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#118 バタフライエフェクトとはこの事か!?

 たどり着いた中門は、どちらかというとエルグリンデくらいの規模の門で、そびえたつ外壁も見覚えのある石造り。いたって平均的と言えば聞こえはいいが、最初と比べても明らかに防御力に不安がある。それだけあの門に自信を持っているんだろうが、こうやって中に入られてしまえばもうどうにもならんだろう。

 なーんてことを考えながらボーっと空を眺めていると、不意に〈万能感知〉に殺意ある反応が出た。


「……」


 大したレベルじゃないんで無視していると、それはすぐに止んだ。こっちに向かって飛ばして来ていたのかどうか疑問は残るが、とりあえずコナかけてくる訳じゃないんでぐるりと中門に目を向ける。

 一応見張りみたいな連中は居るみたいだけど、どいつもこいつも腑抜けばかりだ。あいつなんかあくびしてやがるし、あっちでえばり腐ってるクズなんかはこの距離から見ても酒に酔ってるのが丸わかりだ。やはり大都市ともなればその末端の一段上くらいからが腐るのは必然か。

 それも、過去に魔族を撃退したなんて与太話を鵜呑みにして街の兵をやっているという自信が、輪をかけて増長を促してるんだろう。救いようのないクズ連中だな。あんなんじゃ1匹でもここまで侵入されたら全滅必至なんじゃないか?

 そんな感情のこもった半眼でボーっと眺めていると、再び〈万能感知〉が殺意を検知。このパターンからするとさっきと同じ奴か。何をそんなにピリピリしてんのか知らんけど、今のところ魔物もポップしてなければ素行の悪い馬鹿もいない。そう言うのはきっと最前門で弾かれるんだろう。だから時間がかかったんだと信じたい、じゃないとあんな長時間待たされるのは業腹だからな。

 それからも。無我の境地にたどり着いたんじゃないかってくらい意識を飛ばしてボーっと門の先を眺めていると、突然に今までの比ではないくらいの殺意と闘気が発生。遅れて地響きと野郎の汚い断末魔が送られてきた。もちろん受け取り拒否はできないんでバッチリ耳に届けられた。


「なんだ今の」

「ああ。あれはいつもの事ですよ」

「いつもねぇ。暇なんでちょっと見て来る」


 このまま待っていたらマジで別の何かになっちまうような気がしたんで、刺激を求めて現場へ急行。するとそこでは、1メートルくらいのクレーターが出来ていて、その傍には動けばやかましそうなゴッツイ鎧を着こんで、肩にドデカいハンマーを担いだおっさんが悠然と立っている。

 年のころは50代くらいかね。右目に眼帯をしていて顔の半分にはえげつないほどの痛々しい傷が刻み込まれていて、かなりいかつい。それに、これだけの重装備にもかかわらず身体の動き自体はかなり軽快そうに見える。きっと〈身体補強〉か〈肉体補佐〉――俺の〈身体強化〉の下位スキルでも持ってるんだろう。

 その反対側には人――だったであろう肉片が散らばっているところを見なくても、ハンマー男がやったのだろうと察しが付く。


「なんじゃい小娘。何か用か?」

「いや。凄い音がしたから何なのかなーと思って見に来たんだが、一体何があったんだ?」

「がっはっは。死体を前にして平然としていられるとは、小娘にしては肝が据わっておるな。こやつは悪事を働こうとしておったのでワシが処分したんじゃよ」

「悪事ねぇ……いったい何をしようとしてたんだ?」

「知らぬ」

「……え?」


 コイツ……何してるのか自覚してんのかな? こいつは明らかに誤認逮捕の可能性がある。既にそんな領域を飛び越えているけど、ここは誤認『逮捕』で行かせてもらう。

 見たところ。かなり偉いであろう地位に籍を置くであろうおっさんが、何も聞かずにただただ怪しいという一点だけでまさかの悪・即・斬。この場合は悪・即・圧か? まぁどっちでもいいか。

 とにかく。有無を言わさず殺したことになる。さすがにそれはやり過ぎなんじゃないかと思うのだが、残った肉片からはほんの少量だが白銀が発見されたとの報告があがった。


「やはり黒じゃったか。白銀は国で厳しく管理しておる。それを持っとるという事は――」

「誰かが裏で手を引いた。だがこれだけの量で儲けは見込めるのか?」


 見たところ、おっさんの部下が回収した白銀は親指の爪程度。価値がどれだけあんのか知らんけど、たったこれだけを命がけで秘密裏に運び込もうとするとは理解に苦しむし、そもそも何でこんなイカレおっさんのいるシュエイを選んだのかも疑問だ。知らんかったのか?


「当然じゃ。白銀のほとんどはここで出自と量を記録してから王都に運ばれ王族の武具になり、余れば白金貨となる。これだけあれば白金貨2枚は作れるじゃろう」

「なるほど。しかし白金貨ともなればそうおいそれと使えないだろ。足が付くんじゃないのか?」

「ほぉ……小娘如きがよく分かっておるではないか。だが甘い。世の中には表だけがすべてではない」


 つまりは裏のルートに売り捌くという訳か。

 これであれば、確実に額面通りにならないのは明らかだけど、白金貨と金貨ではそのレアリティが段違いだ。

 片や大店が使う以外の道が残っていない物。

 片や多少裕福であれば使用する機会が少なからずある物。どちらが足が付きにくいかなど明らか。

 そう考えるとこいつの罪状は、かなりの重罪に該当する訳だけど……これってたまたまなんじゃないかとの疑いは微塵も晴れない。と言った表情をしている事が周囲に伝わったんだろう。1人の兵士が説明してくれた。

 このおっさんは、シュエイにある12の騎士団の1つの団長を務めているらしく、なんでも〈真偽〉というスキルで疑わしい相手を片っ端から殺して回っているらしい。

 的中率はおおよそで8割。正直いってかなり信頼できる値ではあるけど、外した場合の補償とかどうなってんだとの疑問に対しては、そこそこの額の金銭を渡して納得してもらうとの事。それで何とかなるのかはなはだ疑問だが、それ以上突っ込むのは止めた。


「大した忠誠心だよ。あんた」

「なに。伯爵を守るのがワシの務めじゃからな。多少の犠牲はやむを得まいて」

「サッパリとした性格だな。大量の恨みを買ってそうだ」

「はっはっは。ならばそれらすべてを潰せばいい。女子供であろうと向かってくるのであれば容赦せん」

「それは駄目だ。綺麗な女性や少女であればそれを守るのが俺の使命。勝手に殺すのは困るぞ」

「……ガッハッハ! ワシを前にそのような事をほざく馬鹿がおるとは思わなんだ。おもしろいぞ小娘」

「俺は面白くねぇよ。って訳でそろそろ戻るわ」


 これ以上ここに居ても面白くはならなそうだって事で退散。それに……あのおっさんは完全に壊れている事が確認できた。

 表面上は竹を割ったような性格をしているが、ふとした瞬間に垣間見えたゾッとするほどの深い闇が見えた時は思わず剣に手が伸びかけた。あんなのがこの街を守っているんだと思うと少し嫌になって来たな。負ける未来は微塵も見えないが、ここを落とすのにあんなのを最悪の場合――12人も相手にするのかと思うと面倒臭い。


「戻ったかい。それでどうだった?」

「ああ。デカいハンマーを持ったおっさんが、白銀を密輸しようとしてた馬鹿をぶち殺してた」

「あぁ……それはきっとランドルヴ様ですな」

「あの〈狂断罪〉様か……やはり運が悪いな」

「どういう事だ?」

「彼は非常に優秀な騎士団長の1人ではあるのだが、どうにもスキル頼みで行動を決める所があってな。それによって多くの悪人を裁いてはきたのだが、同時に罪なき人々も多く裁かれてきた」

「ああ。そう聞いた。それの何が不味いんだ? まぁ間違いなく不味いんだけど、俺達に関係あるか?」


 俺達は、どこからどう見ても善良な一般冒険者に馭者に美しすぎる少女だ。他人はどうか知らんけど、問答無用でハンマーを振り下ろされる筋合いはどこにも見当たらない。


「〈狂断罪〉の名の通り。彼は一度罪人と決めつけたらその命尽きるまで決して逃がさない」

「そしてそれは、女子供であっても変わらないっす。いくら無実であると分かっていても、無理矢理罪をでっち上げて自分の正義を貫くっす」

「はた迷惑なおっさんだ。そんな奴に目をつけられたくはないもんだな」

「ああ。だがアスカ嬢。君は間違いなくあの男に目をつけられたぞ」

「何故に?」

「現場を見に行っただろう? 彼は自分がどれだけ他者から畏怖されているのかを十分に自覚してる。そんな自分を前にして物おじせずに堂々とした態度で接してくる奴がいた。するとどう思う?」

「さぁ?」

「あの男は戦闘狂でもある。腕試しにいろいろしてくるかもしれないという事だ」

「マジかよ……」


 だとしたら最悪だな。かと言って見つからずにコッソリ侵入すれば余計にややこしくなりそうだ。一時の気の迷いがそんな結果を生むなんて……反省せんといかんな。このまんまだと関係ないこいつらまで巻き込まれかねん。

 そうと決まれば即行動。さっさと列の後ろの方に移動しようかと幌から飛び降りたところで、本日3度目の殺意が――今度は俺に向かって真っすぐ飛んできた。

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