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18話 レイラさん、、、

しばらく泣いていたオレを、レイラさんは泣き止むまで抱きしめていてくれた。

オレは母親の温もりはほとんど覚えていないが、とても心地よかった。


「、、、すみません。お見苦しいところを。。。」


「いいのよ。泣きたい時は男だって泣いていいんだから。カイトさんは今までそういう機会がなくて溜め込んでたんじゃないかしら?」


言われてみたら、モヤとの生活で辛いことがあってもそんな暇ないと弱音を吐いたことはなかった。


「思い当たるのね。ふふ。たまには胸をかしてあげるわよ、あの人とリンダがヤキモチ妬かない程度にね」


人差し指を口の前に当て、内緒という仕草でウインクする。美人にそんなことされるのは慣れてないんだが。。。


「ああ、でもあんまりカイトさんの弱々しい姿を見過ぎてたらいけない気分になっちゃうわね。結婚してなくて独り身だったら、癒してあげたくなっちゃうわ」


と、悪戯っぽい笑みを浮かべてレイラさんは台所に向かって行った。


「さ、お腹空いたでしょ。大仕事のあとは疲れを癒さなきゃ。すぐにご飯を用意するわね。あと、今日はギルドに行かずにもう休みなさい。いい?これは家族としての命令よ」


まったく。。。

この人には勝てる気がしない。

スヴェンさんもこんな感じで堕とされたんだろうか?


でも、、、家族、か。

いいもんだな。

と思いながらモヤのことを思い浮かべる。


出された食事はとても暖かくて体にしみた。集中していたから気づかなかったがかなり腹が減っていたらしい。

夢中で食べ終えると食後のコーシーをレイラさんが入れてくれた。

レイラさんもオレより少ない量の食事を終え、ひと息つく。


「あの、スヴェンさんは。。。」


「ああ、あの人なら大丈夫よ。怒ったりもしてないから。多分リンダが助かって安心した姿を見せたくないからどこかで気を落ち着けてるわ」


それを聞いて安心した。

娘を守れないような男に怒り狂ってる姿を想像しなかったわけではないから。


「そういえば、あの傷はどうやって処置したの?腕や脚ならともかく、内臓まで達してた傷なのに。。。」


「そ、、、それは。。。」


もしやと思ってはいたが、聞かれてしまった。


「か、回復の泉のすぐ側だったので、、、」


「なるほどね、、、でも、あの泉の水はポーションくらいの効果しかないから内臓まで達した傷を癒す効果はないはずだけど。。。?」


「み、水を飲ませたんです!吐血と傷の場所からみて胃に穴が空いたんだなと思ったから、、、」


「へぇ、すごいじゃないのカイトさん。治療の知識を持っているなんて。それだけでも医者を目指せるわ」


この世界では医療は発展してないのか?と思っていたら、、、


「でも変ねぇ。胃からの出血で吐血してたんなら経験上何かを飲ませるなんて困難でハイポーションやリアポーションを患部に振りかけるしか治療法がないはずだけど。。。」


ドキッ!?


「へぇ〜、リアポーションっていうのはハイポーションよりも上位の回復薬なんですか?」


「ええ、その代わり精製できる職人も少ないから品数は王都以外ほとんどないし、とても高価よ。家が建つくらい」


「へ、へ〜。すごい物があるんですね。い、一度見てみたいですよ」


「ウチに一本あるわ。あとで見せてあげるわね」


あるんだ。。。

流石高ランク冒険者。


「で?どうやって飲ませたの?」


ダ、ダメだ!

逃がしてくれない!?

ニヤニヤしながら質問してくるレイラさん。確信犯か!?

くっ、、、さっき情けない姿を見られたし仕方ない。。。


「あの、、、その、、、無理やり飲ませて、、、」


「ん?どうやって?」


「、、、ちに、含んでから。。。」


「あら、ごめんなさい聞き取れなかったわ。どうやって?」


「く、、、口に含んでからリンダに口移しで!!!」


ニヤケた顔をしていたレイラさんが更にパァッとした笑顔を見せる。


こ、、、この人は。。。


「あらあらあらまあまあまあ!そうね、そうよね!緊急事態ですもの、それしか助ける方法がなかったから仕方ないですわねぇ!?」


ちくしょう、恥ずかしい!

面白がってないか、この人??


「いいのよ、いいのよカイトさん!娘を助けてくれた恩人ですもの!でもまぁこのままいっそ深い仲になってもらえたら、、、!」


「ち、ちょっと落ち着いてくださいレイラさん!確かに、何回もキスしましたけどあれは緊急で。。。」




カタン、、、



「やっぱり、夢じゃなかったのね。。。」




「えっ?」



振りかえると、階段を降りようとする寝間着姿のリンダが居た。


「り、、、リンダ!まだ寝てなきゃダメじゃ。。。」


「え、、あの、、、その、、、、カイトの声が聞こえて目が覚めたら、すごくお腹が空いて、、、傷は少し痛むけど、動けないほどじゃ、、、なかったから。。。」


顔を真っ赤にし、青い髪で隠すように恥ずかしがるリンダ。


「そ、、そうか。よかった!ならこっち来てレイラさんの料理食べなよ!」



「う、、、うん、、、、ごめん!あたし、もう少し休んでから降りてくる!!」



ダダダダ、、、、バタンッ!



「。。。。。」


待って!という感じでリンダの方に手を伸ばすが、顔を両手で隠しながら自分の部屋へと飛び込んでいってしまった。


「よいしょっ、と。それじゃ、あの子の分の食事を用意しなくちゃね。お部屋に持っていってあげようかしら」


後ろでレイラさんの声がした。

振り向かなくてもわかる。

絶対「あらあらあらまあまあまあ!」と叫びたくのを堪えるような満面の笑みを浮かべているであろう。間違いなく!


「、、、オ、オレも部屋で、少し休みますね」


そそくさと階段を音を立てないように登った。自然にスキルの【隠密行動】が発動して結構な早足だが足音を立てなかったことに少し感謝しながら部屋に入る。


階段を上る途中、

「ゆっくり休むのよ〜!ふふふふふふふ、まあまあまあまあ。。。。」

という声が聞こえてきたが今は無視しておこう。


部屋に入り、また整頓されていたベッドに飛び込む。



「はぁ、、、一気に、疲れたぁ。。。」



横になり目を閉じると、強い眠気に襲われそのまま眠ってしまった。

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