31話 パームラビット
「おら、行くぞ!」
「は、はい」
翌朝、オレとリンダはスヴェンさんに連れられ平原を抜け山の麓にある森に来ていた。
「お前らには兎を捕まえてもらう」
「兎??」
「そうだ。この森にはパームラビットという兎が生息している。今日の晩飯にこいつらを取ってこい」
「兎か、、、なんだか可愛らしい感じだけど、食べるために狩ろっか」
「はっ!可愛らしい、、、か。油断して痛い目見るなよ」
「??はい、わかりました」
兎と聞いてオレとリンダは簡単な狩のようなものを想像していた。
だが、、、
ーーーーーーーーーー
バキッ!
「うぐっ!」
ゴッ!
「きゃあっ!!」
目の前にはバレーボールサイズの真っ白な毛並み、真っ赤に染め上がったまるでユキウサギそのままの姿の兎集団にオレたちは囲まれていた。地球のユキウサギと違うのは、額にドリル状の角が生えていることだ。
「はぁ、、はぁ、、クソっ!数が多い上にすばしっこい」
周りには三十匹ほどの兎さんがオレたちを取り囲んでいる。単体では大した強さはないがすばしっこさと多方向からの同時攻撃で徐々にダメージを与えられていく。
一匹が飛びかかってくると同時に間合いで反応し切り捨てている間に五、六匹が襲ってくるという感じだ。こいつらは集団で狩をするらしく兎のくせに肉食らしい。なんと恐ろしい。。。
「リンダ、一旦この包囲から抜け出そう。ジワジワ体力削られてやられてしまう」
ドシュッ!キーッ、、、
矢を放ち一匹仕留めたリンダに声をかける。
「ええ、わかったわ!」
太刀で兎たちを牽制しながら倒したパームラビットを袋に入れる。
すでに二十匹ほどは取れただろうか。
「よしっ!リンダ下がって!!」
森の出口方面の兎の集団に向けて斬牙を放つ。体から魔素が減ったのを感じるがまだ動く余裕はある。
「いまだ、一気に抜けるぞ!」
「わかったわ、、、、、きゃあっ!」
兎の包囲網を抜けた瞬間、リンダが木の根に足をとられつまずいてしまった。
「リンダ!く、間に合え!」
瞬地で間合いを詰め駆け寄るが今のオレの瞬地〈中〉の射程距離は5m。10mほど離れていたリンダには距離が足りない。
「きゃああぁぁっ!」
「っっっリンダ!!」
兎の集団が角や牙を剥き出しにリンダに飛びかかる。
ズシャッ、、、、、
「、、、えっ、、、?」
頭を抱え込み身を守っていたリンダが恐る恐る顔を上げると、数匹のパームラビットが地面から生えた岩の棘に体を串刺しにされ絶命していた。突然現れた岩の棘にオレも驚いて声が出ない。
「い、いったい、、、」
「ふっ、兎如きにやられるとは。弱い人間は早々にこの森から立ち去れ」
木の上の方から声がする。
ガサガサ、、、シュタッ!
真っ赤に燃えるような赤髪をなびかせ、綿のような緑色の繊維でできたローブのような衣服を纏い、両の耳がピンと尖った15〜16歳くらいの少年が、木の上から飛び降りてきた。
「エ、、、エルフ?」
リンダが驚きながら言った。




