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9話 妹を取り返すために

「帰れ」


「ちょっ、、、お父さん!帰るところもないから連れてきたんじゃない」


「出てけ」


「。。。。。」



オレは今青い髪の少年、のようなリンダの父、スヴェンさん(41)に追い立てられている。ちなみにレイラさんは39だそうだ。二人の外見には年相応という言葉は通用しないらしい。


「だいたい、素性もなんもわからん怪しい奴を年頃の娘と一つ屋根の下に置いとくことなどできん」


「部屋ならリンクの部屋が空いてるじゃない!?」


「リンク、、、?」


「あたしの弟よ。去年15歳になった時に家を出て行ったの。冒険者になって有名になるんだ、ってね」


ふむ。年頃の男の子らしいな。


「ダメだダメだ。部屋がある無いの問題じゃ無い。常識的に考えてもそうだろ」


うん。確かにお父さんの言う通りだ。

オレも娘が居たら同じような反応をすると思う。


「リンダ、父さんの言う通りだ。町まで連れてきてもらえただけでもとても感謝してるよ、ありがとう」


「ほう、どうやらある程度常識はあるみたいだな?わかったらとっとと出てけ」


「そんなっ!あたしも、、、気を失ってから助けられたのに。。。」


「あらまぁそうだったの?あなた、娘の恩人ですもの。せめてお昼くらい食べて行ってもらってもいいんじゃない?」


「ぐぅ。。。ふん、仕方ないな」


スヴェンさんが悔しそうに了承した。

どこの世も母は強しだなと思った。


「さぁ、そうしたらもうすぐできるからテーブルで待っててね」


レイラさんが台所に戻っていく。

オレとリンダとスヴェンさんはテーブルにつき椅子に座って待つ。


「ところでリンダ、お前こいつに助けられたって言ったな?モンスターにでも襲われたのか?」


「あっ、そうそう。とんでもない化物みたいなモンスターが二匹出てきて、ギルドでパーティーを組んだメンバーはみんな殺されちゃった。。。」


「なにっ?メンバーの中にはジェイルも居たろう!?あいつなら平原のモンスターが束になってかかってもヤられるはずない」


「うん。。。ただのモンスターだったら、敵じゃなかったんだけどね。今回受けた調査依頼は謎の光の調査だったんだけど、その光は伝説級のモンスター二匹だったってわけ」


「なっ、、、!?伝説級、だと。。。?この辺にそんなバカみたいにレベルの高いモンスターが出るはずが。。。狼は、巨大な銀色の狼じゃなかったか!!?」


「ううん。父さんの右足を奪った銀狼ではなかったわ。でも、狼は居た。金色のね。それと、火の鳥」


ガランッ、、、

リンダから話を聞いて、スヴェンさんは座ったまま抱えていた松葉杖を思わず落とした。


「き、、、金狼と、、火の、、鳥だと?」


スヴェンさんはワナワナと震えている。


「そ、、そいつらは今どこに。。。?」


リンダの代わりにオレが答える。


「火の鳥は、オレの妹の体乗り移って何処かへ飛んで行きました。金狼は、火の鳥から重傷を受け【従魔の契り】をオレと交わして今はこの中で眠っています」


オレはスヴェンさんに金色の狼の顔型のペンダントを見せた。


その途端スヴェンさんの表情が変わり俯いた。


「。。。おい小僧。カイト、とか言ったな?」


「はっ、、はい。。。」


「お前、レベルは?」


「1、、、ですが。。。?」


「はっ!モンスターと戦ったこともないのか。そこら辺のガキの方がまだマシだな」


「お父さん!そんな言い方しなくても…」


「リンダは黙ってろ!おいカイト、お前をこの家に置いてやってもいい」


「ほ、ホントですか!?」


「ああ。ただし、条件がある」


「条件?」


「お前、ギルドに登録して冒険者になれ」


「ええっ!?って、、、ギルドってなんですか??なんとなくはわかったんですが詳しく教えていただければ。。。」


「はぁ。。。お前、そんなんでよく生きてこれたな。リンダ、説明してやれ」


「わかったわ。カイト、ギルドっていうのはね、、、」



リンダが詳しく教えてくれる。

極端に掻い摘んで言うと、仕事斡旋所だな。


「なるほど、理解しました。でも何故オレをギルドに??」


「まずは強くなれ。そして、その金狼を使いこなせるようになって、伝説級のモンスター『銀狼』をお前が倒すんだ」


「ちょっ、いきなりそんな理由もわからず。。。しかも、銀狼ってことはこの金狼と同じく化物みたいな狼なんでしょう!?」


「ああ、アイツは化物だ。オレの仲間と、右足を奪った野郎だ」


「スヴェンさんの仲間と、、、右足…」


「お父さんは、昔は大陸でも名の知れた冒険者だったのよ。『蒼雷のスヴェン』って二つ名が付くぐらいの剣士だったわ。だけど、ある町を襲った銀狼を討伐しようとしてその時に。。。」


「そうだったんですか。。。金狼のことは何故知っていたんですか?」


「伝説級のモンスターは各地で伝わる話がある。金狼、銀狼、麒麟や鵺。お前の妹を連れ去った火の鳥は不死鳥と言って、そいつも伝説級とギルドに認定されている」


そうか、やはりとんでもないやつだったんだな。


「そして、俺が銀狼に殺されそうになった時にいきなり現れたのが金狼だ。そいつが銀狼と永年の宿敵かの様に闘いを始めたから俺は生き残る事ができた。というわけだ」


「お父さん、それはあたしも初めて聞いたわ。。。」


「モンスターにやられてモンスターのおかげで助かった、なんてのは俺にとっちゃあ恥でしかないからな。お前にもリンクにも言ってない。まぁ、お前たち兄弟には怖がらせて近寄らせない様に昔話程度に話していたんだが、オレの仇討ちに冒険者になるって言った時は失敗したなと思ったよ」


そう言ってスヴェンさんが苦笑いしたとき、レイラさんが台所から料理を持ってきてくれた。


「みんな、お待ちどうさま。なんだか話し込んでるけど、とりあえずお昼にしましょう」



グラタンのような料理とサラダにスープだ。見たことのない食材が入っていたがとても美味しかった。なにも食べていなかったこともありすぐに皿が空になると、レイラさんは笑顔でお代わりを持ってきてくれた。


「こんなに食べてくれるなんて嬉しいわぁ。リンクもよく食べてたけど、元気にしてるかしら。。。」


「そういえば弟さんはスヴェンさんの仇を討ちに出て行ったんですか?」


「それもあるが、あいつはちょっと変わっていてな。武器を探しに行くと言って出て行った」


「武器、、、ですか。。。」


「そうそう、変なのよあいつ。ちょっとランクが上がったからって調子に乗っちゃってさ」


「??どういうこと??」


「あいつ、異例の早さで3級冒険者になったわけ。あっ、ちなみにあたしは4級ね。それで強さに自信がついて天狗になってたんだけど、ある日町に立ち寄ったゼロ級冒険者にコテンパンにヤラレちゃったのよ。その時持ってた剣が折られたから『もっと強い武器なら負けてない』って家を飛び出しちゃったって感じかな」


なるほど、THE男の子!だ。

冒険者にもランクがあるんだな。


オレはスヴェンさんとリンダから色々と教えてもらった。


【伝説級モンスター】について。

伝説級と認定される条件は2つ、モンスターのレベルが最低250以上であること。5級、4級、3級、2級、1級、ゼロ級、超級とある内の最上位、超級ランク冒険者がパーティーを組んでも討伐できるか不明であること。この2つだ。ちなみに、モンスターのランク付けも同じく5〜超級まであって、それを超えると伝説級になるらしい。冒険者は皆ギルドに登録するときに、伝説級モンスターに遭遇した時は一も二もなく撤退し、最寄りのギルドに報告する事が義務付けられているとのことだ。


「色々とわかりました。。。でも、何故オレが冒険者に??」


「それは、伝説級モンスターを倒せるのは伝説級モンスターだけだからだ」


「そうなんですか。。。そういえば、冒険者のランクに伝説級がないのは??」


「たどり着くやつがいないからだ。現在世界中で登録されている超級冒険者は5人。どいつも化け物みたいに強いが、ギルド創立して100年以来伝説級モンスターを討伐した記録がないからだ」


「なるほど。そういうことなんですか」


「でもねカイト、お父さんも昔は1級まで行っててすごかったらしいんだから!」


へぇ。。。かなりすごいんじゃないかそれ?オレはこの少年のような父親には喧嘩じゃ絶対勝てないな。


「まぁそんなわけでお前が強くなって金狼と共に銀狼を討伐できたらオレは仲間の仇が射てるってわけだ。人間の強さじゃ限界がある。正直、同じ伝説級の金狼を持つお前が来なけりゃ泣き寝入りするしかなかった話だ」


そう言ったスヴェンさんの表情は、とても悔しそうだった。


「お前も伝説級の不死鳥を追うには強さがいる。おまえにとっても悪くない話じゃあないと思うが?」


そうだ。

オレはモヤを取り戻さなきゃいけない。

選択肢は、ないんだ。


「、、、わかりました。オレ、ギルドに登録して冒険者になります」


「よっしゃ、よく言った。それでこそ男だ。リンダ、お前もギルドに今回の件報告に行かなきゃいけないだろう?カイトも連れて行って登録してきてやりな」


「そうね、わかったわ。それじゃあ準備ができたら一緒に行こうカイト」


「ああ、頼むよ」


「その前に、カイトさんを部屋に案内してさしあげて。リンクの部屋は何もないけど整頓はしてあるから」


「ありがとうございます。スヴェンさん、レイラさん。しばらく、お世話になります」


「ええ、こちらこそ。何かあれば遠慮なく言ってちょうだいね。でも、くれぐれも命の危険があるようなことはしないでほしいわ。リンダ、カイトさんにちゃんと守ってもらいなさいね」


「お、お母さん!こんなやつ、あたしが目を瞑っても倒せちゃうわよ!!」


「おぅカイト。俺がある程度闘い方を教えてやるが、、、リンダに手ぇ出したら輪切りにすんぞ?」


「は、、はい!心得ておきます。。。」


「もう、二人とも!いこ、カイト!」


オレはリンダに手を引かれ二階の弟が使って居た部屋に案内された。

リンダの部屋とは向かい同士だ。


階段を上る途中、

「誰が手ぇ繋いでいいと言ったぁっ!?」

「あなた、リンダももう大人なんだから」


と聞こえてきたが今は無視しよう。


入った部屋はベッドとタンス、小さなテーブルと椅子が置かれている小ざっぱりとした部屋だった。


「準備するから待っててね」


と言われ、とりあえずベッドに腰掛ける。


「今はモヤを取り返すために、頑張ろう」


オレは首のペンダントを手にとり、決意を固めたのであった。

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