case:59 【文化祭本番の場合】Act.2
いまだ一日目というのに教室の外はけっこうな賑わいを見せていた。
これで一日目というのだから二日目にはもっと人でごった返すことになるのは去年の学園祭で知っていることではあるのだが、こう改まってみると結構壮観ではある。
この様子であればわざわざ自分のクラスの状況を今すぐに確認しに行く必要はないだろう。
目的は妹のクラスなわけとはいえ、自分のクラスをないがしろにしようとはあんまり思わない。
まぁ、藤崎さんや小鳥遊さんが担当の時間帯には顔をだそうとは思うがそれ以外では必要もないだろう。
と、いうことだ。
何て、思考を巡らせながら一年生の階へ、そこでは初めての文化祭に楽しんでいる者の顔がたくさんあり、たとえそれが上級生であろうと今日ここでは無礼講とでも言わんばかりに自身のクラスの展示物に呼び込む一年生の姿がありありと映し出されていた。
しかし私はここ最近、いつものメンバーに執拗な迷惑をこうむられていないことで感覚が日和ってしまっていたのだと思う。
・・・いや、よくよく考えたら自分で見ないふりをしていただけだったことを思い出す。
よっちゃんの顔は苦笑いだったのは記憶に深く残っている。
そう、その一角だけ、他とは異質な空気をなはっていた。
確かに学園祭にはありきたりな『お化け屋敷』なのだが、他のクラスのように執拗に呼び込みを売るわけでもなく、ただ一人の生徒が静かに看板を掲げ突っ立っているだけ。
しかし、その恰好。
特殊メイクというのだろうか、それがもう行き過ぎているというか。
もう本物のゾンビにしか見えないその人物が立っているだけで皆引き気味によけて通り過ぎる始末。
そしてその様子に深いため息を吐くそのゾンビ生徒。
うん、間違いなく妹の仕業なのだろうが、こうやるせない気持ちでいっぱいというか、申し訳なさで胸が張り裂けそうというか。
「え、え?な、なにあれぇ・・・え?も、もしかして藤間さんの妹さんのクラス?う、嘘でしょ?」
ふと背後から情けない声が上がる。
誰とは言うまい、ただ一緒についてきといてなんだか情けないとは言わないし、できる女な私はみない、聞いてないふりをしておく。
まぁとりあえず委員長が入る入らないはどうでもいいとして、一応妹には声をかけておかないと後で暴れられても困るというもの。
ということで看板をもっている生徒に歩みよることに。
すると
「あ、藤間先輩っ!本当に来てくれたんすね!!」
何て言葉がゾンビ生徒から発せられた。
いやいや私にゾンビの知り合い何て、とかとぼけることはできない。
だってこの声、聞き覚えがありすぎるのだから。
「・・・その声、櫻井・・・さん?」
「うす、藤間のやろ、あいえ先輩の妹がなんでも勝利の為とかわけわからんことを言い出してまぁ」
おそるおそる確認してみればビンゴ、それもどうしてそうなったかにまで心当たりがありすぎるので私の胃の体力がマッハで減少しているところである。
「まぁ、でもおかげで結構人気でこれが。上級生には受けがいいんすよ」
なんてさっき人が避けてしまうほどのリアリティにため息をはいていたのにこの健気さ、私はもう涙が出そうで仕方ない。
「まぁ、結構こってるよねぇこれ。ね京ちゃん」
なんて私の心をガン無視で話しかけるよっちゃん。
委員長はだいぶ距離を取っている様子。
「まぁ、凝ってはいるだろうけど、これは凝りすぎというかなんt『きゃあああぁぁぁぁぁぁ~』いうか・・・へ?」
櫻井さんの健気さに報いてあげようと慰めの言葉でも送ろうかと思ったらそのお化け屋敷から悲鳴が二つ三つほど。
はて、どういうことでございましょ?
なんてはてなを浮かべると出口から女子生徒数人が出てきたようで。
それに軽く会釈するはゾンビ櫻井さん。
「本当に人気・・・が?」
「あ、先輩信じてないっすね?今ちょうど先輩の妹がスタンバってるんでどうぞ入ってくださいよ」
驚愕する私の心情を見抜いたのか櫻井さん。
「一組入りま~すっ」
なんて声をかけるとお化け屋敷とは思えない活気にあふれた『おーーーーっっ!!』という掛け声。
「ささ、先輩私たちの力作楽しんでくださいっす」
櫻井さんにこんな笑顔で言われたら、行くしかないだろう私。
それがたとえゾンビフェイスで櫻井さんの面影が無いほどにグロテスクだったとしても。
「お、なら私も一緒に!!」
「お姉ちゃんも行くわよ~!!!!」
「ちょ、ちょっと宝月さん私は外で、ひぃぃいいいいいいい」
三人のお供も連れていざ入り口へ
「んじゃちょっくら行ってきますか、じゃあ後でね櫻井さん。時間余ったら一緒にまわろうか学園祭」
「了解っす、お気をつけて」
よし・・・気をつけなきゃいけないのか。
覚悟を入れよう。
まず結果から言うとそこらのお化け屋敷に負けていなかった、と思う。
妹も妹で私だからと特別扱いすることはなかったし。
ただ、一つ委員長のせいで終始悲鳴しか聞こえなくて怖いというよりもはや一種のそういう見世物を見せられている気分だったけど。
そうして、学園祭一日目は過ぎていく。
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