case:67 【智へのご褒美の場合】
なにも四連休ではない。
そのため学園祭の振り替え休日を使って二人、残りの二人を次週の土日へとなるように予定は組んである。
そのため、というかそのおかげかここその間の一週間はとても快適に過ごせたといえる。
先の二人は満足して、後の二人は緊張からなのか準備のためなのかほとんどといっていいほど接触がなかったからだ。
しかし、そうは言っても来るときは来るというもので。
快適な一週間はあっという間に過ぎ約束の休日へと相成ってしまえば、最初の一人目は私の担任でも有り実の姉である。
正直、もはや先週の二人で大抵の事は何が起きても動じない自信が付いたというか。
こと姉にとってはもはや何をしてきてもどうにでもなれといったあきらめの境地にすでに達しているというか。
とりあえず今の私は仏陀もかくやというほどの悟りを開いてしまっている。
ということで、さぁこい!!と意気込んで。
週末の夜を迎えてみれば妹のような一周まわったアプローチなどなく。
では朝にでも!?と気構えしてみれば「おはよ~」なんてのんきに挨拶されるという始末である。
拍子抜け。
何て、どこか破天荒な行動を期待していたと気付いたのはお昼ご飯を食べ終わった後の事だった。
が、私が食後のコーヒーを呑気にすすっていたところで事は動き出した。
やっと姉が動いたのである。
といっても
「さて、京ちゃん。約束通りお付き合いいただきましょう!」
なんてとくに着飾ることなく普段通りの恰好で、いつもどこかに出かけるような調子で言ってきたので特に驚きというものでもないのではあるが。
しかし、やはりというか。
いや生徒会長が以外だったというだけで姉が車を使うのは別に変なことでは無い。
成人しているわけだし、それに何度も姉の運転にはお世話になっているから危険性が無いのは重々承知のみである。
実に安心して移動を任せられるというものである。
けれども車に乗ったはいいがひとつ気になることが。
「ところでどこに行くの?」
場所を告げられていない。
まぁ、特段気になるというわけでもないが教えてくれるなら知りたいところでもある。
「ん?いやぁ、たまには京ちゃんと二人っきりで晩秋の海でもぉ、とか考えちゃったりぃ」
と、頬を染めて一言。
おおぅ。
いや、別にもう私に対しての感情にああだこうだ言うことはないのだが。
それでもこれは何というか、その・・・
「ごめん、生徒会長に先越されてる」
正確には海が一望できる場所ではあるが、同じ海には変わりない。
「え゛!?・・・じ、じゃあ、映画」
「それは幸と初日に」
「あ゛あ゛ん゛!!??く、くそぅこれじゃあ京ちゃんを楽しませつつその横顔を堪能する私のプランがっ・・・」
ほほう、そういうプランだったのか。
ま、それはどうでもいいとして。
しかし先の二人と被りか、さすがにこれは私にも予想外ではある。
というか誰が予想できたのだろう、といった感じで姉がこれからどうすればいいかを考え悩んでいるのか百面相しながらうなっている。
とはいえ、車に乗ってまだ発進する前の段階で気づけたのは何よりである。
けど、ずっとこのまま、というわけにもいかないだろう。
どこか行く場所が思い浮かぶにしろ、浮かばないにしろ、だ。
「あのさ、姉よ」
「いや、駄目ぇ!!あとちょっとあとちょっとだから!!後生だから京ちゃん下りないでぇぇぇ!!」
・・・いやとりあえず『ドライブでも楽しもうよ』
といおうとした私の発言は姉の勘違いによって封じられた。
はぁ、まったくこういうところは相変わらずというかなんというか。
しかしまぁ、これも姉らしいというか、いつまでも変わらないでいてくれるというのは何気に安心してしまうというものである。
ま、ぜったい口には出してやらないが。
けれどもいつまでたっても縋りつかれるのは面倒というかうっとうしいのである。
「あーーーー、鬱陶しい!!別に降りやしないよ。ただ、私は姉さんが行きたいところならどこでもいいって言おうとしただけ!!今日は姉さんに付き合う日なんだから私に遠慮する必要はないよ」
「け、京ちゃん・・・」
まったく、騒がしいことこの上ない。である。
でも、本音という本音を伝えておとなしくなったし問題も解決だから一件落着だろう。
後はおいおい、どこに行くかきめれば終わりなわけで。
「京ちゃんが久々に姉さんって、『あね」じゃなくて『ねえさん』って・・・っ」
ってそこか!引っかかるところそこなのか!
いや確かに姉さんって呼ば無くなってもう何年もたつけど。
今なのか?ああ、今だからなのか!
この後興奮のままにいろんなところを突き合わされた挙句、一日中『姉さんって呼んでくれた』というつぶやきを聞かされる羽目になってしまった。
言葉には本当に気をつけなくてはいけない、そう肝に銘じずにはいられなかった。
しかし、まぁ、久々に姉さんの喜ぶ姿を見れてよかったのかもしれない。
というのは墓穴までもっていく秘密である。




