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1話 プロローグ

ゆっくり書いていきます。

「お兄ちゃーん!早く早くっ!バス出ちゃうよー」


「おぅっ!いま行くっ!!」



プシュー



『○○行き発車いたします』



「もぅ、お兄ちゃんたらトイレ長いんだから!」


「悪い悪い、腹が痛くてさぁ」



オレ、日野立海登ヒノダテカイトは一つ下の妹、萌山モヤの高校卒業旅行を提案し、てっきり彼氏とでも行くのかと思いきや、


「はぁっ?そんなのいないし、お兄ちゃん一緒に行こう!」


という流れでバスに乗っていた。


「ふんふん♪」


「随分とご機嫌だな」


「へへー、だってお兄ちゃんと旅行なんて初めてじゃない?しかも泊りがけ、、、やんもうエッチ!」


「何を言ってるんだか。。。」


妹の萌山は来年からオレと同じ大学に通うことになっている。オレが小3、萌山が小2のときにオレたちの両親は死んだ。旅行好きな夫婦だったが飛行機の墜落事故で逝った。


残されたオレたちは子供の居ない親戚夫婦に引き取られた。

オレは必死に勉強とバイトに青春を費やし、できるだけ世話になってる家の負担にならないようになんとか公立の大学に合格。奨学金で二人とも同じ大学に行けるということでなんとか今後の人生設計に兆しが見えてきた。オレは一年早く大学近くの安アパートにて一人暮らしを始めていたのだが、萌山も一緒に住みたいという強い願望で春から一緒に住み大学へ通うことになっていた。


ワンルームだぞ?狭いぞ?

と、何度も言い聞かせたのだが、

「それでいい、いや、むしろそれがいい!」

の一点張りだ。


親を早くに亡くしたせいか、父親代わりの立場のようで一般的な兄妹よりは仲がいいとは思う。中高とオレは勉強とバイトまみれだったがしょっちゅうくっ付いてきてたし、今でもこうして二人で旅行に来ている。


萌山が知らない内にコッソリバイトした金の使い道を相談してきたときには少し驚いたが、まさかそのお金で一緒に旅行に行くことになるとは思わなかった。


「お前は顔が良いからてっきり彼氏でもいて、その男と旅行にでもと思って旅行を提案したんだぞ?」


そう、妹は高校時代モテていた。

学校で告白されている場面を見たり、靴箱にラブレターが入ってたんだけどどうしよう?なんて相談されたり。オレの学年の奴らもカワイイカワイイ言ってる男連中が居たから、学園青春生活をエンジョイしていると思っていたのだ。


「だ〜か〜ら、そんなのいないってば!それを言うならお兄ちゃんの方がモテてたんだよ?知らないでしょ!?」


むっ、そうなのか?


「むっ、そうなのか??」


「そうだよ〜!ウチのクラスの子なんか「ねぇねぇ、今度お兄さんと遊べない?」なんてしょっちゅう言ってきてたし。まぁ、あたしがそんなの許可するわけないけどね!」


「おいおい、オレが彼女できなかったのって萌山のせいなんじゃ。。。」


「八割八分ね!」


「そんなにかよ。。。」


オレの華やかな青春ライフが。。。

まぁ先の人生設計を普通の生活がしたいオレにとってそんなヒマはないがな。萌山の独り立ちまでは面倒も見なければ。


「って、お兄ちゃんなんて自分から彼女作ろうとしなかったでしょ?覚えてる?あたしの入学式の帰りに校門で先輩からの告白フッたの」


「あぁ、そんなのあったっけな。。。たしか、く、、く、、クドウ先輩??」


「九宝条先輩よ、クホウジョウ」


「覚えてねぇし。。。」


「あんなスッゴい美人なのに!?しかもスッごいお金持ち!今はモデルの仕事してるし、こないだにもCM出てたんだよ!?ってゆーか、なんて言ってフったか覚えてないの!!?」


「んー、、、『ごめんなさい、でも、ありがとう』だっけ??」


「んな模範的回答するわけないじゃない!?『オレ極度のシスコンで妹にしか性的興奮覚えないからスンマセン』よっ!?しんじらんない、あんな大勢の前であんなこと言ってあたしがあの後どんな質問攻めにあったか知らないでしょっ!!?」


そんなこと言ったのかオレ?

なかなか鬼畜だな。


「あーゴメンゴメン。夜勤のバイト明けで眠かったんだよ」


「これだ、、、てゆーか大学入ってもイイ人いないの?」


「んー、特に。ていうより女なんて自分勝手なやつばかりだからな。金はかかるし男の前ではイイ顔して腹ん中で何考えてるかわからんし」


「ふ〜ん。。。どんな人が好みなの?」


「ん〜、一緒に居ても気を張らなくて良い人、かな。萌山みたいに」


「えっ、、、それって、、、、、」



なに顔を赤くしてるんだ妹よ?



「〜〜〜はっ、はやく着かないかな!温泉!!あっ、これから行く山って、昔神隠しがあったって話がある山なんだよ!知ってた?ね、知ってた??」



なに誤魔化してるんだ妹よ?


まぁ実際実の妹に性的興奮するなんてオチはない。

いたってオレはノーマルだ。

ともあれ、家族らしいイベントを行うのは初めてだ。

行き先は飛行機にも乗らないバスで行く温泉旅行だが、オレも楽しみにしている。



「ふふ、そういう都市伝説が好きなんだな。まぁ、温泉なんて就活始まれば行けないし今のうちだけだからな、楽しもう」


「うん!」



満面の笑みで答える妹を見て、親が旅行好きだったのもなんとなくわかるかな、と思ったのだ。




ーーーーーーーーーーー



「ん、、、寝てたか。。。」


いつの間にかオレと萌山は寝ていたらしい。

あの後もひたすら喋りまくっていた萌山もはしゃぎすぎたのか、オレの肩に頭を預け寝息を立てていた。


寝ぼけ眼で窓の外を見ると、土砂降りの山道をバスは走っていた。


「まだ少しかかるか。。。」


もう少し寝ていようと思ったオレは、目を閉じた。


が、視界に入った光景に違和感を感じ再び目を開けあたりを見回す。


「、、、誰も、、、いない?」


オレたち以外の乗客が消えていた。

次の停留所まで停まる場所はない。

満席ではないが、七割ほど席が埋まっていたのをオレは覚えている。


しかし、それよりも異常な状態だったのは、、、



「運転手も、、、いない!?」



バスは運転手不在のまま山道を走っていた。


やばいと思い、隣で寝ていた萌山をまたいで運転席に駆け寄る。

動きで起きたのか、萌山が後ろで声をあげる。



「えっ!お、お兄ちゃんっ!なにこれっ!!」


テンパっているが今は落ち着かせているヒマはない。


「モヤ!座席につかまってろ!!」


バスは坂道を下っている。かなりのスピードが出ているのは運転席に座る前にわかっていた。


急いでブレーキペダルを踏む。


「と、、、とまれっ!!」


目の前にガードレールが迫る。


思い切りハンドルを切るが、、、





ガシャァッ





バスはガードレールを突き抜け、崖を落ちていった。



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