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30話 ウルハと銀狼

オレは家の扉を開けた。


「おかえりなさいカイトさん。あら?そちらの方は。。。??」


「えっと、、、その。。。」


「立ち話もなんだから入っていただいて」


「は、はい。。。」


オレに続いてウルハが家に入る。


[スンスン、、、良い香りね]


「あら、お腹が空いてるのかしら?カイトさんの分が余ってるから、もしよかったらいかが?」


[ええ、いただくわ]


「レイラさん、その。。。すみませんいきなり」


「まあまあ、夕食を食べてもらいながらゆっくり紹介してちょうだいね」


「はい、ありがとうございます」


オレとウルハはテーブルにつく。

階段の上からトントンとリンダが降りてきた。


「あ、カイトおかえり。。。お客さん?」


「あ、ああ。そうなんだ、実は。。。」


バタンッ


「たでーまー!腹減ったー、メシくれー!」


タイミングよくスヴェンさんも帰ってきた。


「お父さんおかえり」


「スヴェンさんおかえりなさい。。。」


「ん?カイトそっちの『エラいべっぴんさん』は誰だ、、、はっ!しまっ。。」


スヴェンさんが珍しく狼狽えている。

ん?冷気??

台所から異様な気配を感じる。。。


うわっ!?

レイラさんの背後に阿修羅が見える。


「あなた、おかえりなさい。。。カイトさんのお客様がみえてるから、そそうのないように大人しく座っててね。。。」


「は、、、はい。。。」ブルブル


うわー、スヴェンさんが震えすぎて残像が見えるわー。にしても、ちょっと言ったくらいでこうなるなんて、レイラさんて凄いヤキモチ妬き?なのか??




ーーーーーーーーーー



と、いうわけで。

四角いテーブルにオレとリンダが隣同士、スヴェンさんとレイラさんが隣同士、ウルハが上座に一人で座る形でテーブルを囲んだ。


「さ、温かいうちに召し上がれ」


テーブルにはスープ、ミートローフとサラダ、パスタのような麺状の料理が並んでいる。

あれ?おかしいな。

スヴェンさんの前にある料理が出来立てなはずなのに凍てついているように見える。

見なかったことにしよう。。。



[、、、いただきます]


ウルハがフォークを使い一口口元に運ぶ。

狼だからフォークとか使えるのか?まさか犬食い??とか心配していたがどうやら杞憂だったようだ。


[、、、美味しい]


「あらよかったわ!お代わりもあるから遠慮しないでくださいね」


そのまま黙々と食べ続けるウルハ。


「ちょっと、、、カイト誰なの?紹介しなさいよ」


きたか!

ついに説明する時が。。。


「あの、、、実は彼女は。。。金狼のウルハなんだ」


ウルハ以外の人の動きが止まった。


「、、、ちょっと待て。こいつが、金狼だと??」


凍てついた料理に苦戦していたスヴェンさんが言った。


「この人が、、、あの狼?」


リンダが信じられない顔で見ている。


「、、、本当なの?」


レイラさんが真面目な表情で聞く。


「、、、はい。本当です」



そんな空気を物ともせずにパクパクと料理を口に運ぶウルハ。


[モグモグモグ、、、おかわり]


「えっ、、、あぁ、はいはい」


レイラさんが一瞬呆けたがすぐに我に返りパタパタと台所にお代わりを盛りに行く。


「な、なぁウルハ。お前からもなにか……」


[後にしてちょうだい。私は今忙しいの]


「、、、、、だ、そうです。。。」


「本当、なんだ」


「人化、か。信じられねぇが伝説級なら不可能じゃないのかもな。。。オレも聞きたいことがある。カイト、メシの後に話をさせろ」


「わかりました」


「あらまあ。でも、いい食べっぷりねえ」


レイラさんが一番早く適応したのか、作った料理を黙々と食べるウルハをニコニコと見始めた。



グゥーー、、、


ウルハが食べるのを見ていたらオレのお腹も鳴ってしまった。


「あら?カイトさん、ミネルバさんのお宅でご馳走になったんじゃなかったの?」


「はは、アクアちゃんとおしゃべりが尽きなくて遠慮したのも重なって、、、」


「まあ!早く言ってくれたらいいのに。ちょっと待っててね」


そう言って台所に行き、オレの分の食事も出してくれた。


「ありがとうございます。いただきま…」



ヒョイ、、、パクッ



「あーっ!ウルハお前、オレの分の!」


[うるさいわね、食事くらい静かにできないのかしらこのバカあるじ様、、、バるじ様は]


「なんか思いついた!的な感じで略すな!!、、、ったく。。。」


「カイトさん、あと少しならお代わりもあるからね」


「ありがとうございますレイラさん」


「ぷっ、、、くく、、バるじ様って、、、カイトが。。。」


「リンダ、そこ笑わない!」


「やれやれ、どうやら危険はないみたいだな」


オレたちのやり取りを見ていたスヴェンさんが料理を口にし始める。

そして、オレもお腹を満たすことに専念した。




ーーーーーーーーーー



[ふぅ、、、美味しかったわ]


「あら、お粗末様。食後のコーシーいかがかしら?」


[コーシー?あぁ、あるじ様がいつも飲んでる黒い汁ね。いい匂いがしてたのよね、いただくわ]


レイラさんがみんなの飲み物を入れに行ってくれる。


「さて、、、金狼さんよ。聞きたいことがあるんだがいいか?」


[なにかしら?]


「銀狼、知ってるよな?」


[ええ、弟よ]


「おと、、、マジか。。。」


[マジよ。愚弟ね、己の力に溺れ暴れまわるしか能のない、どうしようもない弟よ。確か、数年前に竜王を食らうと行って何処かへ姿を消したかしら]


「お前は俺のことを覚えているか?オレは銀狼と一度戦ったことがある。そのときお前が現れて一命をとりとめたんだが」


[あら、そうだったの?覚えてないわ。あの子は姿を見つけたらこらしめてやろうとしているのだけれど、逃げ足だけは一人前なのよ。すぐに居なくなってしまうわ]


「そうか。。。いや、特別感謝してるとかなにか伝えたいとかそんなんじゃないが、お前には一度助けられてるからな。一応礼だけは言っておく」


[覚えがないから別にいいわ。人間を助けようとしたことはないもの、結果的にそうなっただけだから]


「いえ、主人が助けられたのは事実だから私にもお礼を言わせて。ありがとうございます」


[、、、なら、これからも食事をいただくわ]


「ええ、勿論よ!」


「ふんっ、オレの存在なんか鼻から眼中になかったってわけか。。。まあいい、それよりなぜカイトに付き従うんだ?」


[決まってるじゃない、好みだからよ]


「「「「。。。。。え?」」」」


[好みのタイプだからよ]


。。。レイラさんが入れてくれたコーシーを一口すすりながら目を伏せ淡々と答えた。意外と美味しいわねとか言っていたがそんな感想は耳に入ってこなかった。


「そ、、それはどういう、、、??」


リンダが驚いた表情で問う。


[あら、そのままの意味よ。この人とてもいい匂いがするし顔も好みですもの。なにより、眠ってる力がとてつもないから私たちの子供が生まれたら世界を掌握できるはずね]


「こ、子供って!?」


[ふぅ、美味しかったわこれ。もう少し甘い方が好みかしら。またいただくわね。そろそろ眠くなったから寝るわ]


おやすみなさいと言って光を放ちウルハはペンダントに戻っていった。


「、、、カイト、どういうこと?」


リンダさん、顔が怖いです。


「いや、オレが聞きたいんだが。。。」


「あらあら、意外な急展開ね!ウルハさんといいアクアちゃんといい、リンダ。負けちゃダメよ。せめて第二夫人には食い込まないと」


「いや、第一も第二もなにも、、、」


「あら?私は最悪それでも仕方ないかなって思った時期もあるわよ。誰かさんを誘惑する女性が多すぎたから。今そんなことしたら許さないけど」


「ふ、ふんっ!バカなことを言うな!とにかくカイト!明日からまたしごいてやるからな、覚悟しておけ!」


そう言ってスヴェンさんは寝室に入っていってしまった。


ああ、置いていかないで。


「そ、それじゃあオレもそろそろ…」


気まずい空気に耐えきれずそそくさとオレも二階に上がっていく。捕まらないように瞬地を駆使していたのは内緒だ。


『【戦闘スキル】瞬地〈中〉を習得しました』


ヤメて、こんな時に!


部屋に入る前にリビングから

「リンダ、キスだけじゃ弱いわ。早めに既成事実を作るのよ!先手必勝、ウカウカしてられないわ」

「ちょっ!娘にナニをさせる気なの!?」

「あら〜?そんなこともわからないほどお子様じゃないでしょ?」

「お母さん!!」


などと聞こえてきたが今は無視しておこう。


はぁ、なんだか今日も疲れたな。


銀狼、、、ウルハの弟、か。。。


少しずつ知る事実にこれからどうなるんだろうと考えながらオレは眠りについた。

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