21話 お昼ごはん
ドロ沼の近くの家に住む8才の少女アクアと、アクアの使役するスライムのピーちゃんと一緒に下水の掃除をすることになった。
汚れるから捨ててもいいような服に着替えておいでとアクアに言うと、大急ぎで着替えに行った。
その間にオレは途中だった穴掘りを進めていく。スライムにゴミを食べてもらうという解決策に希望が湧いてきてやる気が増した。
少ししてアクアが穴の近くに戻ってきた。
オーバーオールのような服装と手ぬぐいをほっかむり代わりにしている。
見た目は可愛らしい子なので愛くるしさが増していた。
「ねぇカイト兄ちゃん、まだ掘るのー」
しばらくご機嫌で作業を眺めていたアクアだが、今のところすることがなくて飽きてきたようだ。
気付けば穴は半径5メートル、深さ4メートル程の巨大な穴になっていた。
「ああ、とりあえずこの辺にしておくよ」
穴の中から見上げると、太陽が真上に来てた。
「もう昼か。。。おーいアクアちゃん、お腹すいてないかー?」
「空いたー!」
ピギーと言う声も聞こえてくる。
よし、昼メシにしよう。
穴から這い上がりアクアに聞いてみる。
「アクアちゃんは昼ごはんどうしてるの?」
「いつもお母さんが仕事に行く前にパンを用意してくれてるの!今日も置いてあった」
ふむ、なら誘ってみてもいいかな?
「よかったらアクアちゃんオレの世話になってる家で一緒に昼ごはん食べないかい?」
「えっ!いいの!?行きたーい!」
「ああ、それじゃあ一緒に行こうか」
「うん!」
満面の笑みでルンルンと歩くアクア。
両親が帰ってくるまではずっと一人で食事をとってたんだろうか。
味気ないもんな、、、一人きりの食事は。
あれ?この光景はオレの世界だと小さな子の人さらいに見えなくないか?いや、全然そんなつもりないから!!
なんて事を考えてる内に家に着いた。
いきなり連れてきたけど、レイラさんなら何も言わないはず。。。
ーーーーーーーーーー
「あらあらまあまあ!可愛らしいお客さんね、一緒にお昼ごはんいかが?」
ほらね。
居候の身でなんだが、レイラさんの性格はだいたいつかめてきた気がする。
「は、はじめましてアクアです。お邪魔します」
アクアが緊張気味にモジモジしながら挨拶する。
「まあ!礼儀正しい子ね。ささ、手を洗ってきなさい。カイトさん、連れて行ってあげて」
鼻歌を歌いながらアクアの分の昼食を準備している。スヴェンさんは外で済ませるらしくお弁当を持って行ったらしい。オレはアクアと一緒に手を洗い食卓についた。アクアはテーブルに座り台所のレイラさんを見ている。
「カイト兄ちゃんのお姉ちゃん??」
「いや、オレの同居人のお母さんだよ」
「ふーん、若くてキレイな人。。。」
鼻歌のテンポが上がった。
聞こえてたな。。。
「さぁ!たくさん召し上がれ!お代わりもあるから遠慮しないのよ」
テーブルにステーキ、サラダ、スープ、パンが並ぶ。なんだか盛り付けがいつもより豪華だ。
「うわー、美味しそう!いただきまーす!」
パクパクと食べ始めるアクア。オレも腹が空いていたので負けずに食べ始める。
「ふふふ、小さい頃のリンダを思い出すわぁ。孫ができたらこんな感じなのかしら。。。ふふふふふ」
レイラさんがニヤけ顔でそんな事を呟いたがアクアは食べるのに夢中になっている。オレもとりあえず無視して夢中で料理を食べよう。
「そうだわ。カイトさん、食べ終わってからでいいからリンダに食事を持って行ってもらえないかしら?」
「ええ、かまいませんよ」
「カイト兄ちゃん、リンダって誰ー?」
「ふふふ。アクアちゃん、リンダはあたしの娘でカイトさんのお嫁さんになる人なのよ」
「そーなんだ!?二人は『あいしあってる』のね!?」
ぶふぉっ!!
「あらあらおませさんね〜。そうよ、二人は何度も何度も唇を、、、」
「あーっ!お腹いっぱいになったしリンダに食事持って行きますよーっ!!」
オレは急いで食事の乗ったトレイを持ち階段を駆け上がった。
階段を上る途中、
「あらあらカイトさんたら照れちゃって」
「難しい男心ってやつね」
「あらー、アクアちゃんわかってるじゃなーい」
などと聞こえてきたがとりあえず無視してリンダの部屋に入る。
コンコン、、、
「リンダー、起きてるかー?」
。。。返事がない。寝てるのか?
そ〜っとドアを開けて中を覗くとベッドでリンダがスヤスヤ寝ていた。
うん、今日はちゃんとシーツ被ってるな。
同じ失敗は繰り返さないのだ。
足音を立てないように部屋に入り机の上に静かにトレイを置く。
(よく眠ってるな。。。だいぶ顔色も良くなってる)
寝ているリンダを見つめる。
整った顔立ちだ。テレビに出てもおかしくない美人だと思う。レイラさんも美人だしスヴェンさんも美少年?だし、あの二人の子供だからな。。。
などと考えながらリンダの顔を見ているとドアの向こうに二つの気配を感じた。
「キスしちゃうのかな?ドキドキ……」
「しっ!アクアちゃん静かに!ダメよ、子供が見ちゃ」
レイラさん。。。
アクアちゃんまで、、、
女ってやつは。。。
オレが振り向くとすごい速さで階段を駆け下りていった。足音をたてないあたりが流石元高ランク冒険者。
下に降りると何食わぬ顔でテーブルに座る二人がいた。
「いや、バレてますから。。。」
オレは小声で呟いた。




