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2話 遭遇

ガシ、、、カジ、、、



「、、、ん。。。」


目が覚めると、横転したバスの運転席にいた。

咄嗟にシートベルトを締めたが打ちどころが悪かったのか体のあちこちが痛い。


「つっっ、、、はっ!も、萌山!萌山いるか!?」


慌てて妹の姿を探しバスの中を見回す。

普段見慣れた座席が横に付いているのは違和感でしかない。


オレたちは真ん中くらいの席に居たからそこへ向かう。


「萌山っ!」


倒れている萌山の頭が見えた。

急いで駆け寄り体を起こす。


「大丈夫か!?おいっ、しっかりしろ!!」


「う、、、う、ん。。。」


「出血は、、、ない…」


オレは深い安堵の息をついた。

両親を事故で亡くし、そのうえ妹まで失う訳にはいかない。


「脳震盪か、気を失っているだけみたいだな」



ガシュ、、、グシ、、、



オレはすぐに窓に付いているカーテンをかき集め布団代わりに床に敷いた。床と言っても、バスが横転しているのだから窓になるが。


割れたガラスの破片をよけ、萌山モヤをそっと横に寝かす。


「運転手すら、誰もいなくなるなんて、、、一体何が…」


『昔神隠しがあったって……』


萌山の言葉を思い出す。


「、、、まさかな。神隠しなんて…」


あるわけない、と頭を振る。


「とりあえず、助けを。。。」


携帯を見ると『圏外』の二文字。

ヤバイな。。。


とりあえず現状を把握しようとバスから出ようと思い立った。天井に窓があるので、外はだいぶ日が落ちてきているのがわかった。


座席をよじ登りなんとか窓を開けて外の様子を見る。



カジュ、、、クジュ、、、



「さっきから聞こえるこの音、なんだ?」



目が覚めてから聞こえていた音を不審がり、そぉっと窓から頭を出して外を見回した。

次の瞬間、体が硬直する。


「っ!!?」



『何か』が『何か』を食べていた。



食べている方の『何か』は、緑色の皮膚をしており体にボロ布を巻きつけた小さな人だった。


食べられている『何か』は、見たことのある制服で、足元に帽子が落ちている。そう、あれはバスの運転手の物だ。


「ひっっっ。。。。。」


思わず口を抑え頭を引っ込める。

ガタガタと体の震えが止まらない。


「な、、、なんだあの化物??」


深呼吸をして息を整える。

平常心を保とうとするが上手くいかない。


「ん、、、お、兄ちゃん。。。」


萌山が目を覚ました。


とりあえず大きな音を立てないように萌山に近寄ろうと慌てて重心を移動させた。


ガコンっ!!


「しまっ、、、!!」


体重をかけた拍子に踏ん張っていた座席が崩れ大きな音を立てる。


「お兄ちゃん、大丈夫!?」


状況がわからない萌山はオレを心配し声をあげる。


「し、しーっ!萌山、声を出すな!!」


できるだけ小さく、だが萌山に聞こえるように声を出す。


「えっ、、、でも、これどうなってるの??バス、転落しちゃったの??」


慌てて駆け寄り萌山の口を手で塞ぐ。


「萌山、今は静かに!バスの外に化物がいて、運転手が食われてるんだっ!」


「えっ、、何言って、、、」


オレを見上げ萌山が声を止める。

いや、萌山の目線はオレではなく、オレよりも高い位置を見ている。


「っ!!」


バッと天井の窓を見上げると同時に萌山が叫び声をあげた。


「きゃあああぁぁぁっっっ!!!」


緑色の化物が窓に張り付きこちらを見下ろしていた。口の周りは血で赤く染まっている。


「いやあぁっ!!お兄ちゃん、なにあれっ!?」


完全にパニックになっている萌山を隠すようにオレは化物を見上げる。


次の瞬間、



バリィィンッッッ!!



手にした棍棒を振り下ろし、化物はバスの中に侵入してきた。オレは萌山を隠すように後ろの座席に下がっていく。



「ギャッギャッギャッ」


なんとも耳障りな声を上げ化物はオレたちに近づいてくる。


「く、、、くるんじゃねぇ!」


オレは震える声で精一杯の威嚇をした。


「ゲァッゲァッゲァッ」


化物はそんなオレを嘲笑うかのような声を出し、手にした棍棒を振り上げる。


「っ!!!萌山っ!!!」


オレは萌山に覆いかぶさるように丸まった。



。。。。。


。。。




??


来るはずの棍棒の衝撃がこない。



そ〜っと顔を上げてみると、、、


口を大きく開け喉から刃物の先を出し、絶命した化物の顔が目の前にあった。


「うわっっっ!!!」


「お兄ちゃんっ!!」


オレは再び萌山を守るように体を丸める。


「£¿§‰√※❜∀∂∃?」


男性の声がした。

ただ、何を言っているのかさっぱりわからない。

英語でもなく、聞いたことのない言語だ。


再度そ〜っと頭を上げてみると、鋭い剣を化物に後ろから突き立てた白い鎧を身に纏った金髪の男が剣を引き抜きこちらを見ている。


「。。。中世の、鎧?タイムスリップ???」


「お、、、お兄ちゃん」


完全に頭が追いついていないオレを萌山の声が呼び戻した。


「た、、助けて、、、くれたのか??」


「∈√∑∏∌∉∈∌」


やはり全く言葉がわからない。

だが、優しく微笑んで手を差し伸べてきた。

握手?だよな。。。

恐る恐る手を伸ばすとオレの手を引き立たせてくれた。


「あ、ありがとう」


こちらの言葉も通じないのか、微笑んだまま首を傾げている。だが、若干頭を下げながら言ったオレの動作に何気なく伝わった感触はあった。


金髪男はバスの外に向けて何かを叫び窓の外によじ登った。もう一度、天井から何か喋りながらオレに向けて手を差し伸べてくる。上がって来いと言っているのはなんとなく伝わった。


「萌山、立てるか?どうやらアイツは助けてくれたみたいだ」


「う、、、うん。」


目の前に転がる化物の死体をできるだけ見ないよう、萌山に見せないように萌山を天井に押し上げる。拍子にお尻を触ってしまったが、お互い冗談を言えるような状況ではなかった。


(どうしてこうなった??)


この理不尽な状況を分析しながらオレも天井に登る。


外に出ると、バスの周りには金髪男と同じような鎧を着た六人の集団がいた。全員が馬(なのかわからない五本足の馬)に跨り、バスの上に居るオレたちを見ている。


「∀∂∃√∑∏∉!」


金髪男が何かを叫ぶと、誰も乗っていない馬を一人の集団の一人が連れてきた。

金髪男は飛び降りて馬に乗り、後ろに乗れとジェスチャーをする。


「お兄ちゃん、、、どうする??」


「助けてもらったから、敵では無いだろうけど。。。っ!?」




何気なく空を見回したオレは目を見開いて固まった。




「ど、どうしたの?お兄ちゃん??」


「、、、萌山。とりあえず、あの人たちに付いて行こう」


??

と、不思議そうにオレと同じ方向を見た萌山が同じように目を見開いて驚いた。


「、、、!?お、にいちゃん。。。」


「あぁ、、、ここは、地球じゃない」



見上げた夕焼け空には、月が二つ浮かんでいた。

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