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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
7/133

case:7 【×三女の場合】Act.3

保健室で束の間の休息を味わう。

保健室の先生もなかなかにいい人で、本当に昼休み終了の鐘が鳴っても戻るよう促すことは無かった。

どころか煎茶にお茶菓子にとせんべいまでくれたぐらいである。

しかしこの先生も姉には被害をこうむったようでたかが妹自慢に五時間つき合わされたと言うのだ、同情しかできないのがいたいところである。

そのおかげもあってか現状の理解もしてくれ、挙句に大変な姉妹を持ったことを慰めてくれる。

なんていい先生なんだろうかと思わず涙が出そうになった。


ちなみに妹のことは今はじめて知ったとの事だったので私がかいつまんで話した。


ほっと一息、落ち着きに息をこぼした。と、授業中にも関わらず保健室前の廊下からまるでイノシシが走りこんでくるのかのような騒がしい足音が響きわたっているのが耳に引っ掛かった。

それもだんだんとこちらに近づいているかの様に聞こえてくる。


するとその轟音は保健室の前でぴたりと止まり、保健室の扉が勢いよく開いた。


『トモセンセイ が あらわれた』


 たたかう

 にげる

 せっきょう

→たすけをもとめる


・・・な、なんだこの選択肢は!?

ゲームコマンド?そんなの知らん!!よっちゃんにでも聞いてくれ。

しかしいまこの場によっちゃんは居ない!!

なんて間の悪い幼馴染なんだ、などと嘆いても現状が好転するわけでもなく。


ええい、ままよ

選択肢なんて関係ない、ここは保健室。養護教諭にたすけを求めるのが正解だr、知らん振りしている!!


だったら最初からコマンドとやらに表示する必要はあるのだろうか。

よっちゃんだったら絶対に必要!!だ、と言ってくるに違いないだろうな。

我が姉は扉の前で陣取って私の体調がどうとか早退がどうなど吠えている。

だったら後は戦うのか逃げるのか、説教か・・・


戦う、というのは意味わからない、逃げるに関しては逃げ道は現在姉が養護教諭と何か話しているせいか堂々と塞いでしまっている。

そうなると選べるものなど説教しか無いでは無いか。

そりゃあ説教したい気持ちは何ぼでもあるが、それにしても本当にさっきの選択しはなんだったのか。

選択できない選択肢など表示する意味はあるのか?意味不明すぎr・・・

何かいまどこかの界隈から批判されたような気がする。


だがもうこうなったら説教開始である。

未だにわーぎゃー言っている姉の元まで歩み寄る。


「姉よ・・・」

「あっ、よっちゃんから聞いたけど体調が悪いってきいてきたんだけれども」


今はそんな事どうだっていい、誰に聞いたとかなんて想像すれば誰にでもわかる。

問題なのはそこでは無い。


「授業はどうした・・・」

「えっ、それはその・・・京ちゃんが心配で自習に」


まだ新学期もそうそうにたかだか私事で一クラスのしかも私の所属するクラスの授業を遅らせた、というのかこの姉は。


「姉よ、常々私はよそ様に迷惑はかけるなと・・・これはお母さんにも言われていることだよね?」

「え!?いやその、それは緊急事態だったからでして」


否、言い訳は不要である。

説教とは総じて言い訳は受け付けないものである。


詰まるところ私はあのコマンドの中で唯一残っていた説教を選んだわけである。

そも、あの選択肢から選ぶ必要性はどこにあったのだろうかと疑問には残ったが機にしないことにした。



しかし何がきっかけでいったいこうなったのか、昨日きちんと話をしなかったことか?

それとも後のことも考えず疲れたからと保健室に来たことが悪いのか?


いや、そもそももっと昔から重大な過ちを犯していたのか?

もう何をどうしたら平穏と言うものにありつけるのかわからなくなってきた。

そんなことを考えながらも、いや考えながらだからこそ今とは関係ない恨み辛みが説教に入り乱れ、延々とそれは続いていた。

気づけば午後一の授業も終了間じかに迫ってしまっていた。


ああ、私としたことが説教もそこそこに早々に姉を教室に戻すこともできたのに今のタイミングで戻しても意味が無いではないか。

そして授業終了のチャイム。

やってしまったとはこのことだ、私の中で少しの後悔の元深いため息をついてしまう。


しかし、しかしだ事もあろうにそのため息とチャイムを受けてこの説教が終わると勝手に思い込んだ姉がいたのだ。

長年一緒に暮らしてきたのだそれこそ熟年の夫婦のように表情一つで丸わかりだ。

少しでも自分が悪いことをしてしまった。という罪悪感があるのならばそのようなことがあるわけもなし。

一介の教師が、だ。


別に教師という職業が必ずしも完璧な聖職者出でなければならない。

なんていう行き過ぎた幻想を抱いているわけでは無い。

訳では無いが、姉がそれからあまりにも逸脱しているなんて事になってしまっていようものならば恥の上塗り、エーゲ海より広い私の心でももはや我慢の限界である。

え?太平洋?そんなことは知らない。とりあえず私の怒りゲージはマックスなのがわかればそれでいい。


「おい、姉よ・・・」

「え、は、ひゃいっ・・・け、京ちゃん?」


もはや終わりと高をくくってのほほんとしていた姉の方をつかんで一睨み、それだけで姉は現状を理解。

何とか逃げる方法を模索し始める。まぁそうはさせないが。


「正座」

「え、え?ちょ京ty」

「正座、しろ」

「あっ、はいぃ・・・」


圧力に屈した姉がおとなしく正座をする。

ひとまず大事なことを聞かなくては。


「次授業は?」

「ありません・・・」


「ふ、藤間さんの午後はあなたのクラスで最後なのは本当よ」


ふむ、同じ教職のものからの言質も取れた。

生徒と教師としてはあってはならないことだが、姉妹ならば問題も無いだろう。


養護教諭の先生がすっと出してくれた椅子に腰掛ける。

「さあ、覚悟はいいか?」


「はい」


一拍遅れての返事、覚悟の表れであることは間違いない。なら問題なし。

さぁはじめようか。


「大体、姉は教師依然に大人としての、いや私達の姉としての自覚があるのか!?え?んん!?」

「え、ええはい、すいません、わたくしめが浅はかでした」

「だれが喋っていい、と?」

「ひぃ、ごめんなさっ」


こうして午後一の姉の授業だけではなく、その次の授業までサボってしまう羽目になってしまった。


「暫定藤間三姉妹の力関係は年齢順ではない、と。とりあえず藤間妹さんは保健室で休憩していたことにしときましょうか」



放課後まで説教を続けてしまったがその間私は体調不良からずっと保健室で休んでいたことになっていた。

ここの保険の先生はできる人のようだった。

名前覚えておかねば・・・おそらくこれから多く利用することになるだろうから。

もう少し続きます、お付き合いください。


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