閑話 ~アレクセイの苦難2~
100,000PVを突破したので、感謝的な意味を込めての馬鹿馬鹿しい閑話を1つ
「ふぅ……とりあえず大まかにではありますが、術式は完成しましたね」
そもそも性別を反転させるという事自体、考えもしませんでした。おかげでかなり創作意欲がかき立てられ、他の研究も大いに進歩したと言ってもよいかも知れませんね。惜しむらくはこれを人体実験として用いれないのが悔やまれます。そんな事をすれば契約者であるあの少女がこの研究所を潰すと言っていましたからね。
真にそのような事が出来るのか疑問ではありますが、今のワタシは彼女の従者。大した強制力のない程度の低い契約ではありますが、そんな物を必要としないほどの実力を目の当たりにしてしまっては、反旗を翻すと考えるだけでも背筋を冷たい物が流れます。
「さて。少し休憩にしましょうかね」
ここの所ずっと椅子に座ったままだったので体が固まってしまっていたようで、少々歩行に支障をきたしましたが、飛んでしまえば何も問題はありません。それにそろそろ魔王様への報告もしなければいけませんので、どれぶりくらいだか分かりませんが魔王城へと登城する事にしましょう。
――――――――――
「ふぅ……」
報告自体はすぐに終わりましたが、やはりあのお方の前に立つのは肉体的にも精神的にも非常に疲労してしまいます。主に魔王様の言動が我々の理解が追い付かない時があるので、どう反応してよいのか非常に困ってしまいます。
周囲の侍女などに話を聞いた時も、どうやら魔王様は召喚される前の世界に住んでいる魔族との混血であったようで、時折額を押さえては出て来るんじゃないとか。右の包帯の巻かれた腕を押さえては魔力がうずくなどいった事が多々見られ、すぐに治療であったり敵襲に対して待機している担当者が駆けつけると何故か慌てた様子で心配無用と仰られるのだとか。
配下の者達に心配をかけまいとする姿は立派ですが、少しでも不調を感じたのであれば躊躇う事無く部下をお使い下さいと意見具申をいたしましたが、あまり色よい返事はもらえませんでした。
考えれば考える程、魔王様という存在の人物像が分からなくなってきますね。
さて。適度な運動も終わった事ですし、研究所に帰って魔法の続きとまいりましょう。人は駄目だと釘を刺されていますが、動物であれば問題ないでしょう。人種も獣肉を喰らうのです。性別を変えたくらいで彼女が怒るとは到底思えませんしね。
「もう1人発見なのだ! お前はお金を持っているのだ?」
「っな!? マ、マリア・ベルゼ様!? こ、これはこれは……お会いできて光栄でございます」
ほんの少し思考の海を漂っていた僅かな間に、なんと言う地獄に足を踏み入れてしまったのでしょうか。やはり彼女と会ってからというもの、ワタシには不運のスキルがついてしまったのかもしれません。何しろ目の前のお方は、幾代も生まれては滅んできた魔王や魔族と違い、天地開闢の時より生きてきた魔の中の魔と称されるほど絶大な力を有している、自他ともに認める20評議会の№1なのですから。
「そんな挨拶は必要無いのだ。それよりもお前はお金を持っているのだ? いないのだ?」
「お金……とは、5種族共が物々の交換用いる鉱物でしょうか?」
「そうなのだ。持ってるのだ?」
この世の不条理とまで言われるほど世界から恐れられる人智を越えた領域に立ち、僅かな癇癪で国が亡びるとされているマリア様が貨幣を求めている? いったい何がなさりたいのかこの頭では理解が及びませんが、むやみに質問を重ねて彼女の怒りを買うのは死を意味します。さっさと答えてしまいましょう。
「多少でしたらございますが」
「本当なのだ!? だったらそれをわちに寄越――っ!?」
「ど、どうされました!?」
突然に明後日の方を向いたかと思えば、何かに怯えるように震えたので慌てて周囲に探知魔法を走らせるも、敵となりえるような人物は感知できませんでした。と言いますか、彼女を恐れさせる存在など見た事も聞いた事もない。一説ではとある生物を恐れていると言われていると聞いた事がありますが、まぁ……それを実行に移してどんな目に合うのかを考えれば嘘である気がします。
何しろ。魔王様ですら現状では手も足も出ない魔族の頂点であらせられるマリア様が、たかだが生物如きを恐れるなど冗談にもなりませんからね。
「な、なんでもないのだ。それよりも何か手伝ってやるのだ。だから代わりにお金を寄越すのだ」
「……はい?」
大変に失礼だとは思いましたが、説明を求めました。
すると出てきたのは、まさかのアスカという名前。どうやら我が主の造り出した未知なる甘味を、マリア様は大変にお気に召したようなのですが、なんでも人種の使う金銭との交換でなければ一切渡さないと言われ、仕方なく方々を回っては集めているとの事。どうやらワタシ以外にも被害者いたようです。
「という訳なのだ。アスカは悪い事をしたお金はすぐに分かると言っていたのだ。だからわちはお前の手伝いをしてやるのだ。だからお金を寄越すのだ」
「なるほど。そういう事なのですね」
これを断るという選択肢は死を意味するので存在しません。なので、簡単な手伝いを頼んだ代償に持っていた銅貨を10枚。一応手持ちの全てを差し出すと、彼女は上機嫌で走り去って行ってくれました。
なんでしょう。あの少女と出会ってからワタシの生は非常に精神に負荷がかかるようになった気がします。こう……胃がキリキリと締め付けられるような微かな痛みを感じるようになりました。
願わくば……これ以上他の方々との関係を持たないでほしいものですな。




