case:30 【×高嶺の花の場合】Act,3
あの日以来授業の合間やお昼の休憩など、なるべく謎の相手にとって自由がきくと思われる時間はよっちゃんや妹の幸とともに行動する。
単純ではあるかもしれないが確実に安全を得ることはできた。
しかし、それは相手の行動選択の範囲を狭めているだけで、相も変わらず監視されているような不気味な視線はやむことはなかった。
もちろん放課後よっちゃん達が部活中の間も教室に一人で残ることが無いように、というより妹もよっちゃんも過剰に心配しての事か陸上部の部長に打診してくれて一時的に臨時マネージャーということで常にだれかと一緒にいるようにしてくれていた。
もちろんただそれだけで終わっているわけではない。
その間も、変わり変わりに視線の正体がだれであるかを突きとめることに尽力していたし、してくれていた。
もちろんいらぬ心配かけぬように事情を知っている三人のみで。
しかし成果はむなしくも、何も得られず時間だけが刻々と過ぎ、一週間以上が過ぎてしまった。
その間私は慣れないマネージャー業務に奮闘していたし、その合間合間に視線は感じるものの四六時中ではないということがわずかながらも私の心に余力を与えてくれていた
だが人間とは恐ろしくも『慣れる』生物である。ということを実感した。
せざるを得なかった、というべきか。
とりあえず私もそこに関しては心底油断してしまった。
そんなある日のこと、私は教室にあろうことか忘れ物をしてしまった。
まぁ普段からたまに本を机に入れっぱなしにしていたりと結構忘れ物をしてしまうのだが、今回は話が違う。
いつも通りであれば一人で取りに行って何も問題ないのだが、今は有事であり基本的には誰か別の、よっちゃんとかに声をかけて一人でいることは極力避けてはいるようにしていたのだが、この時私は少しであれば大丈夫だろうと誰に声をかけることもなく教室に向かってしまった。
常に感じていたためにその不気味な視線に慣れてしまっていた、そして『誰かが常に私のそばにいるという限定条件でのみ相手は手を出せない』ということを私は勝手に見ているだけで実際に手を出すほどの勇気はない人物なのだろうと勝手に推測してしまっていた。
結果それが最悪な事態を招く要因となっていしまうのだが、この時の私はそれを深く考える必要がないと感じるほどに現状に慣れてしまっていたのだといえる。
教室に入った瞬間に例の視線を感じる。
またか、と感じると同時に心のどこかで『まぁ、また見ているだけだろうしどうせ見ているだけなら慣れてしまえばなんてことない、好きにさせておいても害はない』
なんてまだその相手がだれなのか、どういった人物なのかを知らないくせに憶測だけで判断してしまっていた。
だが結果は私の憶測をまったく無視して全く違うもの。
私は初めてそこで視線以外のものを感じた。
明らかに人が後ろに立っているという気配、息遣い。
ただ、いやなことにその人物の視線は感じ萎えたものでいつも私を見ているものと同じものであると直感が告げていた。
なんてことはない、私がバカなだけである
自分の思い込みでよっちゃんや妹、そのほかの人の気遣いを一瞬で無駄にしてしまう行動をしてしまったと今更ながらに反省、そして後悔ほど先には立たずと猛省。
とは言え私もただでは終わりたくない、と後ろの気配には気をつけつつ逃げるすべがないか教室を見渡してみた。
しかし、今私がはいってきたところ以外の教室のドアは閉まっており、そこから出るにはいささか相手の運動能力と自分の運動能力を天秤にかけても相手に軍配が上がるのは目に見えている。
とは言え入ってきたドアから出ようものならその背後の相手と対面しなくてはならない。
逃げ切れるか、なんて考えている最中も相手の気配はにじり寄ってくる。
幸いだったのは、相手が感情に任せてすぐに行動を起こそうとすることはなかったということ。
とはいえ、時間も有限。
そうそうに行動に移らなくてはいけない。
私が出した結論は後者、よくよく考えてみれば、相手のことを知らないのだから現段階でどうするかなんて考えても意味はない。
どちらをとっても危険なのであれば、せめて相手の顔ぐらいは見ておかないといけない。
それに知り合いであれば話し合いで済むかもしれない。
と、振り返ったとき私はその視線の人物、その正体に驚きのあまり思考が止まってしまった。
「生徒・・・会長?」
あまりのことに私はそれしか言えなかった。
だって、なぜこのようなことをするのか見当もなかったのだから。
その生徒会長はまるで最愛の人物をいるようなうっとりした目で私をみた。かと思えば、油断しきっていた私は生徒会長に霧状の何かを吹きかけられた。
「--夫よ、藤-京--ん・・・--の---つく先は-楽浄土で--ら」
生徒会長が何かを言っているが私はそれをうまく聞き取ることができなった。
急速に薄れゆく意識の中なんでこの人が、なんて考える間もなく私の意識は暗闇の中へ引きづりこまれていった。




