case:31 【×高嶺の花の場合】Act,4
時は藤間京が忘れ物を取りに教室へ向かっていた時の話。
部活動にせっせと勤しむ藤間京の妹である藤間幸と幼馴染の宝月弥生。
最近では常にどちらかが藤間京と行動を共にすることが日常と化してはいたが、実際の被害者である藤間京とは違い、危機感への実感が薄い二人は変わり映えのない日常に普段の感覚を取り戻しつつあった。
一般であれば体育祭の終わりは期末考査の始まり強いては夏休みへの始まりということで、すでに意識はそちらに向いてきている状態ではあるのだが、二人は最近ようやくその環境に追いついたというべきである。
だが、これはこの状況においては最悪手。
現に、二人が藤間京がいないことに気が付いたのは部活が始まってから一時間ほど経った頃だった。
「あ、あれ?京ちゃんは?」
「え!?あ、あれ?お、お姉さまがいない!!」
小休止を言い渡した部長。
いつもであればここでマネージャーの手伝いとしてドリンクをもって来るのが最近の藤間京の仕事だったのだが、今日に限ってそれがない。
その原因はもちろん本人がいないことなのだが、有事が有事焦り始める二人。
「ちょ、ちょっとごめん京ちゃん知らない!?」
「お、おおおお、お姉さまどこですか!!??」
陸上部のマネージャーに確認する宝月弥生とは対照的に焦り始める藤間京ではあるが事情を知らない陸上部からは少し引かれた目で見られてしまっている。
「え、えっと、藤間先輩なら忘れ物を取りに行くって教室に・・・ちょうど一時間ぐらい前に・・・」
あまりの驚嘆に少し及び腰で答えるマネージャ。
しかし宝月弥生はそんなことを気にしてなんていれなかった。
何事もないからと事を軽めに見ていた自分への自責と自戒で頭がいっぱいになってしまっていた。
「とりあえず、教室へ行きます!!お姉さまぁぁああああああ!!」
しかし、藤間幸の怒声に我に返り、己も行動を始めるのであった。
ただ、残された陸上部員は事情を知らないがゆえに何事かと唖然のとしているのであった。
ちょうどその時、そんなことが陸上部で起こっているとは知らず静かに目を覚ます。
見慣れない教室ではあるが、ここがどこかはすぐに理解できた。
進学校と謳っているだけにこの高校は長い歴史を持つ。
そうなると当然校舎も何度か改修の工事があったのだが、その名残とでもいうのか我が高校には旧校舎が存在している。
まぁ実のところ、旧校舎を取り壊しするのにもお金がかかるためなかなか決が下りない。
というのが本当のところらしく、姉もケチな学校だと漏らしていた時があった。
その興味から、一度だけ内見をした時がありその時に妙にこぎれいにしてある一室がると記憶に残っていたのが、現在私がいる部屋だったのだ。
話が長くなったが、詰まるところ旧校舎で生徒会長に監禁されている。
一言でまとめるとこういうことだ。
現に私は(なぜか社長が座るような)椅子に手足を拘束された状態で座らされ、変に頬を紅潮させた生徒会長と向かい合っていた。
「ああ、藤間京ちゃん・・・京ちゃん目が覚めたのね・・・」
正直、こう一直線にぶつけられてしまえばいやでも気が付く。
『ああ、この人私に好意を抱いている』のだと。
そしてあまりに突飛な行動力には誰かさん達を思い出してしまう。
だが姉妹たちと違うのは、こちらは手段を完全に選んでいない。ということ。
私をここに連れてきた手段然り現状の私の状態然り。
「ああ、京ちゃん・・・京様・・・あの日からずっと、ずっとこの時を待ち望んでたわ・・・」
一歩、一歩と近づいてくる生徒会長。
その意気は荒く、私への思いがこぼれこぼれていく。
あの日?ずっと?いったいいつの話をしているのか私にはまったく見当がつかなった。
だが、そんな理解の追い付かない私を待ってくれるはずもなく思いの丈が容赦なしにぶつけられる。
「大丈夫よ、愛しの貴女に傷をつける気なんてないから安心して頂戴・・・ただ、そうただ私は貴女とつながりたいのよ・・・深く一つに・・・んふ」
甘い吐息が肩にかかる。
それほどまでに近い距離に生徒会長は身を寄せてきていた。
正直、生徒会長の言葉何ぞ今は聞き流し何とか逃げる手段なんかを探していたのだが、社長が座るようななんてのは間違いだったようで、この椅子なんかそれ用なのか拘束具と一体になっていた。
ぶっちゃけまったく身動きが取れず完全に詰みの状態だった。
そしてそんなのお構いなしに迫りくる生徒会長。
ふとその光景にえも言われぬ恐怖感が『よみがえった』。
そしてその膠着した私の服に生徒会長が手をかけた。
頭の中ではいよいよヤバい、とは思いつつもそれとは反対にまったく動いてくれない体。
もう万事休すと思ったその瞬間、生徒会長の後ろに構えていた扉が派手に蹴破られたのであった。
「くそごるぅぁああああああああああ!!ここかお姉さまはぁぁぁ!!!!!」
見間違えるわけもない。
見事にそれは商店街のロケットウルフその人だった。
いや、うん。
ここは正直になっておこう、何と妹が駆けつけてくれたのであった。




