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#175 虚言を捨てよ。さすれば救いの手が差し伸べられん

「さて。飯にするか」


 邪魔者も消えたし、これでゆっくりと飯が食える。サラダはもう一度作るのが面倒なんで、〈魔法鞄(ストレージバッグ)〉からポテトサラダを取り出してそれを食う事にした。


「ほいじゃ。いただきます」

「「「いただきます」」」


 それと同時に2人が5段重ねのパンケーキに喰らい付く。一応一段一段にそれぞれ野菜をすりおろして混ぜ込んである特別製。当然〈料理〉スキルの力を使えば栄養を損なう事無く味や臭いを消せる上に、何も言わずともメープルシロップをたっぷりぶっかけてるんで気付くの難しいだろう。せいぜい色が沢山で綺麗。程度にしか思わんだろう。

 後は野菜を混ぜ込んだジュースを飲ませれば、栄養学的には何ら問題のない朝食だ。少し糖分を取りすぎてはいるが、その辺りは勝手に動き回るからカロリー消費は申し分ないし、そもそも2人は人じゃないからそう言った部分はどうなんだろうな。

 ちなみにユニの食事については特にいう事はない。本で栄養学をかじってからはそこそこカロリー計算をするようになったし、活動に必要な栄養という物を把握して摂取しようと心掛けているからな。むしろこれが足りないあれが足りないと文句までつけてくる始末だ。本当に従魔なんだよな? 口答えや文句。注文が多い気がするんだよなぁ。

 ま。いつも馬車引いてもらってるし、そのくらいはいいかと簡潔にまとめ、食事を終える。後片付けは魔道具化した食洗器に突っ込んで馬車の隅で動かしておけばいつの間にか綺麗になっている。やっぱり取っててよかった〈万物創造〉に〈品質改竄〉。


「よし。それじゃ出発するか」

「えと……良いのですか?」

「え? なんか用でもあるのか」


 特別散らかすような真似はしてないんで、片付けなんて5分もあれば終わる。他にアンリエットとマリアが食後の運動? 的な感じで森の中を駆けずり回ってるが、菓子を餌にすれば2人ごとき簡単に呼び戻せる。他にする事と言えば……うん。やっぱ何もない。

 だからさっさと発進させる。話なら道中でも余裕をもってできるからな。


「用というのは主が先程危害を加え、空の彼方に放り投げた精霊の事です。真実は定かではありませんが、先程のが本当に大精霊となると、道中に色々と困った事になります」


 あぁ。そう言えばあのチビがそんな事を言ってたっけ。一応ゲームとかで精霊関係の知識は正しくないだろうが持ってはいるとはいえ、あれがそうなのかって言われると証拠不十分で被告を精霊とは認められないって判決を下す。


「困る? 勝手にサラダ食われて困ったのは俺なんだけど。というかなんで止めなかったんだよ。あんなチビくらいユニなら勝てるだろ」

「ユニじゃ大精霊は無理なのだ。というかアスカが大精霊に触れられた事の方が驚きなのだ」


 疑問に対して、予想外にマリアが答えた。さっきまでアンリエットと一緒になって森の中を走り回っていたはずなのに、こんな話に加わってくるなんて珍しいな。


「何か知ってるのか?」

「というかアスカが知らない事の方が驚きなのだ。精霊はマナと一緒で世界中に存在する力の1つで、ある意味マナより大切な力と呼ばれているのだ。触るにはすごーく魔力が必要なのだ」

「ふーん」


 なんか……マリアに説明されるのって予想以上に屈辱的だ。しかし。この世界の情報が著しく足りない俺としては、自分のした事の重大さがいまいち理解できていない。ここは恥を忍んで耳を傾けるしかない。


「凄い平然としてるのだ。大精霊を怒らせたら魔法が使えなくなるのだ。今も周りに精霊の存在が全然感じられないのだ。きっと随分怒ってるのだ」

「どれどれ……〈微風(ローウィンド)〉」


 物は試し。だけどここはそこそこ木々が生い茂る森の中なんで、空に向かって撃ってみたんだがこれがビックリ。いつもならエメラルドの壁が出てきて直進する所なのに、鎌鼬みたいなのが木々の枝を切り刻む程度の非常に小規模な魔法になっていた。

 ちなみに風を選んだのはあのチビが風の大精霊とかぬかしてたから。それにしてもここまで弱体化するとは……案外大精霊ってのはマジだったのかもしれないな。


「何で魔法が使えるのだ!? どうしてなのだ!」

「そうよそうよ! アタシの指示でアンタに従わないようにしてあるはずなのにどういう事よ!」


 魔法が使えた事に驚くマリアのすぐそばに、サラダを盗み食いしたさっきのチビが怒り心頭と言った様子でそこら辺に怒鳴り散らしている。その背中にはさっきまでなかったはずの羽が生えて空を飛んでやがる。


「さっきのチビか。これはお前の仕業か」

「その通りよ。アンタの周りに精霊を近づけさせないで魔法を使えないようにしたはずなのに、なんであんた魔法が使えてんのよ! ズルいじゃない! 卑怯じゃない!」

「知るか。ってかさっき人のメシ盗み食いしといて謝罪もなしか?」

「はぁ? なんで大精霊であるアタシがアンタ達みたいな連中に頭を下げないといけないのよ。ねぇ馬鹿なの? 度し難い馬鹿なの? つーかアンタがアタシに頭下げなさいよ。そうしたら許してあげない事もないわよ?」

「……ふんっ!」


 相手するのが面倒なんで再びブン投げる。今度はちっとやそっとじゃ逃げられないように魔法阻害の付与をした縄で縛ってからのおまけつきだ。効果があるかどうか知らんが、あったら儲けもんくらいにしか考えてない。


「さて。出発するか」

「主……さすがに2度目はどうかと」

「まぁ気にすんな。嫌なら契約解除するけどどうする?」

「行きましょう。大精霊はそう簡単に存在が消えるような事にはならないらしいので心配はないでしょうから」


 って事でようやく出発だ。あのチビのせいで多少遅れたが、全体の工程にはさほど影響はない。というか単純にアニー達から連絡が来るまでの旅なんで、明日にはそれが来るかもしれないし、一月以上来ないかもしれない。そんな適当な感じの旅だ。ほんの数分邪魔された程度で目くじらは立てんさ。ブン投げたのはあくまで態度が悪いからだ。


 ―――――――――


 それから数十分後。遠くの方から悲鳴が聞こえたんで現場に駆け付けてみると、少し前に縄で縛ってブン投げた自称大精霊が木の枝にぶら下がってギャーギャー喚き。その傍には七色の蝶っぽい生き物が管をそいつに伸ばして何かを吸い取ってる? っぽい光景があった。


「あれはなんだ?」


 見た事ない魔物だな。一応〈万能感知〉で探ってみても、全くと言っていいほど敵意が感じられないし強さも感じられない。これならスライムとかの方がまだ強いんじゃないか?


「あれは精霊食い(スピリットイーター)なのだ。ああやって精霊を喰らう恐ろしい魔物なのだけど、それ以外には何の影響も及ぼさない無害な奴なのだ」

「じゃあほっといてもいいか。行くぞ」

「ちょっと待ちなさいよおおおおお! 大精霊が困ってんのよ!? 助けなさいよ!」


 必死に声を張り上げて助けを求めるが、俺にとって助けたところで一銭の得にもならない相手に情けをかけるほど馬鹿じゃない。


「え? 大精霊なんだろ。だったら頑張ってそいつら倒すために同じ大精霊や中精霊や小精霊――まぁ下の存在をなんて呼んでるかはどうでもいいが、そいつらにでも助けを求めればいいだろ。大精霊ってのが本当かどうか知らんがな。それじゃ」


 大精霊がどんだけ偉いのか知らんが、あんな性格で常日頃生活してなければそこそこの地位に居れば部下なり仲のいい上司なり同期くらいいるはずだろう。まぁ? どんだけああやってるのか知らんがただの一つの変化がないって事はそういう事なんだろう。そして必死に助け求めるって事は、もはや決定的なんだろう。


「アスカ。さすがに人が悪すぎるのだ」

「そうなの。ご主人様酷いの」

「じゃあ助けたかったら助けてもいいぞ? その後でお菓子を盗み食いされたりして文句を言ったりしないっていうのであれば、俺は何も言わんさ」


 ここまで言うと、2人の文句をナリを潜める。既に俺のサラダを堂々と盗み食いしている姿を目の当たりにしてるんだ。お菓子もそうならないなんて可能性はゼロとは言えない。そして、2人にとってお菓子とは、俺にとっての女性のように無くてはならない存在である。


「ではワタシが……」

「本を汚さんとも限らんぞ~」

「放っておきましょう。精霊は死なないとも聞きますので問題ないでしょう」


 これで、あいつを見殺しにする事が満場一致で決まった。死ぬんであれば交渉次第じゃ助けてやらんこともなかったが、そうなっても何ら問題ないと分かれば後悔の念もない。


「じゃあ行くか」

「そうですね」

「行くのだ」

「出発なの」

「まってえええええええええええええ! 謝るからああああああああ! だから助けてええええええ!」


 さて。とりあえず謝罪の意思は確認できた。後は助けた後の形を詰めていくだけだ。

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