7話 一夜明けて
ピィ、、、ピィー、、、
「う。。。ん。。。」
小鳥の鳴き声でリンダは目を覚ました。
テントの布から陽の光が透けて見える。
「テントの中、、、っ!?みんなは!」
ガバッと身体を起こす。
横を見ると、黒髪の男が隣でスヤスヤ眠っていた。
「カイト、、、くん。どうして、一緒に。。。っ!?」
下の方がスースーしている違和感を覚え下に目をやるリンダ。
「〜〜〜っっっ!!きゃあぁぁぁっっ!」
「うわっ!!、、、ど、どうしたリンダさん!また化物が。。。??」
バチィーンッ!!
【カイトは会心の一撃を喰らった】
なんでオレが。。。
ーーーーーーーーーー
「シクシク、、、もうお嫁に行けない」
泣きたいのはこっちだ。
「だから、何度も謝ってるじゃないですか。それとも、あのままで寝かした方が良かったんですか?」
「だからってあんなカッコ。。。見たでしょ?」
「見てません!目を瞑って脱がせたから一応たいへんだったんですから!!」
「う〜〜〜っ。。。」
腰に巻いた布をガッチリ両手で押さえながらオレを睨んでくる。
「ともあれ、お互い命があったからそこは喜びましょう」
「、、、そうね。。。みんな、死んじゃったのよね」
オレの言葉にリンダさんの表情が曇る。
「妹さん、、、モヤちゃんは?」
「火の鳥に連れ去られました。金狼、、、ウルハと名付けたんですが、彼女が言うにはモヤはまだ生きてると。身体を乗っ取られ、心まで奪われるにはまだ数年時間がかかるだろうと言っていました。恐らく、それまでに手を打てばモヤは助けられる、、、はずです」
「そう、、、だったの。。。そういえば、いま彼女って言ったけどあの金狼は女なの?」
「はい。【従魔の契り】というものを行いました。今はこのペンダントの中で眠っているようです】
「【従魔の契り】っ!?あの金狼、伝説級だったのね!道理であの威圧感。。。てことは、金狼相手に戦ってたあの火の鳥も同じようなものなのね」
「あの、伝説級とは??」
「呆れた、、、そんな事も知らないのね?見たところ冒険者でも無さそうだし。あなたたち、どこから来たの?乗っていた鉄の箱はなに??」
「たぶん、わからないはず。。。遠いところからです」
ゴブリン、金狼、火の鳥、剣や鎧、アレルガルドという聞いた事もない名前の言語、5本足の馬、女神の声。
色々な要因からここが地球ではないことは容易に想像できる。
ならば、住んでいた住所やバスの説明しても理解してもらえないだろう。
「ふぅん、放浪者ってとこかな。見たことない服着てるし。まぁ根掘り葉掘り詮索はしないわよ」
「ありがとう、ございます」
「ところでカイトくんはさぁ、いくつなの?見た感じあまり年は変わらないみたいだけど…」
「19です。妹のモヤは18。。。」
「なぁんだ!あたしと同い年じゃない。敬語なんか使わなくていいわよ、リンダでいいわ。あたしもカイトって呼ぶし」
「はぁ、、、じゃあ、リンダ。色々教えて欲しい。さっきの【従魔の契り】のこととか伝説級とか社会の常識のこととか。オレはとても遠い辺境から来たから、何も知らない世間知らずで。。。」
オレは真剣な表情でリンダにお願いした。
「わ、、わかったからそんなに怖い顔しないでよぉ」
「あっ、、、ご、ごめん。。。」
迅速に状況把握をして、できるだけ早くモヤを助けたい。そんな想いからかつい力が入ってしまった。
「リンダも怖い思いをして、目の前で仲間を失ったばかりだよな、。。申し訳ない」
「うん、、、でも、目の前で仲間が死ぬのは初めてじゃないから。。。冒険者に危険はつきものだし、みんな覚悟の上だもの。。。」
昨夜のことを思い出し、二人とも顔を伏せ黙ってしまう。
すると、、、
ぐううぅぅぅっっ。。。。。
どちらからともなく腹の音が聞こえた。
「は、、ははは。凹んでいても、腹は減るもんだな」
「ふふふ。そうね」
長く青い髪をかきあげながら笑ったリンダの顔は、とても可愛かった。
というか、かなりの美人だぞこの子。
「それじゃあ、あたしたちの街に行きましょ。どうせ行く当てないんでしょ?」
「う、、うん。。。」
「お金は?持ってるの??」
まさか円じゃないよな??
旅行中だったから2万くらい持っているが。。。
「えっ!?まさか1ルギも持ってないの??」
ルギ。。。??
この世界の通貨か。
そんな通貨の国はない。
やはりここは地球では。。。。。
「全く、命知らずも良いところよね。宿屋にも泊まれないじゃない。う〜ん、、、いいわ、父さんと母さんを説得してみるから、家にいらっしゃい。もっと色々聞きたい事もあるし、カイトもそうでしょ?ね、そうしよ」
えっ!?そんな、悪いよ。
と、普段のオレなら言うところだがそんなことを言える状況ではないのは重々承知だ。
「ありがとう。。。よろしく、お願いします」
「よしっ!そうと決まれば急いで帰りましょ!ここは平原だから少ないけど、モンスターが現れない訳じゃないし」
バッとテントの天井にぶつからないようリンダが勢い良く立ち上がる。
パラッ、、、、
そらそうだ。腰に巻いただけの布ならそんな勢いで立てば落ちるわな。
「。。。いや、オレはなにも、、、」
バッチリ見えたかどうかはさておき、慌てて目を両手で隠す。
リンダが真っ赤になりプルプル震えている。
ちびんなよ?
「っ〜〜〜〜!!いやぁぁぁーーっ!!」
バチィーンッ!
【カイトは痛恨の一撃を喰らった】
オレは、悪くないんだ。。。
ーーーーーーーーーー
「全く、しんじらんない!!、、、もうお嫁にいけないのかなぁ。。。」
しんじらんないのはこっちだ。
見ろ、紅葉がついたオレの頬を!
テントからゴソゴソ出て来たオレたちは辺りを見回す。
「あっ、、、居た。。。」
リンダの乗って居た馬が木にくくりつけられたまま立っていた。
他のメンバーの馬も繋いでいたのだが、土に暴れた跡があったから逃げ出したのだろう。
「イイ子ね。。。ありがとう」
リンダが馬の顔にオデコを当てながら言った。
「さぁ、行きましょ。パームラの街は馬で走れば昼には着くはずよ!」
とりあえずの目的は、現状とこの世界の把握だ。情報収集は欠かせない。
馬に跨るリンダの後ろに乗ろうとするが、乗馬などしたことのないオレはうまく乗れない。
「おわっ!、、、グラグラして安定が、、、ないな。。。うわぁっ!!」
リンダの後ろで体制を崩し落馬しそうになる。必死で何かにしがみつこうとした。
ガシャンッ、、、
鎧の上からだが、確実にリンダの胸を両手で掴んでいる。
「あの。。。リンダさん?ワザとじゃないのは、、、わかるよね???」
冷や汗が止まらない。
「あ、、、あんたねぇ。。。絶対ワザとでしょうっ!!?」
バチィーンッ!!
【カイトは瀕死になった】
こうして、
オレたちはパームラの街へと向かった