#102 アスカさん。女性1人とモフモフ権でフィニッシュです
「ごほん。取りあえずこのルナって娘の人となりはある程度理解したが、やはり本人に会ってみないと何とも言えないし、そもそもお前等が勝手にそんな約束をしてもいいのか?」
こっちとしてはわざわざ転生してやった9割以上の理由がこれなんだから拒む理由はない訳だけども、あっちにとっては既に心に決めた相手がいるかも知れない。NTRに若干興味がない訳でもないが、この顔と強さがあればある程度の綺麗で可愛い女性は虜になってくれるだろうから、そう言う展開にはならないと信じたい自分がどこかにいる。
「構いまへん。別にアスカはんと婚約する訳やないんやし、こういう漫画とかラノベとかいう本をきっかけに友達なってくれたら思うてますんや。彼女は本が好きやから」
「俺としては構わんが、まだ足りないな」
俺が実は男だなんて思ってもいないだろうからな。そういう意味での紹介だろうと、リリィさん達にとっても俺にとっても都合がいい――まさにWin-winの関係の出来上がりだが、それを得る為には都市1つの機能を叩き潰さなきゃいけないってのは、少し代償と面倒が大きすぎると言いたい。
伯爵は俺の中ですでに生きていてはいけない存在としてリストアップしてあるので、両断するのに躊躇いはない訳だけども、そこにたどり着くまでが面倒くさいの極みなんだよなぁ。あっちからやって来てくれれば遠慮なく斬り殺すけど、こっちから行くってなると途端に足が重くなる。
規模はおおよそでエルグリンデの倍の規模を誇り。
その外壁はギック市より堅牢で機能的。
戦闘可能な人数は、冒険者を含めれば約一万人だとくれば、普通の神経であれば陥落させようとすら思わないし、敵国として侵攻する為以外にそんな事に思考を割くような馬鹿な真似はしないとの事で、俺も自分のスペックが人の枠から大きく足を踏み外していなければ交渉の席にすら座らなかっただろう。
説明した通り、普通に攻めれば難攻不落と評しても遜色ないシュエイを単機で落とそうというのだ。絵姿を見る限りで、ルナさんは確かに魅力的ではあるけど、報酬としてはいささか妥当ではない。なにしろ相当な労働を強いられるんだからな。同じレベルの女性をあと3人は紹介してほしい。しかも確実に親密な関係になれるレベルの太いパイプならばなお良し。
「せやったら、あて等の商会に案内させてもらいます。そこやったらアスカはんの気に入る綺麗どころが何人もおりますから、手ぇ出さんでくれるんやったら紹介できるで?」
「商会持ってたのかよ。あんな辺境に日用品売りさばかなきゃなんないくらいの商人だと思ってたんだけどな」
「正確に言うんやったら親父と兄貴で切り盛りしとる店。やけどな。そこそこデッカイんやで?」
「それで足らへんかったらウチ等を好きにしたらええ。さすがに命は上げられんけど、それに近いモンは提供させてもらいますよって。アスカはん好きなんやろ? 獣人の耳とか尻尾とか」
「気付かれてたか……」
だってしょうがないじゃないか。こちとら同人誌やアニメなんかでネコミミやイヌミミと言った萌えオプションがくっついた美少女をこれでもかというくらいに見て来たんだからな。こういった世界に飛ばされてそれが目の前に飛び込んで来たというのなら、思うがままにモフりたいというのはオタクの夢である。
しかし。しかしだよ君ぃ。それを欲望に任せて心行くまでそんな事をしたとしよう。そうすれば簡単に獣人に警戒はされるし、それで犯罪者と認定されれば街にも出入り出来なくなって美人との出会いも極端に減ってしまう。
それに、そう言う部分に触れることが特別な意味があるかもと考えれば、2人に迂闊に手を出したりモフってもいいかなんて聞く事も出来ずに泣く泣く見ているだけで我慢してきた訳だけども、相手側からそれに対する了承を得たとなれば話は別だ。
これは……俺にとってかなり魅力的な提案に違いない。なにしろ顔を真っ赤にして回答を待っているという事は、そうさせる事に相当な覚悟。例えば……婚約した相手レベル位にしか触れさせちゃいけないんじゃないかなって思う。
「ど、どうなんや……」
「こっちとしては願ってもない提案だ! しかしそこまでする事なのか?」
今までさほど街を訪れた訳じゃないけど、獣人自体はかなり多く見かけているし、そもそも獣人の住まう土地は別にちゃんとあるんだから、ここで見限ったとしても絶滅の危機に瀕するような事にはならないように思えるんだよなぁ。
「アスカには分からんやろうけど、ウチ等獣人は仲間を大切にする種族なんや。それでなくとも不当に仲間が殺されるんは見逃されへんねん」
「せやけどあて等にはそうするだけの力があらへんのです。せやから後生やアスカはん。獣人を救ってくれへんやろか?」
「……はぁ。わーったよ。侯爵がいいと言ったら、俺に出来る限りの事をしてやるよ」
本当ならさっさと別ルートを使い、王都へと侯爵達を見送ってから用事が済むまでのおよそ1週間ほどの間に、周辺の村や街で美女探しの旅としゃれこもうと計画していたって訳なんだけれども、さすがに女の涙を見せられてやると言わなきゃ男が廃るよなぁ。
とりあえず。俺の裏工作がバレると困るんで、2人にはこの場に待機してもらって1人で侯爵の所に行ってみると、相変わらず山の様な書類仕事をこなしている真っ最中だった。
「珍しいですね。アスカさんがこの部屋を訪れるだなんて」
「少し相談したい事があってね。実は――」
俺は、報酬の件は伏せてアニー達の言葉をそのまま伝えた。その理由はもちろんアクセルさんと侯爵に無報酬でそんな危険な事をするのかと言った好感度の上昇を狙っての事である。
「――という訳なんで、しばらく護衛の任務から外れてもいいかな?」
「まさか……アスカさんお1人でシュエイに向かうのですか!?」
「そりゃそうだろ。さすがに伯爵を殺す旅に侯爵がかかわっているとなれば色々マズいだろ? それに邪魔があると満足に動き回れねぇしね」
この世界の事情はいまだによく分からんし知るつもりもないけど、さすがに侯爵が他の領主を手にかけたなんて話が広まったら王国への反意ありなんて思われて、更なる厄介ごとに発展しないとも限らないからな。ここは別々に行動して、俺は魔族として伯爵を殺した挙句、好き勝手暴れた結果として出来る限りの膿を吐き出させ、獣人達の地位向上をしてやればはれてあのケモ耳をモフりまくれるという訳だ。俺の〈性技〉が光って唸る。ケモミミモフれと轟き叫ぶぜ!
「しかし……シュエイはかつて魔族の王都への侵攻を防ぎ切った鉄壁の砦としての機能を残している城塞都市。さすがのアスカ殿といえど難しいのでは……」
「そん時はさっさと帰ってくるんでご心配なく。道中の安全はユニ達に任せますし、いざとなったらこのお菓子袋を使ってマリアでも呼んでおけば大抵の問題は武力で片が付くと思うんで、しばし別行動しても構いませんか?」
「アスカさんがそうしたいというのであれば私は止めませんが、出来る事なら伯爵は生かして罪を白状させたうえで断罪させてもらえると。今後の国家運営にとっては有益なので心がけていただきたいですね」
「可能な限り努力するよ」
とりあえず別行動の許可はもらった。次にやんなきゃなんないのは俺がいない間の食事の用意や魔族として振る舞うための装備の創造をしないといけないんでさっさと自分の部屋に戻ってみると、いつの間にかマリアが俺のベッドでゴロゴロしながら漫画を読んでいた。
「アスカが戻ったのだ。言われたとおりお金を持って来たのだ。お菓子を売るのだ。後これももっと寄越すのだ」
「そっちは別料金だ――と言いたいところではあるが、丁度いいところに来たじゃないか。俺のお願いを聞いてくれれば、少ない料金で多くのお菓子を食わせてやるぞ」
「やるのだ! お菓子の為ならわちがんばるのだ!」
ふんすと鼻息荒く詰め寄ってくるので、お菓子で距離を取って事情を説明しようとしたのだが、そこにはすでにアンリエットが陣取っていて、迫りくるお菓子を何の苦労もせずに胃の中に収めた。
「ぬおおおおおおおおおっ! わちのお菓子がああああ!」
「んぐんぐ。相変わらずご主人様のお菓子は美味しいなの。あちしもっと食べたいのなの」
そういって手を突き出してくるアンリエットに、俺はしばらく食わせられなくなるだろうからと抵抗せずにもう1つをと取り出した瞬間。今度はマリアが目にも留まらぬ速度(俺には見える)でお菓子を奪い取ると、押し込むように自分の口に放り込みながらなぜかアンリエットに勝ち誇った様なドヤ顔すると、アンリエットの方も珍しく頬をぷくっとふくらませて怒りをあらわにする。
「ご主人様。あちしこいつ嫌いなの」
「わちもお前なんか嫌いなのだ~」
「喧嘩するならお菓子食わせないぞ」
「「仲良し仲良し~」」
とりあえず騒ぎは収まったし、丁度用事のあるやつもお菓子を買いに来たのなら、色々と用件を済ませる絶好の機会だ。
雪のために帰宅が遅れ、こんな時間の投稿になってしまいました。すみませんでした。




