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10話 ギルドマスター

白い鎧を着て準備を整えたリンダと共にオレは町へ出た。人混みの中を歩き噴水のある広場に出ると周囲には色々な店がある。武器屋に防具屋、道具屋に服屋、料理屋。見たことのない物が立ち並んでいるので思わずキョロキョロしてしまう。田舎者丸出しだ。


「クスクス、カイトったらそんなにキョロキョロして。迷子になるんじゃないわよ」


子供扱いされた。同い年に。


「見たことない物がいっぱいあるからさ、興味津々なんだよ」


「ギルドに行った後に色々見ていいからね。この通りを真っ直ぐ行ったらギルドよ」


通りを歩いていると周りの人の視線がオレに集まる。そうだよね、みんなと格好が明らかに違うから。黒のシャツに白のインナー、ベージュのパンツにスニーカー。日本では何の変哲もない格好も、町の中ではかなり浮いている。


日本人特有の黒髪も他の人には見当たらない。みんなアニメのキャラクターのようなカラフルな色の髪をしている。


「見えたわ、あそこが冒険者ギルドよ」


リンダが指差す方向に大きな建物が見えた。丈夫そうな石造りでできている門をくぐり中に入ると、酒場のようなテーブルや椅子、奥にはカウンターがあり掲示板のような物の前には冒険者らしき人の姿が集まっていて、なかなか賑わっていた。


「とりあえず、あたしは今回の調査報告に行ってくるからカイトはこの辺で待っててね」


リンダがカウンターに向かい歩いて行った。オレは適当な椅子に座りリンダを待つ。ギルドにいる人々の様子を眺めていた。


「腰に剣を刺した剣士、大剣や斧を背中につけた戦士、盗賊みたいな格好のやつは短剣を持ってる。。。色々なタイプがあるんだな」


物珍しく周りを見ていると、オレの方を見てニヤニヤしている四人組の男たちと目が合った。


奴らはイヤな笑みを浮かべながらオレに近づいてくる。


「よお兄ちゃん。変わった格好してんなぁ、あんたも冒険者か?」


スキンヘッドのリーダーっぽい男が話しかけてきた。


「いや、オレはただの放浪者だ。今日は付き添いでここに来た」


「へへっ、見た感じ武器も持ってねぇし弱そうだもんなぁ。おめぇみたいのがウロウロしてると酒がまずくなっちまわぁ、とっとと失せな」


どこの世も絡んでくるチンピラみたいのは居るんだなとため息混じりに視線を反対方向に向け露骨に相手をしない。


「おぅてめぇ!聞いてんのか!?」


スキンヘッドの隣にいた小柄な男がテーブルをドンと叩き声をあげる。


「うるさいな、聞こえてるよ。連れが戻って来たらすぐ居なくなるからどっか行ってくれ」


メンドくさい奴らだなと思いそっぽ向いて答えるが、やはりというか居なくなってはくれなかった。


「こいつ、、、舐めてますぜサージさん!おい小僧!この人はなぁ、4級モンスターのキラーウルフを一人で倒す人なんだ!てめぇみたいなヒョロヒョロのガキ、ぶっ飛ばされんぞ!?」


「キラーウルフってなんだ?強いのか?

オレにはわからん」


「てめぇっ!!」


スキンヘッドのサージさんとやらの周りの三人が騒ぎ始めた。


絡み方が随分と古臭いな。

昔のヤンキーマンガかこいつら?


「何してんのあんたたちっ!?」


ちょうどそこへリンダが帰って来た。


「ちっ、なんだリンダの連れかよ。よかったなぁ可愛い女の子に守ってもらえて。おいっ、おめぇら行こうぜ」


チンピラ達は何処かへ行った。

助かったぜ、リンダさまさま。


「なんなんだあいつら?」


「悪ガキ連中みたいな奴らよ。新人の冒険者をいびったりしてデカい顔してるの。自分たちより強そうな人には絡まないんだけどね。大丈夫?何もされなかった??」


「ああ、大丈夫だ。リンダが来てくれて助かったよ」


「そう、ならよかった。あのねカイト、受付に調査報告をしたんだけど、事が事だからギルドマスターが直接報告を聞きたいって言ってるらしいの。当事者のカイトにも話しを聞きたいって言ってるらしいから、一緒に来てくれない?」


「なんか大ごとみたいだな。わかった。」


リンダの後をついて受付に声をかける。

受付の奥から秘書のような雰囲気の女性が出て来てオレ達を案内してくれた。


「こちらです」


女性に案内されて奥の部屋に入ると、大きな机の椅子に腰掛けて居る男性がいた。

40代くらいの口ヒゲを生やした炭鉱夫のようなガッチリした身体のタフそうなおっちゃんだった。


「よぉリンダ、久しぶりだな。スヴェンの奴は元気か?」


「はい、アジールさん。父も母も元気です」


「がはは、そいつぁなによりだ!ところで、そいつが金狼と【従魔の契り】を交わしたっていう男か?」


「はい、そうです。カイト、こちらはここのギルドで一番偉いアジールさん。昔お父さんと同期の冒険者だったのよ」


スヴェンさんと同期か。やはり年相応というのはこうでなくては。あの人は異常すぎる、不老不死の薬でも飲んだか??


「一番偉いとかやめてくれ、こないだも仕事がイヤんなってギルド抜け出して酒場で飲んでたらアマンダに見つかって引きずり戻されちまったしな、がははは!」


アマンダというのはさっき案内してくれた秘書さんらしい。たしかに、気の強そうな人だった。鞭とか持ったらサマになり過ぎて怖い感じ。


「それで、カイトとか言ったな?リンダからの報告によると、金狼を従えたとか。本当か?」


陽気な笑いを見せていたアジールが真面目な顔になり聞いてきた。


「はい、、、そう、みたいです」


「みたい、っていうのはどういうことだ?」


オレはこの世界に来てからの経緯をギルドマスターのアジールさんに話した。


話し終わると黙って聞いていたアジールさんが口を開く。


「なるほどな。。。この事を知ってるのは他には?」


「リンダだけです。ジェイルさん達にも話したのですが彼らはもう。。。」


「そうか。カイト、リンダ。お前たちこの事は他言無用だ。余計な騒ぎを起こさないためにも誰にも言っちゃいかん」


「違う世界から来たこと、金狼のこと、不死鳥のこと、ですか?」


「そうだ。俺とカイトとリンダとリンダの両親。これだけだ。恐らく、スヴェンの奴もこういうことになると思って俺のところに寄越したはずだ」


「お父さん、そこまで考えてたのね」


「あいつは昔から口は悪いが優秀だからな。右足を失くして帰って来たと聞いた時には信じられなかったくらいだ。それでカイト、金狼は今どんな感じだ?」


「正直、ウルハ。。。金狼がどういう状態になっているのか全然わかりません。あいつの言われるままにしたら、気づいたらあいつはペンダントになっていて。眠くなったから寝ると言って特に今はなんの動きもないので。。。」


「そうか。カイト、お前さんが金狼と交わした【従魔の契り】っていうのは伝説級以上のモンスターと魂レベルで繋がるという特別なものだ。一般的にモンスターを従わせるには【従魔使役】という強制契約で超級以下のモンスターは捕まえて脅したり屈服させたりして従わせる。人間でいうところの奴隷のようなものだ。知性やエネルギーの高い伝説級の魔物じゃないと対等の関係で結ぶ【従魔の契り】は交わせないからな。金狼は今、お前さんの半身と言える存在になっている」


「そうなんですね。。。」


「お前さんが強くなれば金狼も強くなる。金狼が強くなればお前さんも強くなる。っていうわけだ。しばらくは冒険者として依頼をこなしレベルをあげるといい。もう登録は済ませたのか?」


「いえ、報告が終わってから登録しようとしてたのでまだです」


「そうか。ならレベルを上げて昇級したらまた来るといい。俺もその間に銀狼や不死鳥に関する情報を集めておくとしよう。カイトの妹の情報も入ったらすぐに教えれるようにしよう」


「はい、ありがとうございます」


こうして、ギルドマスターのアジールさんの協力も得られるようになったのだ。


部屋を出たオレたちはギルドの受付に登録に向かった。

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