表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/357

#182 5回……いや、誤解だったんだよ

 まったく。ぷんすかぷんですよ。己の実力不足を棚に上げて人を化け物呼ばわりするなんて、まさに鬼畜の所業っ! なので一度くらい自分がどれだけ弱い存在であるのかを知らしめてあげようじゃないか。いい加減なしてさ怒ってんのかも知りたいしな。


「さて……とりあえずやられたらやり返すのがポリシーなんでな。お前にこれから必殺の一撃を見舞う。これを防ぐなり避けるなりしろ。10秒以内に死ななければこっちの負けでいいが、死ねば頭を冷やして色々質問させてもらうぞ」

「舐めているのか? 人種如きが始祖龍で魔族の余から10秒で殺すなど――」

「スタート」


 文字通り全力の一撃だ。踏み出す勢いも。剣を握る力も。振り下ろす速度も。目覚まし時計を破壊せん威力で放ち、何の手ごたえもなく振り抜き終えると、爆発するような突風が俺を引きずり込むように襲い掛かり、斬撃の際に発生した衝撃波が地平線の彼方――見えなくなるまで延々と前に立つすべてを薙ぎ払って行った。アレクセイの領地には背を向けておいたから、研究所破壊で男に戻る研究がパーになるフラグは回収せぬ!


 ――レベルアップにより〈万物創造〉にスキル〈消費MP軽減Lv2〉が追加されました。

 ――レベルアップにより〈料理〉にスキル〈工程短縮化〉が追加されました。

 ――レベルアップにより〈剣技〉にスキル〈初級剣術〉が追加されました。

 ――レベルアップにより〈回復〉の効率が上昇しました。

 ――レベルアップにより〈写真〉にスキル〈動画〉が追加されました。


 久しぶりのスキルアップだ。という事は、シュルティスには常人よりはるかに上がりにくい俺の経験値を一気に跳ね上げる程強かったって事か。まぁ、あれだけヤバい一撃をぶっ放してる時点で弱い訳はないか。

 あれよりすごいマリアの本気ってどんなモンなのかと気になったが、今はそれより先にやる事がある。シュルティスの復活だ。いろいろ話も聞きたいし、このレベルの魔族を倒したと魔族側に知られるとまた厄介な事になりそうだから、さっさと生き返らせるか。

 さて……問題のシュルティスだけど、俺の一撃を受けて既に肉体が2つになって転がってる。まぁあれだけの一撃を受けて無事な訳がないか。表情も自分が死んだなんて全く疑ってないみたいだし。とりあえず始祖龍の血を瓶に小分けにしてからエリクサーを吹きかける。


「……貴さ――な?」

「なるほどなるほど。血を抜き取ってから復活させるとそうなるのか。勉強になるなぁ」


 復活と同時に襲い掛かろうとしたシュルティスであったが、ほぼ一滴残らず血を収納させてもらったからな。一瞬目から光を失い、こてんと倒れた。相当酷い貧血状態なのに一気に立ち上がるとするからだ。俺も経験があるから分かるぜ。


「一体……何を、した」

「1回殺して血を貰ったんだよ。そっちにその感覚はないだろうけどな。嘘だと思うなら後ろを見れば少しは納得できると思うぞ」


 そう促せば、シュルティスは背後を見るしかない。とはいえ、余程強さに自信があるんだろう。普通に考えて現在進行形で争っているはずの相手に堂々と背を向けるって、明らかに舐めてるかうっかりの2択。この場合は後者だろう。全く状況が把握できないんだから。

 そして背後を見やったシュルティスは、絶句した。パッと見た感じは〈龍波(ドラゴンブレス)〉には及んでいないようにも見える。しかしその射程は遥かに上回る。

 結果しか見ていないシュルティスからすれば、この一撃がどのくらいの速度で進むのかまでは分からない。分かるはずがない故に想像するしかない。俺の一撃がどこまで続いているのかを。


「……これを、貴女がやったと?」

「ああ。信じらんないならもう一発やってみせるぞ」

「結構。そんな事をすれば取り返しのつかない事態になってしまいますからね。いや。既になっていると言っても過言ではないかもしれませんね」

「んな事は知らん。こっちには関係ない。さっさといきなり殺しに来た理由を吐け」


 今回も無事に切り抜けはしたが、一歩間違っても死にはしなかっただろうけど大怪我を負っていたかもしれない。まぁそれすらも一瞬で回復してのけるのがエリクサーというチート薬物とはいえ、殺しに来た事実は変わらない。


「ドラゴンバッカスは、龍の生き血を多量に必要とする為、他の連中にとってはこの世の至宝とのも呼ばれているが、我々にとっては忌むべき物。それを始祖龍である余に見せる事すなわち、宣戦布告と取られるのは至極当然だと思わないのでしょうか?」

「なるほどなるほど。だったら安心しろ。これは龍の血を一滴も使ってないノンブラットだ」

「そんな言葉が信じられるとでも? 余を圧倒する実力を持ち合わせている小娘が何を言うか!」


 確かにそうだな。シュルティスには死んだ自覚はないだろうけど、自分を起点にとんでもない光景が広がっているのを見れば、こっちの言葉を信ずるに値するだろうけど、あの酒に龍の血が入っていないというのは証拠を見せようがないから信じるに値するのは難しい。

 しかし。これは〈万物創造〉ってスキルで創ったんだと説明したところで信じるのは難しいよな。普通の方法であればだが。


「ちなみに聞くが、爺さんはドラゴンバッカスの品質を把握する事は出来るのか?」

「造作もない。だからこそあれが本物でも最高品質の物であると理解し、同胞の恨みを晴らすために貴様を殺そうとしたのだからな」

「なら余計に都合がいいな。これを見てみろ」


 果たしてこの世界に龍がどれだけいるのか知らんが、さすがに100も200も出してやればどれだけそれが異常かも理解できるだろって思うんで次々に最高品質のドラゴンバッカスをシュルティスの目の前に出していくと、最初は出すたびに怒気が膨れ上がっていったが、10にもなればすっかりナリを潜め。100に届きそうになったころにはさすがに待ったがかかったので止めてやった。


「どうだ? これで俺の酒がノンブラットだって意味が理解できたか?」

「ええ。これほどの品質をこれほどの数揃えられるほど龍は生き残っていませんし、なによりここまでの事態になれば余の耳に入らない訳がない。よって貴女の持つドラゴンバッカスは龍の血は一滴たりとも入っていないと信じる事に致します」

「だったら思う存分飲んでみろ。誰が咎める訳じゃないんだからな」


 一匹として龍の血が入っていない。しかし品質は最高。とくれば飲んでみたくなるのが性ってモンだろう。ついでにその濃厚な味わいに合うようなツマミをいくつか用意してから、俺も一杯だけ付き合ってぶっ倒れるように眠る事にした。


 ――――――――――


「――スカ。アスカ。起きるのだ」

「んが? もう朝か」


 気が付けばマリアの顔と青空。そう言えばドラゴンバッカスを一気にあおってぶっ倒れるように眠ったんだったっけ。おかげで節々が少々痛いがあの爺さんの酒盛りに付き合う事無く寝る事が出来た。酒のせいでかなり睡眠が浅かったが、それは道中で取り返せばいい。


「ふあ……っ。あれ? 爺さんはどこ行った」

「スルテンはメフィレニアとギギに文句を言われてるのだ。でもわちには分かるのだ。あれはアスカがやったに決まってるのだ。なので呼びに来たのだ」

「ああ。爺さんにドラゴンバッカスを渡したらブチ切れられてな。その時に殺したらあぁなっちまってな。だから、悪いのは俺じゃなくて話を最後まで聞こうとしなかったあいつが悪い」


 どうやら相当な距離まであの一撃が吹っ飛んでいったらしいな。どうやら爺さんが言っていた取り返しのつかない事態ってのは隣り合った別の領地を治める魔族から文句を言われてるって事か。まぁ俺には関係ないっちゃない事だが、無知晒して迷惑をかけたと言われればそうだなぁと言うくらいの事はした自覚はある。少しくらいは手伝ってやるか。


「だとしてもアスカも2人に謝るのだ。そうすれば面倒臭くなく短い時間で終わるのだ」

「断る! 何故に他人の尻拭いをしなきゃならん。しかも野郎のだなんて反吐が出るわ!!」


 これが綺麗で可愛い女性魔族であれば、誠心誠意。全力全開で謝罪させていただく事はむしろご褒美と捉えている。だから頭を下げるなんて死んでもゴメンだ。


「アスカ。ここは大人しく受けた方がいいのだ。ユニもアンリエットも人質に取られ、すぐに行かないと殺されてしまうかもしれないのだ」

「ったく。魔族の1人や2人振りきるか殺すかしとけよなぁ。レベル上げてやったんだからよぉ」


 昨日の一戦でユニもアンリエットも――ついでにアニーとリリィさんも馬鹿みたいにレベルが上がったはず。それこそこの俺が上がるくらいなんだから、4人の上昇量は半端ないって!

 後でアニーとリリィさんに絶対に何か言われるだろうけど、そこら辺は皆で口裏を合わせて誤魔化そう。魔族領に行って1体殺しちゃった。テヘ♪ なんて言えないからな。


「ユニが突然変な声を上げたと思っていたらそれが原因だったのだ? あの時は凄くビックリしたのだ。スルテンならそうなるくらいレベルが上がってもおかしくないのだ。けど、2人を相手するには足りないのだ」

「はぁ……わーったよ。行くよ。行けばいいんだろう?」


 現状ではユニもアンリエットも大事な仲間だ。

 ユニは馬車を引いてもらわにゃならんし、アンリエットは〈流体金属(アクアンタイト)〉に対する情報収集のため。それぞれ殺されるのはノーサンキューだけど、1ミリの得にもならない戦闘をするのはマジで面倒臭いんで、交渉して何かしらの利益でも引き出す努力をするとしますかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ