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3話 加護

金髪男の後ろにオレたち二人は乗った。


動き出すとき、見ないようにしていた運転手の方を見ると、体の半分が食べられて無くなっているのが見えた。それを萌山には言わないでおいた。


五本足の馬を見た時点でいるわけ無いとわかっていたのに、月が二つあったことが決定打となり異世界に来たことを認識する。


高校の時、バイト疲れで机に突っ伏しウトウトしてしたときに隣でクラスメイトが喋っていたことを少し思い出す。


ラノベ…

異世界…

ゲーム…

モンスター…


空想の物語の話を熱く語り合ってる同級生を思い出す。顔はすまないが覚えてない。


あいつらなら、こんな事態でもすぐに対応できるのだろうか。。。などと無駄なことを考えている間に、オレたちの一行は大きな樹の下で止まった。


なんというか、、、バカデカい樹だ。


平原に一本ロケットが立っているような、ビルみたいな樹だった。改めて地球じゃないことを認識させられる。


「∏∃√∀∌∃√!」


金髪男の指示で他のメンバーが全員馬を停め、荷物をおろしたり薪を集めたり、どうやら野営する準備をしているようだ。


「萌山、どうやらここで夜を明かすみたいだ」


「そうなんだ。。。ねぇ、お兄ちゃん……」


「ん?どうした??」


「あたしたち、、、帰れるのかな??」


「……大丈夫、だろ。。。」


子供のような強がりしか、返せなかった。




ーーーーーーーーーーー




樹の下で焚き火を囲いガヤガヤと一行は野営をしていた。火を起こすとき、男の一人が火打ち石のような物を打って火をつけていたことからライターなどの物は無いことを知る。


四つのテントが立てられ、その内の一つを貸してくれるようだ。


オレは一度だが、学校の休みを利用してカニ釣り漁船のバイトをしたことがあった。その中には外国人もたくさんいた。言葉は通じなかったが身振り手振りである程度意思疎通ができるのをオレは知っている。


助けてくれた七人のうち、女性も一人いた。隣に座っている萌山に食料の干し肉やミルクのような飲み物を勧めてくれている人だ。最初に見たときは全員フードの様な物を被っていてわからなかったが、女性は薄い青色のロングヘアーだ。他にも赤や茶色、緑の髪の男もいる。黒髪はオレと萌山だけだ。金髪男はどうやら集団のリーダーらしい。


オレの隣にいる緑の髪の男がよく喋っている。

この中では一番のお喋りだろうか、おどけた感じの気の良い人の匂いがする。


言葉が通じないためか、地面に木の枝で絵を書き図解でコミュニケーションをとる。


今いる大きな樹の絵を書き、矢印を伸ばし街の絵を書く。どうやらこのあと街に連れて行ってくれるようだ。街の絵を指差して何回か「パームラ」と発音しているから、恐らく街の名前がパームラというのだろう。


それを理解したときに頭に不思議な声が響いた。



『【日常スキル】アレルガルド言語〈序〉を習得しました』



ボーカロイド?のような声色が聞こえ、思わず辺りを見回す。


周りの皆が不思議そうな顔でオレを見て、萌山もオレを見て聞いてくる。


「どうしかしたの??お兄ちゃん。。。」


心配そうな顔で見てくる萌山を安心させるように笑顔で言った。


「い、いや。なんか空耳が。。。」


「まさか、、、お兄ちゃんも??」


「えっ?てことは、萌山もか?」


「うん。。。隣の女の人が話す言葉を聞いて、ちょっとだけこの言葉の意味はこうなんだ、って思ったら声がして……」


「一緒だ。。。なんだ、これは??」


「オイオイ、ドーシタンダオフタリサン。ヘンナカオシチマッテヨー?」


「「っ!?」」


オレと萌山は二人揃って緑髪の男を見る。


「ナ、ナンダヨ?オレヘンナコトイッタカ??」


緑髪の男が喋るとその内容が伝わってくる。


「あ、アンタの言葉が、、、解かる」


「お兄ちゃん!その言葉、、、」


「えっ?まさか萌山、オレの今の言葉がコイツと同じ言葉で聞こえるのか??」


「みたいだね。。。」


「オイオイ、ドーシタンダイキナリシャベレルヨウニナッチマッテヨ?」


他の皆も驚いたようにオレたちを見る。


「キミタチ、ワタシノコトバガワカルカ?」


金髪男が話しかけてきた。


「はい、かなりカタコトですが。。。」



『【日常スキル】アレルガルド言語〈中〉を習得しました』



「「あっ」」


オレと萌山は再び顔を見合わせた。


「ねえ?もしかして、めがみのこえがきこえてる??」


萌山の隣に居た女性が聞いてきた。

さっきよりも流暢に聞こえる。


「女神の声、ですか?」


萌山が答えると、女性はまた驚いた顔をした。

金髪男が口を開く。


「ふむ、このせいちょうそくどは。。。ふたりともかごをうけているのかもな」


「かご??加護、ですか?」


「そうだ。このせかいにはしちにんのめがみとしゅしんがひとりいるといわれている。かみのかごだ」


「七人の女神と、主神。。。」


オレがつぶやくと、緑髪の男が答えた。


「そうだぜ!かごもちのやつらはにんげんをこえたつよさをもつといわれているしな!まっ、おとぎばなしみたいなもんだ!」


「加護って、具体的にどんな?」


萌山が質問すると、青髪の女性が答えた。


「くわしくはだれもわからないけれど、それぞれのめがみのとくせいのかごをうけるらしいわ。すてーたすってあたまのなかでねんじてごらんなさい」



「「すてーたす??」」


頭の中に文字列が浮かび上がる。


ヒノダテ カイト Lv1

状態:正常

【日常スキル】

アレルガルド言語〈中〉〜(アレルガルドの言語が使えるようになる)

【加護】

女神ナナの加護〜攻撃力上昇

女神カナデの加護〜スキル習得率アップ

女神ライアの加護〜防御力上昇

女神メルの加護〜物理外防御耐性

女神セリーヌの加護〜素早さ上昇

女神ヴェルダの加護〜状態異常耐性

女神カリーナの加護〜体力上昇

主神チハヤの加護〜レベル上昇率アップ



なんだ、これ。。。?



「お兄ちゃんこれ、、、チートだよ。。。」


萌山がヒソヒソ耳打ちしてきた。

もちろん、地球の言語だ。


「萌山も出たのか。チート?なんだそれ、美味いのか?」


「ううん、友達がハマってたゲームをやらせてもらったことがあるんだけど、要するに普通の人よりズルいくらい強いってこと」


「なるほど。。。なぁ萌山、これはオレたちだけの秘密にしとかないか?」


「どうして?」


「下手に目立ちたくない、ってのが理由かな。ここがどんな世界なのかもわからないし、用心のためだ」


「そっか。。。うん、わかった」


二人で青い髪の女性を見て、


「出ました。なんかレベルが1って出てきました。それと、アレルガルド言語〈中〉って言うのがあります」


「あぁ、にちじょうすきるね。それはことばをおぼえたらさいしゅうてきに〈終〉になるわよ。だいたい8〜10さいぜんごでみんなおぼえるの。がくしゃみたいにせんもんてきなちしきやぎじゅつをみにつけると〈極〉になるわ。でも、そこにたどりつけるのはほんのひとにぎりのひとだけよ」


なるほど。。。


と思ったそばから、


『アレルガルド言語〈終〉を習得しました』


女神の声が頭に鳴り響く。


オレと萌山は顔を見合わせ、思わずプッと吹き出してしまう。


「色々教えてくれてありがとうございます。でも、加護はオレたちありませんでした。きっと、年齢的に言葉を理解するのに適していたんでしょうね」


「あら、、、もんそんなに喋れるのね。そういえば、言葉を喋れないってことは貴方達は。。。?」


おお、もはや普通に会話できるようになった。

しかし、

やはり素性の話になったか。

オレは萌山に目配せして説明を始めた。



「はい、まずは自己紹介から。実はオレたち、、、、、」



ーーーーーーーーーーー



「違う世界、からねぇ。。。」



青髪の女性、20歳前後かな。リンダは信じられないという表情をしている。


緑髪の男、30代の男トッポもほぇーとした表情で話半分な感じだ。


他の四人の男たちは20〜30代、キン、ハイル、サナト、コマソはただ聞いているだけ。


金髪のリーダー、最年長みたいだが40代だろうか。ジェイルは話を聞きながら神妙な面持ちを続けていたが、しばらく考え口を開いた。



「、、、とりあえず、君たち二人がこのまま居たら危険なことに変わりはない。日が登ったらパームラの街に帰還して、ギルドマスターに相談しよう」



「ギルドマスター??」


オレがわからない返事をすると、萌山が教えてくれた。


「モンスター討伐とか宝探しとか色々な依頼、クエストっていうけどね。それをこなして報酬をもらう生業をしてる人を冒険者って言って、そういう冒険者の集まる施設をギルドって言うのよ」


「なるほど、理解した。マスターってことはその施設の長だな」


「そうだ。俺達はそのギルドで依頼を受けパーティーを組んだ仲間だ。今回は調査依頼でこの『ハーネスト平原』まで来たが、見知らぬ鉄の箱があったので見に行ったら君たちがゴブリンに襲われていた、ということだ」



ゴブリン、、、知ってるぞ。ゲームをしないオレでもわかるスライムに並ぶ有名モンスターだな。


「ただ、残念ながら周りにいた人たちは。。。」


「、、、大丈夫、といえばおかしいのですが、死んでいた人たちは知り合いではありません。たまたま居合わせただけの人たちです」


バスの周りには十数人死んでいたらしい。

モンスターに食い荒らされ、見るも無残な姿だったと聞いた。恐らくは時間差で神隠しにあったのだろう。オレたちがこの世界に来たタイミングは、たまたまだ。


「そうか。。。だが、残念だ。もう少し早く来ていたら」


そう、もう少し遅れていたらオレたちは死んでいたかもしれない。ゲームの中のような世界だが、死んだら終わりというのが現実を痛感させる。


襲われたときのことを思い出したのか、萌山が体育座りで膝をキュッと抱える。


「いえ、、、そういえば、調査依頼を受けてきたって言いましたが、何の調査で来ていたんですか?」


「うむ、俺達は昨夜この平原に現れた謎の光を調べに来たんだ」


「光、ですか?」


「そうだ。目撃者の話によると、赤と金の2つの光が激しくぶつかり合いながらこの平原に落ちたらしい」


なんだろう。UFOだろうか。。。まさかな


「見つかったんですか?」


「いや、まだなんだが日が落ちてしまっては落下現場も探しにくくてな。夜は魔物も活発化するから引き上げるところだったんだ」


「ふぅん。。。光って、あんな感じのですか?」



萌山が平原の向こう、夜の闇の中を指差した。



「、、、、、あ、、、あれだっ!!」



ジェイルが慌てて立ち上がる。


まるで赤い花火と金色の花火が、ぶつかり合いながらこちらに向かってくる。

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