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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
32/133

case:28 【×高嶺の花の場合】Act,1

新編突入になります。

体育際が終わってから早数週間、祭りの熱が冷めるのも早く皆一様にいつもの日常へと戻っている。

しかし、私としてはどうしてか体育際から、何かと誰かに見られているような、監視されているような感覚が付きまとっていた。


最初は慣れない運動を真剣に取り組んだせいか、一人だけ興奮冷めやらず。

といったところだろうとおもっていたのだがどうやらそれも違うようだ。


最初こそそんな勘違いに妹の自主練習に付き合うなんて自分にしては愚行を冒してはいた物の、さすがに運動のことになると三日坊主もびっくりの半日で体が限界を迎え妹と姉によるドクターストップが入ったがそれ以前に続ける気力すらもなくなっていたのだから。


だがそれにも関わらず視線を感じる日々は続いている。

さすがにおかしいと思った。



とは言えどうせ姉が私が慣れない運動なんかを始めたから心配で見に来ているのだろうと思っていたのだが、意外と授業中は静かなもので。

正直な所感、姉の動向はいつも様相範囲の外側から突然降ってくるから要注意したいところではある。


どうせ授業中静かなのはまた教頭先生につかまっているとかなのだろう。

最近は委員長の強制練習のせいでかまってあげられなかったし、姉自身も保健室での一件以来委員長にはどこか弱い。


だから暇な時間を見つけては目の保養にと、とか考えているに違いない。

とは思う、思うが、どこか姉らしくないというか、姉にしては・・・私の知っている藤間智という人物にしては積極性が感じられないことだけは引っかかりを覚えた。



「はぁ・・・」


そんな日々が何日も続くとさすがにもどかしいというか、何というか。


「?どったの京ちゃん、ため息は幸せが逃げるよ~」


はっと出たため息に他人事のようにけらけらと笑いながら茶化してくるよっちゃん、ぶっちゃけ笑いごとではない。


「幸せって何だろうねよっちゃん・・・私にはどこか遠い言葉に思えて仕方ないよ」


このやり取り、小学生からの付き合いであるよっちゃんにはわかるだろう。

私がこういう時はきまって姉妹に悩まされていることを言う合図でもあるのだ。

それを聞くなりアメリカ人もかくいう如く肩を上げ『Oh~』なんて同情した目で見てくる。


どっかのドラマではないのだが、同情するのなら何とやらというやつだ。

まぁ私は寄越せと言うよりもらってくれ、と言いたいところだが。



「ちょっとそこの二人!!サボっていないで掃除!!早くする!!」


「「!!」」


なんてやり取りしていると、掃除中の委員長から叱責が飛んできた。

体育祭からこちら向こう一か月同じ清掃当番になった委員長様である。


いいことは続かないが悪いことは続くのかと常々思う。

しかし気のせいか最近委員長の当たりが少し物腰柔らかく

「藤間京!!もっときびきび動きなさい!!」


なっているなんてことは完全に気のせいだった。


「まったく、真面目にやれば早く終わるのに何であなた達は・・・」


「ま、まぁまぁ委員長あとはゴミ捨てだけでしょう?私行ってくるからっ」


あ、あいつ一人逃げる気だぞ!そんな私一人委員長の説教なんて損なんかかぶってやるものか。

「一人じゃ大変だろうから私も行くよ、いや、さっさと行こう、よっちゃん!!」


なんてゴミ箱をふんだくってゴミ捨てスペースまで一直進する。


「なっ、藤間京!宝月弥生っーーーーーー!!!」


逃げ出す私達に委員長の叫びが追いかけてくるが、それが私達に届くことはなかった。


「ていうか逃げたら逆に説教怖くない?」


よっちゃんのそんな一言。

そ、そんなのなんてことはないし。とは口にできなかった。



「まぁ、とは言えさっきの話、今度はどっち?」


ゴミ捨てスペースは一階。

今私たちが掃除担当しているのは四階の音楽室。

なので目的の場所へ向かう間に先ほどの話題を持ち直してくれるよっちゃん。

意外とこういう人情深いところがあったりする。


「たぶん、姉」


「たぶん?」


そう、たぶんなのだ。

今のところ、姉に直接問いただしているわけではない。

だからおそらく姉、だということぐらいしか思い浮かばない。

『おそらく、この前の委員長の件から自重して接触は避けているのだろう』といったところである。


なんてこと最近の状況も含めよっちゃんに説明しながら階段を下りた直後またその視線を感じた。



さすが噂をすれば何とやら。

私はよっちゃんにゴミを押し付けその視線を感じた方向へ走った。

50m10秒03で走った。

が一足遅く、視線の主を見入るどころか影すらもなかった。


「び、びっくりした~いきなり走らないでよね京ちゃん」


「ごめんよっちゃん・・・」


とりあえず今も視線を感じたことを説明し謝る。


「一応、勘違いじゃないんだよね?」


「う~ん、だといいんだけど」


自分の感覚をうたがいたくはないが、ここまで正体をつかめないとそれしか考えられない。

もしくは姉がばれないように何か悪だくみをしているとか、だとすれば今日の夜にでも腹を決めて接触してみるしか。


なんて考えていたところ

「だ~れだっ」


なんて間の抜けた声と共に視界をふさがれた。

こんなことをするのは一人しかいない。


「なんだ、姉よ・・・」


なんだ、尋問対象が自ら来てくれるなんて好都合。

なんて考えたのもつかの間、一つの答えを今まさに私は得た。


それは、さっきの視線の正体は姉ではないということだった。

私は追いかけていった。

追いかけていったのだ、なのにいくら私が遅いからといって息をきらさずに背後を取るなんてありえない。

そのことに気づいたとたん、なんともぞっとする恐怖感にかられた。



それともう一つ、こんな道草食って戻った後の委員長の説教を思うと胃が痛くなっていた。

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