6話 契り
「も、、、や。。。」
妹の名前を呼び放心する。
どうすればよかった?
走って逃げたらよかった?
いや、逃げても一瞬で追いつかれた?
オレが萌山の前に立っていたら?
金狼に隠れたらよかったのか?
ぐるぐると頭の中がこんがらがる。
思考がハッキリしない。
ただ一つ理解できたのは、妹が居なくなった。
という事実だけだ。
しばらく呆然としていただろう。ふと、後ろで横たわる金狼の方から声がした。
「人間よ」
っ!?
まさか、あんな炎を直撃して生きてるのか!?
驚いて金狼を見る。
地面には大量の血が流れていた。
「妹を、、、助けたいですか?」
「おま、、血が、、、生きてるのか!?」
「黙りなさい」
焦って喋りかけたものの、見た目瀕死とは思えないほどの威圧を受け思わず身がすくむ。
「、、、少し落ち着きなさい。あなた、妹を助けたいですか?」
「な、、、何言ってるんだ、もちろんっ!!」
「そうですかぁ。。。ならば、私の胸をご覧なさい」
倒れていた体を少し仰向け、胸元を見せる金狼。
出血がひどい。。。
「胸の中に、脈打つ石が見えるでしょう?」
血溜まりの中、胸の奥にキラリと光る虹色の石があった。
「あ、、あぁ。ある、な。。。」
血がすごい。
正直血は怖くて苦手な方だが、あまりに現実味がなく気分悪くはならない。
先程手に入れたスキルのおかげと気付くのは、もう少しあとのことだった。
「その石に手を置いて、私の言う言葉をあとに続きなさい」
「えっ?な、なんで?なんのために、、、」
困惑する。
だが、金狼の一言で奮い立つ。
「妹を、死なせたくないのでしょう?」
「、、、わかった」
その言葉で、今のオレにできることは黙って言うことを聞くしかないと悟った。
恐る恐る金狼の胸の傷口に手を伸ばし、虹色の石に触れる。バカデカい狼だ。胸元に潜り込むだけで服が血まみれになる。
「触ったぞ、、、ドクンドクン脈打ってる」
「貴方の名前は?」
「えっ?」
「名前は?」
「海登。カイトだ」
「カイト。。。では、、、」
金狼が唱え始める。
『汝、』
「汝、」
『血の盟約により』
「血の盟約により」
『我が名の元に来たれ』
「我が名の元に来たれ」
『新たなる契りにて』
「新たなる契りにて」
『我が敵を滅ぼさん』
「我が敵を滅ぼさん 」
パァアアアッッッ!!!!
「うわっ、、、、、眩しっ。。。。」
オレの周りが金色の光に包まれる。
『従魔:金狼を手に入れました』
。。。。。。
。。。
。
「、、、、、っん?」
目の前に居た巨大な狼は跡形もなく消えていた。
ただ、大きな血溜まりだけが残っている。
「ど、、、どうなって。。。??」
しかも、女神の声が従魔って、、、
[驚きました?]
「うわっ!!!」
頭の中でいきなり声がする。
聞き覚えのある、金狼の声だ。
[ここです]
いつの間にか胸にペンダントがしてある。
色は金色。狼の顔型のペンダントだ。
「お、、、お前、なんで?」
[先程唱えたのは【従魔の契り】。私とあなたは魂の絆で結ばれましたのよ、あるじ様]
「あ、主って。。。オレが?お前の??」
[人間風情にお前呼ばわりはいただけませんわねぇ。。。あるじ様、名前をつけてくださらないかしら?]
「そ、それより萌山を。。。!」
[物事には順序がありますわ。それに、今はまだ妹は大丈夫ですねぇ]
「今は、、、??」
[貴方の妹はあのアホ鳥野郎に身体を乗っ取られた様です。ただ、私が負わせたあの傷を癒やし、完全に身体を乗っ取るにはかなり時間がかかりますねぇ。それに、あなたと妹は神に愛されし人間。そう簡単には死なないでしょう]
「神に、愛されし??」
[御託はいいからとっとと名前を付けなさい]
「は、はいっ!え〜っと、、、」
いきなり名前をつけろと言われてもなぁ。。。
「あっ、そうだ。お前の性別はメス、、、でいいのかな?」
[噛み殺しますよ]
マジか!?
従えると書いて従魔じゃないのか!?
[女性差別です]
「ご、ごめんなさい。あっ、もしかして妹を連れ去ったあの火の鳥は?野郎って言ってたけど。。。」
「あれはオスです」
火の鳥お姉系かよ。。。
う〜ん、焦るなぁ。
おおかみ…
オオカミ…
ウルフ…
金狼…
きんの…
ゴールド…
ゴールデン…
「『ウルハ』ってのはどうだ?」
[。。。。。]
「ダメ、かな?」
[いいでしょう、気に入りました]
う〜ん、感情が掴みにくい。
突然、ペンダントが光り始めた。
[あぁ、、、力が、溢れる。。。]
「ど、どうしたんだ??」
[あぁ、、、眠たくなりました。傷を癒やすためにも少し休みます。安心なさい、妹は数年は無事です。完全に心を消滅されるまでは生きてるでしょうから。。。]
「あっ、おい!まだ寝ないでくれ、聞きたいことが、、、」
[おやすみなさい、、、我があるじ様。。。。。]
「おいっ!おいってば!!」
[。。。。。]
眠りについたのか。
考えてみたら、胸に大穴開けられてたもんな。
色々聞きたいことがありすぎる。
ウルハが起きたら色々聞かないと。
「っ!?そういえば、リンダさんは!?」
リンダが居た方を見ると、彼女は横に倒れていた。慌ててリンダの元に駆け寄る。
「、、、生きてる。気を失っているだけみたいだな。今はこの人を助けないと。。。」
オレはリンダさんを抱きかかえ、テントに連れて行った。運ぶときに気付いたが、彼女の下半身は、、、その。アレなことになっていたから目をつぶりなるべく見ないように肌に触らないように服を上手いこと脱がせた。
「あんなことがあったんだから、仕方ないよな。オレでも漏らしてしまうところだったと思う」
皆の荷物を漁り発見した布を彼女の腰に巻く。
ホッとしたところで急に力が抜けた。
極度の緊張と疲労から睡魔が襲う。
「萌山は生きてる、、、か。ウルハの言葉を信じて、今は休、、、もう。。。」
そして、リンダと同じテントの中横に並び、オレは深い眠りについた。




