19話 魔素
目が覚めると、窓から青白んだ空が見えた。昨日は疲れていてそのまま眠り込んでしまったらしい。
窓から外を見ると、スヴェンさんが裏庭に立っていた。
「なにしてるんだ?」
裏庭に生えた木を眺めて何もせずに立っている。オレはリンダやレイラさんを起こさないように階段を降りて外へ出た。
「よう、、、目が覚めたか」
スヴェンさんの青い髪が朝日に当たり光っている。リンダの髪はスヴェンさんから受け継いだんだな。
「はい、昨日は午後から休ませてもらいました」
「ふんっ、しょうがない。。。一応、礼は言っておくな、ありがとう」
意外だった。
あの口が悪いお子様の口からありがとうをいわれるだなんて。。。
「いえ、できることをしただけです」
「ふんっ、調子にのるなよ。リンダは渡さないからな!、、、まぁ、昨日よりはマシな顔になってるな」
レイラさんの胸で泣いたことを思い出す。
「はい。。。オレは、オレにできる最善を尽くします」
「それしかねーからな。ま、しゃーなしだがお前に一つ技を教えてやる。オレの剣を持ってこい」
スヴェンさんに言われるまま、リビングに置いてあった片手剣をもってくる。
大きくも長くもないが、使い込まれたズッシリと重みのある剣だ。柄には装飾が施されている。
「いいか?一度しかやらねえから、よく見てろ」
スヴェンさんが生えている木に向かい剣を構える。木との距離は約10メートル。一体何をするのか?と思っているとスヴェンさんの体から魔素を感じた。
「な、なんでスヴェンさんの体から魔素が??それに、薄っすら青白く光ってるようにも見える。。。」
スヴェンさんは片手で剣を上段に構え、振り抜いた。オレは魔素感知を発動しながら集中してスヴェンさんを見つめる。
「うらぁ!」
振り下ろした瞬間、スヴェンさんの剣から太刀筋が光となって放たれる。
ズパンッ!!、、、、、ズズン。。。
生えていた木が一撃で幹を横一閃に両断され倒れた。決して小さくはない、大きい部類に入る木だ。
「ふぅ、、、これがオレの技の一つ【斬牙】だ。体内で練り上げた魔素を一気に放つんだ」
「な、なんでスヴェンさんから魔物の様な魔素が、、、いや、でも魔物とは感じが違う」
「ああん?そんな誰でも知ってる初歩的なこと、、、っと。お前は違う世界の人間だったな。いいか、よく聞け、、、」
スヴェンさんから魔素について教えてもらった。この世界には大気中のあらゆる所に魔素が存在している。場所、人、物、全てのものに魔素は宿っているそうだ。場所によって濃い薄いはあるものの、ダンジョンは最たる例で、魔素溜まりが作る迷宮らしい。モンスターが倒れた時に地面に消えていくのはダンジョンから産まれたモンスターが吸収されているというわけだ。
「つまり極端な話、オレの世界で言うところの『気』みたいなものか。。。」
「『気』?この世界とはまた違うもんがあるんだな。ハッキリ言って、1級クラスになると魔素のコントロールを覚えないと話にならねぇ。2級までなら生まれ持った身体能力やスキルでなんとかなるかもしれんが、そこからは大きな壁がある」
オレは頭が悪いから教えるのは苦手だけどな、と笑いながら教えてくれた。
オレはスヴェンさんの剣と一緒に持ってきた太刀を握りしめ、立っている細い木に向けて構えてみた。
体全体に力を込め、全力で太刀を振るってみる。
ヒュン、、、、
風を切る音が聞こえた。
「あーっはっは!いきなりできるもんじゃ誰も苦労しねぇよ!ま、精々頑張ってみることだ」
むむむ。。。
何か出るかなと思っていたが何も起こらない。これじゃあ小学生の頃にできると信じていた『か○は○は』みたいじゃないか!
「うーん、全然やり方がわからないですね。コツとかないんですか?」
「グッとしてギュッと掴んでブワッて感じで放つんだ」
、、、なるほど、スヴェンさんに教えてもらうのは無理か。
でも、すごい力の在り様を知ったからこれは役立つに違いないな。
「ありがとうございます、あとは何とか自分で掴んでみます」
「おう、それじゃあ今日の訓練はギルドのクエストを受けてもらうか」
「えっ?でも、午後からもギルドのクエスト受けるんじゃ。。。あっ!そういえばオレ、今日は進級試験を受けるんでした」
「随分はえーじゃねぇか。ま、午前中のオレの訓練はそれとは別で考えな。お前には基礎体力がまだ足りてない。それでも、女神の加護があるから人よりはずば抜けてるだろうがな。今日は5級の下水掃除を受けてこい。リンダは数日は休みだ」
「うわ、、、また一段とハードそうな…」
「つべこべ言ってないでサッサとメシ食って行きやがれ!!」
「は、、はいっ!!」
オレは駆け足で家の中に戻っていった。
「ったく。。。成長速度が早いと調子に乗る奴が多いからな、たまには凹ませとかねぇと、、、」
パキッ、、、、、パサ。。。
「あん?」
音がした方をスヴェンが見る。
すると、カイトが力んで素振りを向けた細い木の下に枝が落ちていた。
松葉杖をつきながら近づき枝を拾う。
「、、、この切り口。。。あいつ、本当に一体何者なんだ………」
まるで線を通した様に綺麗な切り口を見てスヴェンは呟いた。




