case:6 【×三女の場合】Act.2
三女編第二話
まだまだ続きます。
よろしくお付き合いどうぞ。
午前の授業は事もなく終わりを告げる。
姉の暴挙も最初の一回のみで後は自身の授業があったのか自粛したのか。
・・・紛れも無く前者だろう。
本日からは午後からも授業がある為現在は昼休み時間。
少なくとも授業中のシンとした空気は無く、友達同士軽くふざけあったりと和気藹々とした空気である。
正直この絶好のタイミングで両者、少なくとも姉に動きがないことにうっすらと背中に嫌な空気を感じてしまった。
午前中の奇行のおかげで教頭先生にこってり絞られているだけとかだとうれしいのだが。
すると昼休みには聞きなれた、しかしこの時期にはそぐわないそれが流れた。
昨日からの流れだと、これは私を奈落の底へ落とし入れる類のものでは無いか、と不安にさせてしまう校内放送だ。
なんとなく食べていたお弁当の箸を止めその放送の先を求めて無意識にスピーカーの方へ顔を向けてしまう。
『あー、あーあー。マイクチェックワンツー。あ、お姉様お昼一緒に食べましょう!!屋上でまttあぁ、先生何を、ってお前はっ、やめ邪魔をするn、お、おねえさm』
思わずむせ返ってしまった。
放送はとまり、学園内に二度目となる殺伐とした空気。
そのせいで一際目立つ私一人の咳に自然と皆の視線が集まる。
よっちゃんは今朝のことがある為、変に大爆笑せず堪えている様子ではあるが。
昨日から変に頭痛がなりやまない。
しかし昨日とは違い名前を出されなかったことが幸いし、また『お前関係か』という意志がこもった視線ではなく語尾にハテナマークがついていることだけが救いである。
盛大に知らん振りしてやり過ごすことにする。
が、そうは問屋がおろさなかった。
つかの間の静寂の後に再び校内放送が。
私の本能が今すぐここから逃げ出すことを告げている。
『京ちゃぁぁんさっきの放送は気にしないでくださぁ~い。あ、でもでも屋上ではなく資料室にきt、あ教頭先生あ、あぁっ』
流石駄姉妹、思考回路が似通っているのか、どうせなら私の思考にも寄せて欲しい。
これで最初放送が藤間姓に縁あるものの強行なのでは、とクラス中で疑問の渦が巻き起こっていた。
何とかごまかそうとこころみようとする。みんなの視線に気づかないふりをして昼食を再開することに。
しかし、おふざけが入った生徒がポツリと『京お姉様』とつぶやいたのを私の耳は拾ってしまった。
あまりにもとっさのことで思わず声がしたほうに振り返ってしまった。
それが仇となった。
私が知らん振りを続けている間も教室にいる人の視線はちらちらと私の方に向いていたらしく、今の行動で先の疑問が確信へと変わってしまったのだ。
その瞬間、今の出来事しか知らない人間にも昨日の一連の出来事まえでも知っている者の口からすぐに広まってしまう。
そして最初の放送は明らかに藤間京の姉ではなく京を『お姉様』と呼んでいたことから妹だろうと思い至るのには早かった。
流石によっちゃんもこの一連の早さには我慢も限界だったのか噴出してしまっていたが、これは自分自身の失態なので甘んじて受け入れよう。
が、予想外にも先におふざけでお姉様呼ばわりした生徒だろう(名前は知らない)が今度は堂々と私の前で『京お姉様』とよびはじめたのだ。
「ね、京お姉様、さっきのお姉様の姉妹?だろ?いいねぇ学校の人気者になれんじゃね?」
それも相手のことを一切考えていないような軽いノリでだ。
この一言にクラスの空気が一瞬ひやりとした、が次の瞬間まるでそうするのが当たり前であるかのように教室中で妹のお姉様という発言、三姉妹が学校に揃う奇劇、そして藤間先生までもが同じ行動をとることらがひそひそと繰りなされる。
その中に、「もしかしたらこの藤間さんも・・・」なんていうのが聞こえてしまったからにはどの藤間だよ、と声を大につっこんでしまいそうになってしまったが藤間京は大人だ、心は太平洋より広いのだ聞かなかったことにしてあげた。
だがいつまでもこの(名前の知らない)男子生徒を眼前で踏ん反らせる訳にも行かない。が、どう言ってやればいいものか押し黙ってしまう。
そして気づけばクラスの中で私の呼び方がお嬢様で定着し始めていた。
そんな時なぜだか、本当に私でもわからないのだが先まで笑っていたよっちゃんが勢いよく立ち上がった。
それはもう勢い良すぎて椅子がガタンと大きな音を上げ一瞬クラスがしんと静まり返るくらいである。
私も私で予想外すぎてきょとんとしていた。
「皆、それ以上悪ふざけで京ちゃんのこと『お姉様』なんて呼んだらマジで妹ちゃんにぼこにされるよ?知らないわけ無いよね?商店街のロケットウルフ・・・あれ京ちゃんの妹だからね?」
は?ロケットウルフ?なんなのだそれは、まったく聞き覚えがない。
しかし何でだろうかクラスの皆は思い当たるふしがあるのかよっちゃんの言葉を聞いて所どころで危機感からなのか生唾を飲み込む声が聞こえてくるほどだ。
「えーと、田中君?もさあんまり調子乗らないことをおすすめするよ」
「え?あ、ああ、そ、そうだなご、ごめん藤間・・・」
気がつけばお姉様というワードなんのその、いや逆に禁句に近い空気になってしまった。
よっちゃんには一応助けてもらった。ということになるのだろうか。
だけれども疑問がつかない。
「よ、よっちゃん一応聞くけどその商店街のなんちゃらって?」
「・・・あ、これさっちゃんには内緒って言われてた奴だった」
ふむなるほど経緯はわからないがよっちゃんは我が三姉妹の誰とも仲がよろしいからこういうことがたまに起こる。
「ね、今回は私が言ったってこと内緒の方向でおねがい、ね、ね?」
まぁ、今回ばかりは助けてもらった手前聞かないわけにもいくまい。
仕方なし、とため息をつくと、よっちゃんも意図に気がついてくれたのか胸をなでおろしていた。
そしていつの間にかクラスは元の喧騒を取り戻していた。
・・・いや、何かにおびえながらそれを取り繕っていた、特によっちゃんに田中と呼ばれていた男子なんかは。
もちろんその何か、というのは私のこと、正確には私の妹なのだろうが。
はぁ、妹の普段どおりの一面に苦難させられその一方で私の知らない妹の一面に助けられる。
昨日から姉妹と言うものに振り回されっぱなしである。
せっかくお母さんが作ってくれたお弁当も半分しか食べていないがもう胸いっぱい、頭いっぱいだ。
「あーまぁ大丈夫?」
「ん、まぁ何とかなると思うよ」
よっちゃんも心配してくれるがこれからはこれが当たり前になる可能性を考えると今からへばっていては持たない。
「でも午後一数学」
「ちょっと保健室行ってくるわ」
食い気味で答える様子に苦笑いしながらも快く見送ってくれるよっちゃん。
なんだか今日だけは朝の件を込みで考えてもよっちゃんが素敵に見える。
さすがにまさか本当に二日連続で姉妹た達に頭を悩ませることになることになるとは。
想像していなかったわけではないがいざそうなってみると全力でへこみそうになる。
なんだか眩暈もするし午後一の授業は姉の数学、正直今は顔も見たくないのが心情である。
ということで保健室へ行く私。しかしなんていって午後の授業をサボるもとい休もうか。
そう考え保健室の扉をたたく。
「失礼します・・・少し具合が悪くて・・・」
まぁ手っ取り早く貧血が落としどころかな
「あら、あなた藤間さんの妹さんじゃない・・・えっと、その気の毒ねぇ。いいわよ一時間ぐらい休んでいって」
なんて考えていると養護教諭の先生は私のことを覚えていてくれたのか、いや、今の言い方だと大方姉が宣伝しまくったのだろう。はた迷惑が今日に限ってはいい方向に運ぶぞ。
まぁ、現状を理解してくれて休んでもいいと言うのならその恩恵にあずかるのもやぶさかでもない私は、今あったことを忘れるかのように保健室の別途で眠りに入ろうと目をつぶるのだった。
・・・寝る前にふと思い当たった授業に来た姉に私が保健室に居るなんて知られたらそれこそ、とこの後の展開にも目をつぶるのであった。どうしよう。
妹より姉の奇行のほうが・・・
いえ、引き続き週間更新を心がけます。
感想やご質問等常お受けいたしております。