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擬人化!萌え萌え世界大戦!  作者: 惣流・キリコ
5/7

サイドストーリー ロシア編

4日もかかってしまった。

第5話


5月30日 PM 13:21 キーロフスク ロシア陸軍特殊技術科研究所


ロシア軍に同行を求められた須藤とT-72。ある軍事施設に招かれた彼らは緊迫した中、事情徴収をされていた。

「なるほど、重工業会社にエンジニアとして6年勤務。5年前、大規模農業用の農業機械製造にここにやって来たと…。余程優秀な社員のようだな…。で、その重工業で何か兵器を造ってたんだろ?」

強面の左官が私に質問する。

私の勤めてた会社は某重工業会社。確かに兵器は造っていた。

「装甲車を造ってました。これ以上は守秘義務だから言えんよ。」

奴らは俺の経歴を知りたがってるようだ。

「ふぅん。守秘義務なら仕方ないな。」

強面の人が事情徴収するのは結構手荒く強引に聞き求めるかと思いきや温厚だった。人は見かけによらない。

「だが、あの少女はなんなんだ。入国情報によるとお前は一人でここに来たそうだな。」

ついに答えに困る質問が来てしまった。だが須藤は冷静にその質問に答えた。

「それはあなた方が一番よく知っているのではなくて?だから私もあの娘もここへ連れて来たんでしょう?」

「ちっ…。」

舌打ちが聞こえた。流石に素直に答えとけば良かったかなと脳裏に漂った。しかし…。

トントントンッ

ノックがした。ドアの方を見ると、私の自宅の前で話をしたヒゲを生やした上官が現れた。

「ベロワ、ご苦労だった。一度休め。」

「ハッ、大佐。」

すると強面の左官が部屋から退室した。今度はこの人が私の相手をするのか。

「急に同行を求めてご無礼を、挨拶が遅れてすまない。私はここの研究チームを率いてるバレット大佐だ。」

と手を差し出した。


本名:バレット・ヤコフ

ロシア陸軍 階級は大佐 56歳 特殊技術科研究 研究者でありここの所長でもある。


「私は須藤 礼二です。」

須藤は自然と立ちバレット大佐の手を握り握手した。その後2人は席に座る。するとバレット大佐が話を切り出した。

「単刀直入に言おう。私は軍人でありここの所長だ。私たちはタンクガール(戦車娘)の放つ特殊な波動で彼女の存在を知り追ってきた訳だが、そこにあなたがいた。どうやって彼女をこの世界に宿したかを教えてくれないか?」

所長、しかも大佐が率直に話を切り出すとは須藤は彼を疑う…。何か裏があるのではないかと思うが…。

「貴官の様な方から率直に話が上がるのは大変嬉しい事ですが…、この事を彼女無しに喋って良いのかと…。」

かしこまった態度で答える須藤。するとバレット大佐が…。

「そう答えると思っていたよ。これなら…どうかね?入りたまえ。」

「はい!マスター!」

ハキハキとした声にびっくりする。ドアから1人の幼い少女が現れた。見た目は15歳くらいだろうか。

!!?

須藤は目を疑った。そこには朝見たT-72の換装姿をまとったように、戦車の武装を持った少女が現れた。

「この砲塔、125mm砲…T-64じゃないですか!!」

武装を一目見ただけで車種が分かった事にバレット大佐は一瞬固まる。数秒のラグはあったが話を続ける。

「よく知っているな…。話を続けよう。聞き苦しい話になるが、私には娘がいてな。その娘が幼くして病気で亡くなって、それを知った後に誰も居ない倉庫の中で泣いていたら、戦車が人になってな。私じゃ代わりに慣れないかも知れないけど…、私が…」

「マスター!!恥ずかしいからその話はダメ!!」

幼い口調でT-64が喋る。こうしてみるとまるで親子の様だ。

「すまないすまない。ま、私がメソメソしてたら戦車が娘として現れた訳なんだが。いやいや、湿っぽい話ですまんな。」

いえいえ、とんでもない。と少し頭を下げる須藤。こちらも話さなければと思ってしまった。

「実はですね………。」




同日 PM 13:21 同研究所内


「で、キミは彼とはどういう接点なの?」

女性左官が徴収をしている。だがT-72は気にくわない反応をする。

「それ、貴女に話さなければいけないのですか?」

「ええ必要よ。キミの戦闘能力やどうしてこの姿になったのか。色々と聞きたいの。」

「案外喋るものなんですね。こういう時、自分たちの目的は話さないと思うんだけど。」

「それも言えるけど、いずれ貴女には協力してほしいの。軍として。」

その言葉を聞いた時、T-72の雰囲気が変わる。

「またそうなるのね…。お前らはまたこんな事をするのか…。」

「こんな事??」

女性左官が彼女に振り向く。するとT-72は凄い剣幕で女性左官に向かい喋った。

「大切な人の命を奪い!私の事を兵器としか見ないのか!!」

目は涙ぐみ、服にシワができるくらいに握りしめている。

「兵器として見なかった…。貴女、一度人になっていた事があるのね。でも、いずれは協力してもらう事になるわ。尋問の手はいくらでもある。」

T-72の喉が詰まる。彼女の脳裏には須藤の姿が浮かぶ。彼のことを考えるだけで何故か身体中が震える。

震える姿を見てか左官の唇が頬に釣り上がる。

「あの男も喋らなければいずれ尋問をするわ。貴女が協力するならあの男も一緒に、その後も保障するわよ。貴女はあいつの何だというの?」

次第に怒りが込み上げる。抑えなければ…。でも私にはこの気持ちを抑えれなかった。




「ふむ…そういうことか…。だが、エンジニアでそれは大変だったなぁ。日本人の趣味には恐れ入る。」

バレット大佐が笑いながら話をする。そこには須藤の顔には笑みがあった。何やら意気投合したようだ。

「えぇ、自分でもまさかあそこまで走るとは思いませんでした。もし他の人に見られてたら…。」


ズンッ……。


何か響いた。それと同時に揺れが伝わる。何かが爆発したような音だった。

「地震…??にしては響きすぎのような…。」

ピピピピっ…。バレット大佐からアラーム音がする。何か用事なのだろうか。急いで懐から無線機器を取り出す。

「私だ…。……………なに!?」

大佐が焦ったような声で喋る。その返事を聞き、嫌な予感が走る。

「先ほどC棟で徴収をしていた例の人が扉を砲で破壊して脱走!見張りを蹴散らして…。」

「何!?早く抑えないか!!」

「無理です。移動スピードが速く…たった今大佐が居るA棟に…。」

その時だった。壁の区画が爆発と同時に弾け飛び、人が数人通れるほどの穴が開く。その衝撃で弾き飛ばされる。部屋にいた3人は咳をする。そしてその穴の向こうには砲、装甲を装備したT-72の姿があった。

「同志!急いでここから出ましょう!」

部屋の中へ入り須藤の腕を掴む。

いきなりの出来事で物事の整理がつかない。彼女の身に一体何があったのか?だが考える暇は無かった。

「須藤君。私たちの契約を破棄する行為になるが?」

大佐とその兵がが出入り口を塞ぐ。もちろんT-72が砲で開けた所もだ。

「私にはこういった状況を把握できる身はありません。しかし、こうしてしまった以上はこうするしかないと思います。」

銃を持った兵士に囲まれる中でここまで喋れるとは思わなかった。今ここで撃たれて死ぬかもしれないのに。須藤の脚が震えていた。

「肝が座っているな。君たちとは話が合うと思っていたが…。こうするしかないのか…。」

と同時に腰に付けている銃を取り出し向ける。するとT-72なら白い煙が上がる。故障??いや、煙幕だった。様々なパーツで復元した物の中に消耗品も少なからず入っていた。

「今よ!!」

T-72の掛け声と同時に出入り口に構えていた兵士を蹴り飛ばす。左から右へ流した回し蹴りが1人の兵士を壁へキスさせ、もう1人の兵士が溝に蹴りが入りその流れにならって横にいた兵士にぶつかる。これで退路ができた。

するとT-72が須藤の腕を強引に引っ張り部屋から脱出した。

煙幕が晴れるとそこには数名倒れてる兵士しか居なかった。

「彼はこんな事をする筈では無かった…。話の中ではそんな風には見えなかったのだが…。」

大佐がふと思い出し、無線をかける。

「おい、少女の徴収は誰が行っていたか?」

「は、プリダニャ・ピニャコフ大尉でありますが…。」

「あのバカ…。またやりおって…。奴は今何している?」

「部屋の中で失禁して失神してました。先ほど医務室に運ばれましたが…。」

「分かった…。様態が安定したら私のところに来いと伝えろ。」

「はっ。」

はぁぁぁぁぁ…とデカいため息をしながら椅子にもたれる大佐。大佐はこの話を聞いてT-72の身に何が起きたか大凡の事を察した。



施設の廊下を走る2人。すると手前70mから兵士が現れる。

止まれ!!と荒い声で銃を向けて警告する。

「止まれって言われて止まるバカがいる!?」

T-72が右手に装備している主砲にPKT機関銃。副武装で前にいる兵士に威嚇射撃する。

機銃まであるのかよという顔をしその場で伏せる。引いた隙に猛ダッシュをしその場を逃げる。



同日 PM 13:48 施設外駐留場


ようやく施設から出た。なにか逃げれるものは無いか。後々追いつかれる。当たりを見渡すとジープが数台あった。

あれに乗ろうと須藤は指をさし走る。それについて行くT-72。ジープに乗ったは良いもの鍵が無い。逃げる事に無我夢中でそんな事思いつきもしなかった。

「キー!?キーは!?」

須藤が焦る。するとT-72がキーの差し込み口を手で突き刺し表部を突き配線を剥き出す。

((うわぁ、やる事が派手だねぇ…。))

どっかで見た事がある。そうだ…。ター◯ネー◯ーで確か……。なんて事はどうでも良い。剥き出した配線をT-72が差し出す。お前がエンジンをかけろと言いたいのか。渡すとジープの後部に移動し主砲を構え迎える。

10秒かかってエンジンをかけた。これで逃げれる。と思った瞬間。


カンッ!コンッ!


何かがジープに当たった。その後に


ドゥン!


と発砲音が2回した。狙撃!?スナイパーライフルにしては音が鈍い。今乗っているジープに異常がないか周りを見る。よかった…。異常は無い。

「このまま突っ切るぞ!しっかり捕まれ!」

掛け声をする。だがT-72の返事が無い。ジープの後部を見るとT-72が膝をついている姿が目に入った。

「おい!今ので被弾したのか!?返事をしろ!」

須藤の叫び声が響く。そんな、あと少しなのに…。お前が居ないと脱出できないじゃねぇか…!もう出口は目の前なのに…!

「うるさいわねぇ!聞こえてるわよ!ただ痛んだだけよ!今に見てなさい!装填完了!」

先ほど撃たれた弾は対戦車ライフル。戦車娘の装甲は見た目以上に強固。関節部に着いている装甲板は元より、晒しになっている肌でも元の姿だった時の戦車の防御力並だという。

胸部、左脚に1発ずつ攻撃を受けたが痛みだけ。支障は何も無かった。

「なんてヤツだ!対戦車ライフルを受け付けないだと!?」

「archer2、次はジープを狙え。脚を奪う。」

「了解…うわぁっ!!」

無線が切れると同時に施設屋上で爆発音がした。ターゲットを見ると主砲がarcher2の方へ向けられていた。

「ヤられたのか…!?チクショオオメェェェ!!」

咆哮を上げながらライフルを撃ち込む。乱れた集中力のせいか弾は見事に外れる。なんというガバAIM。


「よし!当たった!」

喜ぶT-72だが須藤の顔が青ざめる。

「まさか直撃させたんじゃないよな…。」

「そんなわけ、ちゃんと外してるわよ。」

((なら良いが…。兵士さんごめんよ…。))

心の中でお祈りする須藤。だが直ぐに開き直る。

「おし、営門を吹っ飛ばせ!」

「了解!装填!」

「アクセル全開!!」

アクセルを思いっきり踏む!!と思ったが異様にエンジンが回る。まさかさっきのでどっか被弾したんじゃ…。

「ちょっと!!ギアチェンしなさいよ!!車の運転もできないわけ!?」

「うるさい!忘れてただけだ!!」

とギアを入れて立て直す。まさかこんなことで指摘されるとは…。それと同時に改めてT-72が主砲を営門に向ける。引き金を引くと主砲弾が発射。営門を破壊した。

「いやっほぉぉぉぉい!!」

ジープで施設から脱出し2人は逃げていった。




「archer2の生存を確認…、伸びてやがる…、心配かけさせやがって…。このっ!」

とarcher1が1発蹴りを入れる。どうやらT-72はしっかりと外して攻撃していたようだ。屋上にいる彼の真下1階層の所を撃ち抜いたらしく、その衝撃で伸びているだけだった。



同日 PM 17:04 須藤邸

須藤たちは自分の自宅前についた。道中迷いながらもようやく辿り着き一安心する。だがあの施設で起こった出来事。何故T-72がこうも抜け出そうと言ったのが理解出来なかった。

「なんでお前、逃げたすなんて言ったんだ?なんか酷いことでもされたのか?」

それを聞いてT-72は悄気る。

「実は…。私が生産されて人の姿になって生まれた頃、パートナーだった人がいたの。大切にされてきたけど、それが軍の上層部が恐れて彼を殺したの。パートナーが居なくなると私は元の姿になっちゃうの。だから、元の姿に戻っちゃって他の戦車と一緒に廃棄されてたの。大切な人の命を奪う軍隊なんか大っ嫌いだった…。それで、向こうで軍と協力しろって言われて…、断れば命はないって…。」

「私の命を守るためにか?」

涙を溜めながらうんとうなずくT-72。須藤は彼女を抱きしめながら言った。

「こんなバカの為に本気になってくれてありがとう。ただ、彼等の意見も尊重してくれ。」

「そんな…。同志はヤツらの味方をするのか??」

ぐずりながらも喋るT-72。

「だが、私が所長と話をした所だと悪い話じゃないぞ。むしろ良い話だ。」

すると後ろから黒塗りの高級車がやってきた。車から降りてきた人はあの研究所所長バレット大佐と、徴収を行っていた女性 プリダニャ大尉だった。

「私の部下がとんだ粗相をして、誠にすまない。」

と2人は頭を下げる。

「いえ、こちらも誤解をしていた様なので。とんでもありません。」

と須藤も頭を下げる。

「軍との協力なら私はお断りよ。」

「待てよ。俺がなんとかする。」

須藤は何か案があるらしい。

「軍と協力を受けます。ただし条件を飲んで頂きたい。」

「1:あなた方の言う国、軍からの依頼はこちらが内容を審議して受理します。」

「2:彼女のパーツやモジュール、メンテナンスなど行う人材、資源の確保。」

「3:退職に伴う私の軍属になる立場と身、彼女との今後の安全の確保。」

「で、どうでしょうか??」

この内容にT-72は不満らしく更に付け足した。

「追加!!同志須藤の身に危険が及ぶ何かしらの行動が見えたら軍を抜ける!!で、良いわよね?」

T-72!?須藤は彼女の方へと振り向く。それに気づいたのか照れて目を逸らす。

「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」

須藤が手を差し出す。バレット大佐も手を出し須藤の手を握り強い握手をする。




こうして一連の騒動は収まり、須藤は会社を退職。正式にロシア国籍を取りロシア陸軍へ転職。特殊技術科研究所へ。T-72も、須藤と一緒に研究所で戦車娘として過ごすのである。

ロシア編はこれで終わり。

次回は日本へ戻ります。

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