとしよう。


 ――――――――――


「ただいま~」

「お帰りなさいませ」


 2人を引き連れて帰ってくると、魔族側の従者達は主人を心配するようにわっと詰めかけるんだが、方やこっち側の従者? はソファに寝転がってのんべんだらりと漫画を読みふけってやがる。つーかあっち側の従者連中も読んでたよな。〈万能感知〉が連中のコロコロと変わる感情を送ってくれてたからな。


「やっと帰って来たのだ。アスカのマンガ読み終わったから次を早く寄越すの――痛っ!? いきなりなにするのだ!」

「なんとなくだ。ここでの用が済んだからさっさと行くぞ」

「もういいのだ? 勝負はどうなったのだ?」

「ご主人様が勝ったに決まってるのなの」

「面倒だったんで和解で済ませた。さっさとアレクセイのトコに向かうが、お前も来るのか?」

「当然なのだ。わちはアスカが死ぬまで甘味をねだり続けるのだ」


 という事で屋敷を後にする。俺はもちろんマリア達にここで説明するつもりはないが、あちらには色々と話してもらわにゃならんので、口裏を合わせる為にこっちを多少なりとも下げて整合性を持たせてある。そこにアンリエットとかが口を挟まないようにさっさと逃げだしたわけだ。

 全体的な流れとしてはこうだ。

 まず手始めに、俺の行動にキレたメフィレニア達が俺をぶん殴って吹っ飛ばし、バトルが始まった。この辺りは事実らしいんで、物語の冒頭部分としてそのまま採用させてもらった。キレられるような事をした記憶は全くないんだがな。

 そうして始まった一戦は、驚く事に互角に近い物を繰り広げた。という事にしておいた。この辺りは両者の怪我の具合を考慮すればこうするしかない。何せどれだけ傷つけても〈回復〉があっという間じゃないが勝手に治すんで勝利ってのは真実味が薄く、敗北ってのは連中の取り巻きが納得しない。なら引き分けってのがそれっぽく聞こえるだろ?

 とは言え、そんな説明をさせれば俺と連中との差に気付かないほど馬鹿じゃない。そう信じたいので、いやらしい攻撃の数々に相手の裏をかくような変幻自在の攻撃は徐々に種が尽き始め、結果的に魔族という身体能力1つで勝ちを得た。そういう事にしておけば、主人に忠実な連中も納得するだろう。

 が――そこまで追い込んだのに何故俺を殺さなかったのかとの疑問が残る。この辺りはどうしようか俺も悩んだ。

 一番もっともらしい理由は、俺が無様に命乞いをする姿を哀れに思って助けやったってモンだが、さすがにこっちにもプライドがあるんで速攻で排除。3人で肩を並べてあーでもないこーでもないと話し合った結果。珍しいモンをくれれば命だけは助けてやるという事で落ち着ける事にした。

 なんで、メフィレニアには極上の肉と酒にエキゾチックな妖艶さをさらに上昇させるような見事なドレス。ギギには失った四肢をオリハルコンに変更させた。見た目にも分かるほどの何かがあれば、自然とその説明を呑み込めるだろう。

 こんな感じの事を、2人で必死にギギに説明を続けて何とか覚えさせることに成功したから、予想以上に時間がかかったし、しばらくはメフィレニアに骨を折ってもらうしかない。その為に美味い肉と酒を食わせたんだからな。

 勿論。従者にも俺という存在の他言無用は徹底させる事を懇々と語った。表向きの理由として、来るべき日に向けて余計な魔力消費を抑える必要があるとか言っておけば、簡単に納得するらしい。ちょろい。

 そんな感じで、俺とメフィレニア達との間には人知れず不可侵協定が結ばれた。元よりこっちには手を出すつもりは毛頭ないし、あっちにはこっちに手を出せばどうなるかが分かっているので、余程の事がない限りは2度と出してくる事はないだろう。


「さて。これで邪魔をしてくるような馬鹿はもういないな?」

「多分大丈夫だと思うのだ。それよりもお腹が空いたからごはんが食べたいのだ」

「あちしも食べたいなの」

「ワタシも出来れば食事をしたいですね。それと、昨晩から延々と撫でまわされてストレスが溜まっているので毛繕いをお願いできませんか?」

「そう言えば朝飯まだだったもんな。そんじゃ適当な場所で止まって飯にするか」

「かしこまりました」


 出来ればアレクセイの領地に入るまではお預けにしたかったが、1日3食ってのは俺等だけでのルールみたいなモンだ。この世界じゃ冒険者でも1日2食。貧しければ1食なんて事もざらにあるらしく、アニー達も俺が3回飯を食うのに多少驚いていたが今では普通に受け入れている。ちなみにマリュー侯爵は驚いてなかったんで同じなんだと思う。

 適当に数キロ進んだ先にあった岩の陰で馬車を止め、テーブルを広げて前菜代わりに冷しゃぶを並べると、相当に腹が減ってたんだろうな。飲み込むようにうずたかく積み上げた肉をむさぼり喰らう。そんな姿を横目にジュースやお茶などをピッチャーで並べて準備の前の準備が終わり、今度は食材の下ごしらえだ。

 基本的に俺が飯を作る場合。いつものメンバーだけであるなら既に食材の好みなんかは把握済みなんで、俺がその時たべたいものを作る。だって〈万能耐性〉が病気なんかも予防してくれるから、どんなに乱れた食生活でも自由自在だから。おまけに今回はアニーとリリィさんが居ないから、基本的に肉だけ出しておけばほぼ文句を言うような連中ではない。ユニは健康については非常にやかましいが、最悪サプリメントを提供すれば大人しくなるんで、今日のメニューは手軽にスパムおにぎりにすっか。


「主。野菜が少なくありませんか?」

「ならユニには青汁を用意してやるよ」

「アスカ。おかわりなのだ」

「あちしもなの」

「ほれ」


 そこそこ行儀が悪いが、出来上がったスパムおにぎりを2人に向かって放り投げると、一瞬我先にと言った動きを見せたものの。俺の一睨みで即座に大人しくなり、まずはアンリエットがそれに喰らい付き、次に投げたおにぎりを今度はマリアがと言った具合に交代交代で食べ進め、ユニには一回り大きいサイズを愛用の皿に置いてやり、俺は作ってる最中につまみ食いで腹を満たす。


「それにしても……魔族ってのは随分と沸点の低い連中が多いよな」


 まさか速攻で殺しに来るとは思わなかった。せめて二言三言弁明の隙があればあんな面倒臭い事をしなくても済んだのかもしれんが、そんな猶予すらなかった。困ったもんだよ全く。


「もぐ……アスカが異常なくらいに逆鱗に触れまくってるだけなのだ。メフィレニアもギギもわち達と敵対してる中でも温厚な部類に入るのだ。それもスキルなのだ?」

「んな面倒臭いスキル持ってる訳ねぇだろ」

「そうなのだ?」

「そうなんだよ。それよりも飯終わったならさっさと行くぞ」


 喋ってる間にスパムおにぎりを100以上作り、そのほとんどをマリアとアンリエットが胃に収めた。これなら昼までは持つだろうと素早く片づけを済ませてアレクセイの居る研究所に向かって走り出す。

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