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三姉妹方程式  作者: 蝉時雨
一学期
14/133

case:14 【×不良生徒の場合】Act.3

狭い路地の片隅にぽつんと立ちずさむ自販機でお茶を二本。

空気を読んで私の分に含めジャージ女子の分も購入する。


ただ、奢ったつもりでは無いのだが当たり前のように受け取るジャージ女子。

お礼すらないのだが。


まぁいいのだけれども・・・いいのだけれども。




「何があったか聞かないの?」


しばらく二人の間に沈黙が流れたがお茶を飲み途中にジャージ女子が一言溢した。


溢した一言に私は頭をひねった。

それは彼女の言葉に対してではなく、自分の行動に対し果たしてなぜだろう、と。

別に見返りとか欲しいわけでも、正義感ぶって誰でも助けなきゃとか思っているわけでも無い。


だからといって本当にまったく何も無かったのか?といわれればそう言うわけでは無いとも思う。

ただ、いつだったかの幼い記憶がかぶっただけ、それもおぼろげな思い出そうとしてはいるのだが、いまいちピンとこない。

そんな思い出の中の自分が行動しておけと言っていた。



「別に、なんとなく目に入ったのが女子を私刑(リンチ)しようとしてた場面だったってだけ。それに正直、面倒ごとに巻き込まれるのはごめん」


「・・・はぁ?」


ああ、うん、我ながら矛盾していることを言っている自覚はある。

面倒ごとが嫌ならそもそも無視すればの話だし、自分の都合だけを押し付けて助けただなんて正義感振りかざすのは偽善者のそれだしな。

と、当たり障りの無い返事をしているとそういう反応にもなるだろう。


だから相手のいぶかしげな表情も納得できる。

でもこれ以上私に言えることはないし、仮に馬鹿馬鹿しくとも正直に『子供の頃に何かがあったんだ』といったところで一体何があったんだと追求され結局は馬鹿にされるのが目に見える。

だって正直その引っ掛かっている『子供の頃の何か』というのを結局私は思い出せていないのだから。

でも何でか、アレはたすけなくては、と漠然と思ったのも事実ではあるしな。



だからこそ、ならここは茶を濁し何にも言わないほうが吉であろう。



「はぁ・・・まぁ、いいけどさ」


結局向こうが先に折れたのか本当のことを話せ、とずっと睨み続けていたのを私が無視していると勝手に納得なり何なりしてくれた。


「で、こっからどうするつもりなわけ?まさか逃げてはい終わりって?まぁそれでもいいけどさ」


・・・たしかに。

確かに急に逃げ出したのはいいが逃げたあとのことを全くと言っていいほど考えていなかった。

そう考えてみれば書籍とかでも劇的に救出した後の描写って詳しく書かれていることとか無い気がする。


こういう時ってどうすればいいのだろうか。

とりあえず家まで送るとかが安直で安全だろうか。


「い、いやまぁ、家までは送るよ。乗りかかった船だし」


「でも面倒ごとは嫌いなんじゃなかったっけ?」


「嫌いじゃない、できれば避けたいだけ」


先ほど私が言った言葉の揚げ足でも取ろうと思ったのかニマニマと私の提案に返してきたが

残念、確かに嫌いは事実だがハッキリ嫌いと明言はしていない。


「・・・・・・へーへーそうかいそうかい」


すると思ったとおりの回答が帰ってこなかったことに見てわかるほどにふてくされた態度をとり始めた。

そして我先に、と送ると言っている私を無視して狭い路地から1歩足を踏み出したとき、その進行方向とは反対側の路地の入口の方から怒声がなった


「みづげだぞ!!でめぇ゛らぁぁあああ!!」


もはや聞こえたとかの範囲ではなく、辺り一面に鳴り響いたと言うのか丁度いい程の声量。

顔を赤く火照らし荒々しく息を吐いては今にも食いつきそうにこちらを睨んでいるのは紛れもなく、私が蹴りを入れてやったあの男子生徒だった。


さらに怒りに塗れ頭の中沸騰中と思いきや彼とは反対側、つまり私たちが今出ようとした方にも続々と先ほど周りに一緒にいた生徒が集まり逃げ道を塞いでいた。

侮りがたし不良生徒、怒っていても頭は回るのだな。



なんて呑気に考えている暇もなく、怒り心頭の生徒が1歩、また1歩近づいてくる。


「ったく、結局面倒ごとに巻き込まれてんじゃん?」


などと陽気に笑いながらも私を庇うように男の前に出ようとする彼女。

何だかんだ悪ぶっているように見えてさっきから気遣いは一応出来ているのを見ると芯は優しい娘なのだろう。


と、考えているうちにも何とか打開策を模索してみるもあまりいいのが思いつかない。

おそらくとは思うが、うん、と言うか確実にこの状況では私が一番の足でまといだろう。だが


「いや、だったら面倒は最後まで被るよ、あの人多分私に一番怒ってるみたいだし。あっちの数人だったら貴女1人でも逃げ切れるでしょ?」


まぁ、私ひとり少し痛い思いをすれば彼女は多少の怪我程度で済むだろう。

うーん、何だかんだ言ってみても結局行動は偽善的になってしまうなぁ


「はぁ!?バカかアンタバカなのか!!??アンタ1人でどうこう出来るもんじゃ絶対無いだろ!」


現に彼女も私の提案に激しい叱責を浴びせてくる。


「くっそ、くそどうすりゃ・・・あー、もぅ!!!」


彼女自身もどうにか出来ないかと挟み撃ちされてる双方を見比べつつ頭を働かせて見るもいい案は無いのか結局私を睨みつけておわる。

んー、うん、でもやっぱり私の案ぐらいしかこんな変な状況に落とし込んでしまった事への挽回方法はないんだよなぁ。

などと呑気に考えていたその時



「お姉さま!!!!!」


自分達がいる路地の入口とは反対の入り口、怒り心頭の不良生徒の近くからその大声は響いた。

皆が皆一斉にそちらに目を向ける。


・・・正直時間的にも確率的にもありえない事なのだが、私はその声を知っている。


そう、そこに居たのは紛れもなく私の妹だった。

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