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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
28/133

case:25 【×体育祭の場合】Act,3

ここ数週間の鬼コーチによる地獄のような練習を乗り越え私は今グラウンドに立っている。

試合にスタメンのメンバーで臨むために。


もう一度言おう。

スタメンメンバーとして私はグラウンドに立っている。

ついにこの日が来てしまったか。

だがあえて言わせていただこう。

どうしてこうなった、と。



事は数分前程度にさかのぼる。

そうなのだ、私自身この事実を知らされたのは体育祭当日の試合開始数分前なのだ。


例年通り体育館で生徒会長の宣誓と共に体育祭は開催の狼煙を上げた。

正直、この時まで練習をしてきたのは別に試合に出たいとかそんな体育会系な思考からなるものではない。

決っっっっしてない、というかそういうものだったら帰宅部なんてやっていないだろうよ。


ただ委員長の様子から反抗的な態度を取ったらどんな嫌がらせを受けるか分かったものではない。

それになんだか委員長から逃げるのは嫌だ、と心の淵でどこか思ってしまった自分もいた。

故に運動音痴は運動音痴なりに死ぬ気で練習をしてきた。


それに運動音痴は目に見えてわかる私なんかを競技に出すことはしないだろう、といった謎の安心感があった。

去年はバレーボールだったが、球は打てない顔面レシーバーをわざわざ本番に出すこともなかった。

だから今年とてそうだろう、と。

 

正直、委員長の熱血感を見るになんとなく勝つ気なのだろうと、私への鬼コーチっぷりは敵視からくるもので正味こんな使えないと自負できる選手は補欠へと回されるだろう。

なんてたかをくくっていた。

だから練習期間中も別段気にはならなかったし、疑問にも思わなかった。


しかし告げられた現実は悲愴、初回からスタメンにて交代は不可。

最後まで頑張れ、という残酷な宣告だった。

この発言には一緒に練習していて、私の運動音痴さを知っている者まで驚きを隠せずよっちゃんでさえあまりの衝撃に空いた口がふさがらないのかぽかんとしている。



だが以外にもこれに猛反対を示したものがいた。

なんと、練習にあまり参加もしないで生徒会副委員長が来る時だけ狙って練習に参加していたミーハーな女子だった。


曰く『見ているだけで悲惨なこの運痴なんか使ったら一回戦敗退でいい笑いものだろう』との事だ。

いや、まぁその通りなのだが、別の誰かの口から言われるとこう頭にくるものがある。

しかし現実は現実と我慢して飲み込むことに。だってその通りなんだから。


よっちゃんが小声で『副会長意識しちゃって、ろくに練習してないくせによく言うよ』と苛立ちをあらわにしていた。

それだけで私としては救われるものもある。


けれども誰かはこれを言わないといけないわけではある。

だって私みたいな運動音痴を出して正気かどうかは確かめなればならないのだから。


ただそれを切り出した者の言い方が少し悪かっただのこと。

さあ、これに対して委員長の答えはいかなものなのだろうか、この答次第で私の待遇が変わってくるのだから言い出した女子も委員長に何か反論されたとしても頑張っていただきたいものである。



「誰が何を言おうと結果は変わりません。それにソフトボールに仕方なく参加した貴女にとやかく言われる筋合いはありません」


眼鏡をくいっと上げて冷たい視線で言い放つ。

眼鏡の奥のその瞳と正論で二の句が出てこない女子生徒はすごすごと引き下がってしまう。


いやこれは怖いだろう、横から見ていた私でも少しぞくりとした。

少なくともまだ私にあの委員長は向けられていない、相手を完全に軽蔑したような視線だった。

あれ?私って嫌われてるの?それとも好敵手とかいて〔とも〕と呼ぶ的ななにかですか?

ここに来て委員長がさらにわからなくなってきた。と思ったがしかし


「それに笑いものにされるのはへまをする誰かさんでしょう?」


なんてこちらを見ながら嘲笑してきやがった。


即刻の前言撤回である。

この人全力で私のことが嫌いだろう。


しかし、私を全校生徒の笑いものにしたいなどよくもまぁ本人の前で言えたものだ。

私も久しく抱くことのなかった明確な大きな怒りがわいてきた。

今までは別の何か、生徒会だとかそういう団体的なものに怒りの矛先を向けていたが、今回は本気で一人の人間に向けたくなった。


そこまで言うならいだろう、委員長に目にものを見せてアホ面を拝ませてもらうとしようではないか。

そして勝利の美酒ファンタを片手に私がい委員長を笑ってやるのだ。

『目論見通りにいかなくてごめんなさい』とね。



というような気持で試合に臨む決心をして今グラウンドに立っているわけなのだが。

私としては先ほどの頭に血が上った私を殴りたくなってきた。


どう頑張ったところで運動音痴がどうにかでいるわけないのだから。

グラウンドに立って相手の一年生に挨拶をしている最中私は練習中のミスを思い出し、きりきりと痛み出す胃痛に気を取られ挨拶には上の空だった。


どうか、どうか何とか事が穏便に運びますように。

委員長に目にものとか見せれなくてかまいませんのでどうかお願いします。

いやマジで、本当に。

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