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#155 スケルトンからの濃厚な存在感

「……いいでしょう。貴女の言い分にも納得できる部分はあります」

「って事は」

「貴女を兵舎部隊に組み込みます。代わりに、予定していた数から7割ほど人員を削らせていただきます。そこまで強いと豪語するのでしたら、問題ないですよね?」

「もっちろん。というかボク1人いれば兵舎の1つや2つすぐに全壊させられるから、大船に乗ったつもりで頑張ってね」

「当然です。貴女は本来騎士団長の半分以上の足止めをしてもらうつもりだったのですから。そのくらいしていただかないと割に合いません」


 ニールさんにギロリと睨まれ、少しだけ罪悪感が顔をのぞかせるもそれはほんの一瞬。瞬き1つでもすればすぐに楽が出来るって思いがわっと噴き出して、内心で小躍りだ。もちろん表情に出せばまたグチグチと言われるのは分かり切ってるんで、ちらりと男連中に目を向ける。


「おいおいマジかよ。勇者ってあの勇者だよな? 魔王討伐する為に召喚されるって」

「ああ」

「こっち的には心強い味方だけど、こういう事をしてていいんですか?」

「問題ねぇよ」

「マジ最高だな。おれ達はあんたの加入に感謝すっぜ」


 うんうん。男連中は単純明快でいいな。勇者が二言三言話すだけで簡単にあいつを勇者として認識して受け入れてくれたんだから。しかし今は作戦会議の真っ最中。ニールさんが強めの咳払いをすると、全員ばつが悪そうに黙る。どうやら奴等も俺の戦線離脱は問題ないみたいだな。

 問題があるとすれば、押しかけ女房のように同行してきたリングレットだ。

 彼女は勇者の護衛としてついてきただけであって、その内容すら知らされていなかったのかさっきから椅子に腰を下ろして腕を組み。目を閉じたままただの一言も言葉を発さない。

 まぁ……心情は分からんでもないけどな。

 今から行うのは貴族への反逆だ。スラム街区のためにと命を懸ける〈純白の薔薇〉に、勇者や俺は貴族は悪い連中という認識が少なからず存在しているし、そもそもこの世界の人間じゃない。どの貴族が偉くてどんな貴族と繋がっているのかなんて知らないから平然としていられるけど、リングレットはまかりなりにも騎士だ。そこそこの教育を受けたと考えれば、この伯爵を亡き者にすればどこでどんな影響が出るのかを考えているのかもしれないな。俺には関係ないけど。


「ねぇねぇリングレットさん。君も戦力として参加するんだから、もっと周囲の人間と会話をしたりして関係を深くしないといけないと思う。じゃないといざという時に背中を預けたりできないよ」

「結構だ。私はこんな連中と馴れ合いをするためにナガトに同行したのではない。それに、背中はナガトに一任している。ならばここに居る連中と仲良くする理由などない」

「そんな事言ってぇ……実はただの人見知りとかなんじゃないのぉ?」

「っな!?」


 こちとしてはほんのからかいの冗談のつもりだったんだが、それを聞いたリングレットが動揺したのを〈万能感知〉は見逃さなかったし、それが無かったとしても明らかに動揺しているのが手に取るようにわかるほどだ。


「……ありゃ。当たっちゃった?」

「ち、違う! 私は騎士として毅然としているだけだ! 学校を優秀な成績で卒業し、栄えある王都騎士の1人として籍を置くこの私が、ひ……人見知りなどする訳がないだろう!」


 なるべく平静にと思っているんだろうが、どっからどう見ても言い訳しているようにしか感じられない。折角小声で語り掛けてやったというのに、自分からそうですよと言わんばかりのこの反応。ガッカリだよ。

 そもそも騎士という職業を漫画やラノベで見た感じ、門前の見張りや警邏の散策などでいえばツーマンセルスリーマンセルが基本なんだろうけど、場内の警備や比較的平和な場所であれば、そこまでの数を動員してなかったような気がする。金もかかるしな。

 それに、学校を優秀な成績で卒業と胸を張っていたけど、裏を返せばそうせざるを得ない環境――つまりはぼっちだったんじゃないかって見方も出来る訳で。ヤバい……そう思えば思うほどコイツに対するいたずら心がふつふつと。


「頑張って」

「だっ!? だから私は人見知りではないと言っているだろう!」

「おやおや? それだったら会話くらいしてもいいじゃないか~。という訳でさっさと話してみようじゃないか」

「お、おい! 私には必要ないと言っているだろう!」


 文句を言うリングレットを完全無視。手を引いて無理矢理に女子の集まっている場所へと踏み込む。もちろん綺麗で可愛い女性が集まっている場所だ。


「ちょっといい?」

「なにー?」

「少し人見知りのこの娘に作戦について教えてあげてくれない? お姉さん達も伝達が上手くいってなかったせいで足引っ張られて死ぬのは嫌でしょ?」

「そうね。それじゃあこっちに来て」

「あ……う、うむ」


 くっくっく。あれのどこが人見知りじゃないと言えるんだろうな。受け答えもしどろもどろであぁ……とか。うん……とかしか答えず、挙動不審全開の落ち着きのなさで彼女達からものすごく心配されている。


「ぷくく……それじゃあ頑張ってね~」

「ぐ……っ!? いつか殺してやるからな!」

「出来るものならどうぞ。あ~っはっはっは」


 ぎりぎりと歯ぎしりが聞こえてきそうなほど憎々しそうにこっちを睨み付けて来るけど、リングレットを囲む女子の集団がかいがいしくきちんと作戦の説明をしていると、生来の生真面目さがそれに耳を傾けさせるので、なにされる事なく安全に距離を取る事が出来た。


「さてメリーさん。貴女にもきちんと作戦を理解してもらいましょうか」

「ボクは大丈夫だよ。ちゃんと作戦を考えてあるから」

「一応お聞きしてもよろしいですか?」

「いいよ。このボクのすんばらしい作戦を聞いて腰を抜かさないでね~?」


 俺の作戦は、まず兵舎に奇襲をかけて派手に暴れ回る。そうやって十分に騒ぎを起こしたと判断したら次に兵士数人を拉致。追い込まれるふりをしながら兵士や騎士団長が集まってきたところを一気に斬り伏せる。楽も出来であっという間に数を減らせる最高の作戦だ。


「そんなにうまくいくわけがないでしょう。却下です。ちゃんと作戦を聞いてもらいます」

「おーのー」


 俺の実力としては十二分に遂行できる自信があるんだけど、ニールさんからすると多少実力は認めていても、そこまで出来る訳がないだろうと高を括られているみたいだ。その事にはちょっとムッとするけど、まぁそこまで実力を見せてもいないんで仕方ないか。

 という訳で作戦を説明されたんだけど、もちろんエリクサーをあてにするようなら、代金は一本につき別途白金貨が200枚必要な事を告げておいた。なぜ200なのかは、アニーがそのくらいが適正価格やといってたから。

 ちょっとぼったくり過ぎなんじゃないかと思うけど、本来であればダンジョンの80層以降でたった1本しか発見されていない物で、欲しい奴いる? って聞けば各国の王が血みどろの争いを繰り広げる程の一品。まず誰にも買えないような値段にしないと、色々世界的によろしくないのだとか。それでも販売してもいいとした判断基準はんなんだろうか。

 まぁ。これさえあれば、戦争で有能な将軍が死んだとしても即復活したり。四肢を失って戦場に復帰できずにいた奴も再び戦場に立つ事が出来る。つまりは単純に戦争に使えば絶大な効果を発揮するから、アニーからはウチが居ない間はそれを理由にむやみやたらに使うんやないでと釘を刺されている。


「そうですか。それでは少し作戦内容の変更をしましょう」


 どんな反応をするのか少し楽しみにしてたのに、帰って来たのはいつものすまし顔。これはこれでとても綺麗だけど、俺としては少しくらい慌てた表情が見たかったなぁ。


「じゃあボクは帰ってもいい?」

「いえ。まだ作戦の詰めをアルマと会議しますので、しばらくここに居てもらいます」

「すまんなメリー殿。君には頼りっぱなしになってしまって」

「リーダーじゃないか。いつのまに帰って来てたの? 全然気づかなかったよ」


 さっきから見かけないと思っていたのは、きっと子爵の所にでも行っていたんだろう。だからそう声をかけたんだけど、当の本人は何故かバツが悪そうに視線をそっとそらした。なんだ? もしかして子爵との間に何かしらの不和が生じ、作戦に支障が出るのかとニールさんもわずかに眉間にしわを寄せている。


「僕……最初から居たんですけど……」

「「えっ!?」」


 嘘だろ? 〈万能感知〉……にはちゃんと、うん? 無い――いや。もの凄く薄い反応だけどちゃんとある。

 馬鹿な……っ! 駄のつく神のスキルでも捉えるのが精一杯だなんて。なんちゅうレベルの高い隠密スキル持ってんだよ。見た感じ戦士職のくせに……恐ろしいぜ。さすがリーダーになっているだけはある。


「ちょ!? さすがにニールには気づいてほしかったんだが」

「すみません。貴方の影の薄さはもはやアサシンレベルを超越していたので」

「酷っ!? ま、まぁいいや。作戦について言いたい事があって」

「なんでしょう」


 アルマの手招きに首をかしげながらも軽い足取りで数歩近づいた途端。真っ赤でとろりとした液体がニールの喉から噴き出した。


「さすがに勇者の乱入は看過できないと仰られてね。なので君達には死んでもらう事にした」

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