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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
22/133

case:20 【×ライバル登場の場合】Act.1

とある日の放課後、私は一人の生徒に声をかけられた。


声をかけられた理由はいたって簡単、来月へと控えた体育祭に関してのことである。

声をかけてきたのは今まで面識もなく特に、というか全く話したこともない相手。

だが今年から同じクラスメイトとなったことで顔は知っている、程度の認識である。


彼女は自らクラス委員長をかって出るほど学業に真面目、というか眼鏡におさげと全体から醸し出る委員長ですが、といった雰囲気からなんとなく上に立つような人なのだろうな。ということは理解できる。

が、申し訳ないことにクラス委員長などを決めるホームルームの時に名前を名乗っていたのは確実だが私は彼女の名前の一文字も出てこなかった。


弁解しておくと私がただ冷たい人間なのではなく、周りの暴挙暴動に振り回されているせいでそちらにまで手が回っていないだけである。

決して覚える気がないとかそんなことはない。

そこだけは間違えないでほしい。


「藤間さん、来月の体育祭に関してですが、皆さんにも言っていることだけどあらかじめ何の競技に出るかは早めに決めておいてくださいね」


「ん、わかったよ委員長」


帰宅前、たまたま今日は陸上部がミーティングだけ終わるとの事でよっちゃん(と、ついでにくっついてくるであろう妹)を待っているときの何気ない日常の一コマ。


何気ない、当たり前のことではあるのだがその当たり前から遠ざかっていた私としてはずいぶんと平和をしみじみと感じる幸せなひと時である。



こんなことで幸せを感じているあたり一人の女子高生としてはもう終わっている気がしないでもないが、そこは気が付かないふりをしておこう。


委員長に了解を伝え、そろそろよっちゃんが来る頃だろうとカバンを持った時視界の端で何かがきらりと光った。と、思いそちらに視線を向けると、必要事項を伝え終わって私にはもう用がないと思われる委員長が眼鏡をクイっと『まさに』といったポーズで直しているのだが、その反射の光の奥では心なしかきつい視線が向けられているような気がした。


はて、と思い巡らせてみる。

委員長とはあまり関わりがないはずだが、私の思い違いでなければ今委員長は私を完全に睨みつけているだろう。

私何かしただろうか。


「藤間さん、いえ・・・藤間京。今回は負けを許してしまったけれど、絶対に貴女の好きにはさせない。これは宣戦布告です」


「はぁ・・・は?」


本気で気が付かぬうちに彼女に何かやらかしていたのではないかと申し訳ない気持ちで思い当たるふしをひたすら脳の奥底から引き揚げようとしていたところ、左斜め向こうの方向から思いもよらぬ宣告を受けた。

気の抜けたような返事をしてし待ったこともしょうがないだろうに。

しかし委員長的には気が許さないのか『いいですか!!』などと憤慨しているといったところだ。



いや、少し待てほしい。

私と委員長、顔見知りかどうかも怪しいレベル。有体に言えばただのクラスメイトなだけの関係。

言葉にすれば関係があるように聞こえるが実際にはクラスメイトにでもならなければ一生縁がないことだってありえる程度の間柄だぞ?

そんな私と委員長、何かそんな盛大な勝負していただろうか・・・


そして私はいつ勝ったのだろう。

正直これほど達成感も優越感も何もない勝利は初めてである。

勝手に敗北を宣言して勝手に戦線布告してくる、人違いを疑ってしまうほどだ。


「いや、委員長」

「おい~っす、京ちゃんおまたへ~」

「お姉さま待たせてごめんなさ~い!!」


いいタイミングで現れてくれるな問題児の二人よ。

その二人の登場で剣呑な雰囲気で私を睨んでいた委員長も(舌打ちをしつつだが)背を向け去っていく。

まったく空気を読め、などと現状を知らなかった二人に言うのは酷な話ではあるが、肝心なことを委員長には聞けず仕舞いで終わってしまった。


「およ?京ちゃん委員長となに話してたの?」


「ん?いや体育祭のお競技早めに決めておけって・・・よっちゃんも言われたでしょ?」

「え、体育際?それはボクも気になりま・・・・・・・!!」


さすがに謎の宣戦布告を告げられたことは黙っておこうとよっちゃんの質問に答えたときだった。


「え、そんなこと聞いてないけど・・・」


「は?・・・え?」


なんかいろいろ謎が増加した。

私に先に伝えてよっちゃんには伝えていないなら来た今伝えればいい。

しかしそれをしないということは皆に言っているということは嘘?

ただ私に話しかける口実だった?

宣戦布告するために私に話しかける口実が欲しかったというなら納得がいく。


だとすれば余計に何にないして勝負していたのか、が気になるところである。


「あーでも新崎さんでしょ?彼女京ちゃんの事ライバル視してるっぽいからね、特別に宣戦布告とか?」


なんと、驚きの事実がよっちゃんの口から出てきた。

意外と頭が回るときは回るのか、驚き桃ノ木である。

「どういうこと?」


こういう情報網の広さにはさすがと言わざるを得ないよっちゃん。

こういうときは素直に聞いておくのが一番である。


「いやさ京ちゃん、新崎さんだよ?」


「うんだから、その新崎さんがなん、で・・・」


疑問を口に出したところで『新崎』という単語をどこかで見聞きしたことがあることに思い至った。

しかしそれがどこだったかがうまく出てこない。

つい最近も見たような気がしたのだが・・・


「はぁこれだから万年学年一位様は・・・新崎淳子、我がクラス委員長にして学年二位の秀才ちゃん。京ちゃんて意外と周りに無関心だよね」


「お姉さまを前にいけ好かないふてえ奴ですね!僕がとっちめて・・・・・!!」


はっと思い至る。

そういえば毎回テスト結果の順位表で自分の下にその名前があることを思い出す。

となると先の宣戦布告はそういうことだったのか、それは何というか・・・。


正直私は誰かに勝ちたくて勉強しているわけではないから、順位になど興味がなくしたい奴は勝手にしてくれとは思っていたがそれに自分自身が知らないところで巻き込まれることになるとは思いもしていなかった。

あと再度言って多くが無関心の冷たい奴なんかではないことを言っておく。

その部分に関しては断固異議をとなえさせてもらおう。


「お姉様がすごいのはもう天が定めたこと、それを逆恨みして・・・・・・・・!!」


なんやかんやさっきからわめいている妹を無視してはいるがいい加減うるさいから帰るとしようか。


はてさてしかし、私の周りに集まるは波乱万丈しかないのか。なんて思いを寄せる。

つくづくこの時の私は呑気だったのだ。

新編突入になります。

感想等よければよろしくお願いします。

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