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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
4/133

case:4 【×長女の場合】Act.3

ホームルームが始まってから三十分。

本来であれば生徒の自己紹介だったりが中盤に差し掛かっているか早ければ教室を出なければ自由にしていていいとかいう時間というところだろう。


「やっぱり京ちゃんはいつまで経ってもお姉ちゃんの女神様ですから、誰にもあげるつもりは無くてですね?何故女神かと言うと京ちゃんが3歳の時に・・・」

「ちょっ、ちょっちょっちょっ!」


え、それがなぜ?何で私の過去の暴露話が始まっているのだろう。

それも今口に出そうとしてるのは私でも恥ずかしいと思うもの。

過去の暴露話でもあの時は可愛い、この時は素敵、とかならまだ黙って聞いていたが私の沽券に関わるものは黙っていられない。


しかし他の皆は違ったようで止めに入った私を空気が読めない奴を見るかのような視線を向けてくる。

一体私が何をしたと言うのだろうか。


「はい、なんでしょうか京ちゃん」


「いや・・・あの先生が話しするのもいいんですけど・・・人のプライバシーって物があると思いまして」


クラス中の視線が一言一言ごとに重くなっていく。

だがこの後の二年間を思えばコレぐらいは受けてしかるべきと甘んじるべきなのだが。

・・・本当によっちゃんだけは許さないが。


「えー、でもそれじゃ京ちゃんの魅力が十全に伝わらないんですがぁ」

「伝える必要が無いんですが?」


藤間先生もだんだんと口調が教師から素へと戻っていく。


「でもでもぉ、それだと京ちゃんがぁ」

「今の段階で私のことはまだ皆知らないと思いますし、一人だけ優先して言う必要も無いと思います」


しかしクラスの皆は変わることなく私の言葉に対し『いやいやいやいや』と否定の空気を当ててくる。


「でもお姉ちゃんはまだ京ちゃんの魅力を全て伝え切れてないのよ?」


とうとう先生ではなくなったようだがそれを気にするものは誰も居ない。

「それは、一気に伝えるより少しずつ明らかにしたほうが伝わるのでは無いでしょうか?」


その姉、もとい藤間先生の態度に若干ながらイラっと来たことは否定しない。

しないがあえてここは耐えて一生徒であることを強調するように丁寧口調は崩さない。


そんな頑張りが通じたのかクラスの何人か(極少数ではあるが)も確かに、とうなずいてくれていた。

もちろんその中によっちゃんは入っていないが。


「う~ん、でもでも~」


しかしこの後に及んでもまだ話足りないのか食い下がってくる様子にさすがに堪忍袋の緒が切れ掛かったそのとき、救いのベルが鳴り響いた。

悔しそうな顔をした奴の顔はしっかりと覚えておく、ひとまずこれで藤間先生の強行は阻止できる。


「あぁ~、終業のベルですね残念。ではこの話はこの後の帰りのホームルームの後にでもするとしましょう」


んんんっ!?

にっこり笑顔で何を言うのでしょうこのお方は。

皆も『よっしゃあぁぁ』見たいなお祭り空気はもう勘弁して欲しい。

こうなったら言いたくなかったけどアレを言うしかない。


「と、智姉さん・・・きょ、今日は一緒に帰って欲しい・・・なぁ」


普段姉のことを姉さんなどとは呼ばないからこその最終兵器。

別に姉が嫌いだから呼ばない、というわけではない。無いがこういったことが起こるから普段から呼んでいると効果が薄くなってしまう。

と、言うのを幼いころに何度も学習させられたのだから。


「なっ、け、京ちゃんそんな、そんなにお姉ちゃんのことを!?そ、そうね今日はお姉ちゃん早く帰るわね!!皆もそういうことだからごめんね?」


さらに滅多にしないおねだりのダブルパンチである。

我が姉ならこれで崩れないはずが無い。

・・・代わりに何かいろいろと恥ずかしい思いをしている気もするが気にしないことにしよう。


ともあれ、おのおのでくすくす笑いやおふざけのブーイングが走ってはいるが私の沽券は守られたわけで

終業の挨拶を告げる藤間先生に安堵のため息をつきながら腰を椅子深くに沈める。

いつの間にやら前のめりになっていたようだ。


後ろのよっちゃんから「お疲れ様」と声を掛けられたが思いっきり笑い声だったので無視を

私のおねがいのせいか帰りのホームルームを光がごとく速さで終わらそうとする姉とそれを見て早く帰れると私に感謝を告げる話したことの無いクラスメイトを見て今更ながらにこのクラスにあてられたことになみなみならぬ不安を感じてしまった。



帰りのホームルームも自身の機転、という名の犠牲の元ものの数分で終わりを告げ担任の先生も足早に教室を後にした。

それには早く終わるといきまいていた生徒も唖然とせざるを得なかったのか先生が居なくなっても数分は皆説くに動くことなく静かになっていた。

だがそれもすぐもとの学生特有の空気を取り戻し静まり返っていた時間すら長く感じるほどあっと言う間にクラスは喧騒にあふれかえった。


「あー、で、どうするよ京ちゃん」


「どうするって、一緒に帰らないと後がうるさいし。それとよっちゃん後で駅前のシュークリームね」


私の恨みは根深いのだ。


「んじゃあ一緒に待ちますかぁぁあああああ!?何で!?」

「なんでも」


有無を言わさずよっちゃんを睨みつける。

なんだかんだ言ってよっちゃんも身に覚えがありありなのだからしぶしぶ了承してみせる。


しかし家の姉の行動力は自分の欲望が絡むと恐ろしい程の力を生むはずなのだが、かれこれ数分経つが姉が戻ってこないことによっちゃんも、そして私自身も不思議に思い始めていた。

クラスの面々もホームルームが終わったからとちらほらと教室を後に、残っているのは数人となっているがさすがに何時間もまつ羽目になるのは勘弁願いたいものである。


「智ちゃんセンセー遅いね。どうする京ちゃんさんや」


さすがに能天気が目に付くよっちゃんでもここまで待てば同じ考えにいたるのかもぞもぞと帰る準備を始めながらも問いかけてくる。そもそも一緒に帰る約束はしていないのだが。

いや待てよ?スマホを見ていないからもしかしたら昨日の段階で帰りの約束もしていたのかもしれない。

・・・いや気づかなかったことにしとこう。

うん、約束してないからよっちゃんがまつ必要はないのだ。


「や、私は待つよ。後がめんどいし」


あえて、帰る準備をするよっちゃんを尻目にまったく帰る準備をせずに言い切る。

片頬を膨らませじと~とこちらを睨んでくるが、今日はスマホを見ていないのだから


「京ちゃんさ、スマホ見てないだろうけどさぁ 『キンコンカンコーン』 ・・・」


さすがに態度に出すぎたのか私が勘付いていることを感じ取ったよっちゃんがなにか言おうとしたときそれはなった。

もうあまり生徒の残っていないであろう時間だというにも関わらずの校内放送の合図ある。

突如なったそれに私は本日二度目になるが何か悪い予感を感じた。


『アー、アー、京ちゃん?藤間京ちゃん!?ごめんねお姉ちゃんまだ仕事が終わりそうに無いから先に帰っ、あっ、教頭先生まだ京ちゃんにあぁ・・・・・・・・・・』


・・・・・・・・・・・・・・

ふむ後ろでいろいろな先生の声も聞こえたがおおむね放送の主は、うん姉だろう。信じられないことに。


「ね、ねぇ今の智ちゃんセンセだよね・・・?」


これにはさすがに笑えないのかぎこちなく問うてくる。

まぁわざわざ答えなくてもわかるだろう。


「京ちゃんあんまり怒らないで、ね?」


怒ってる?おかしなことをいうよッちゃんだ。

「怒ってないよ?私は」


「め、目が笑って無いんだなー・・・はは。ほ、ほら智ちゃんセンセも先に帰っててって言ってたし、駅前のシュー買いにいこ?」


なぜかよっちゃんにあやされているのが納得いかない。

本当に私は怒っていないのだ。少し帰ったら姉に言わなければいけないことがあるだけで。

その内容をできるだけ姉に伝わるやすいにまとめようと頭を働かせているのだ。そうくそばかやろうとどうすれば姉が理解するかを。

さすがにここまで姉の強行が続くとなると軽く不登校になりそうである。

何とか激励に激励を重ねてくれたよっちゃんのおかげで学校を後にすることができたが、あのまま教室に居たら職員室に乗り込みそうだったがよっちゃんには感謝しかない。

シュークリームに関しては免除してやらねば。


しかし校内放送となれば教室に居た人は少なかったがさすがに聞いていた人は聞いていたわけで、少なからず本日赴任してきた藤間先生と言う人はどこか頭のおかしい先生で京という妹が居る。

そしていずれはそれが私だと言うことが発覚することは明白である。


ともあれば少しあのときのホームルームの選択に関しては後悔がこみ上げる。

けど他に私の沽券を守りつつ切り抜ける方法はあったのだろうかと思うと姉と言うのはつくづく迷惑な存在である。


「京ちゃん、落ち着いた?」


などと長々考えているうちに家についてしまったようで、道中何も話さずに来てしまったのかよっちゃんには申し訳ないことをした。


「ごめんよっちゃん、姉がおろかなばかりに。今度何か作ってくよ」


「お、ほんと?京ちゃんの作るお菓子は美味しいから楽しみ~、それに京ちゃんには申し訳ないけど智ちゃんセンセのそれも楽しいからいいよ」


そうだった、なんだかんだ言って私達三姉妹のあれこれに巻き込まれつつもいつも楽しそうにしているのがよっちゃんだった。

まぁ、それも彼女の長所の一つなのだろう。


「私にはいい迷惑だけどね」


私にもよっちゃんのおかげでおどける調子が出てきたようだ。


「ははは、ま気楽にいこうや。んっじゃまた明日、連絡するからスマホの充電忘れないでよ~」


気をつかわせたままで申し訳なかったが、疲れていたこともあってよっちゃんを軽く見送って家へと帰る。

玄関に入ってすぐにリビングの扉が開く音がした。


「お姉様ぁぁお帰りなさぁい!!」


妹の出迎えである。しかも制服姿で。

そういえば姉のせいで忘れていたが明日は妹の入学式でもある。


制服姿で一日中私を待っていた妹のことだ、限度はわきまえているとはいえ苦労させられることは明白であろう。

・・・明日からやっていける本当の本当にやっていけるか不安になってきた。不登校に、なりそうだ。


「はぁぁあああ」


「お姉様がため息!?誰に悩まされているんですか!?このボクがじきじきに」

「寝る、ご飯になったら起こして」


さすがに妹にかまっている体力はもう無いわけで、朝と同様なにやらわめいている妹を尻目に部屋に戻る。

本当に今日は大変な一日だった。

願わくば明日は何も無いことを願いたい。


『京ちゃんただいまぁ!』

『おまっばかぁ!!今お姉様は寝てるんだから静かにしろよ!!』

『はぁ!?あんた何様よ!!』

『そっくりそのまま返すね!!!』


はぁ、頭が痛い二年になりそうなのは火を見るより明らかだ。

いい加減静かな生活を送りたいものである。

長女編は一旦ここまで

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