会食
今回セリフが多いです。
第3話
6月7日 AM 6:00 豊川市 某喫茶店
(珈琲飲むって…外でかよ…)
日下部は思った。こんな大事な話、もしかしたらレベルの高い秘密かもしれないのに…
「あの…どうして喫茶店なんですか…??」
「いやぁ、ここの珈琲がとても美味しくて、豊川へ来るたびに1度は来るんでな。それに、ここの店はほとんど自衛隊員しか来ない所でな。安心せい。」
三佐が喋る。はぁ…と少々喉が詰まるような返事で応える。
「御注文は何にしますか?」
「珈琲5つ。以上で。」
かしこまりました。と注文を伺った店員は頭を下げると下がっていった。
「で、早速聞きたいのですが、どうして私の74式戦車が、女の子になったのですか??」
誰もが一番聞きたかった事を聞きたい日下部だった。実際ではこんな事はありえないのだから。
「私も61式の話から聞いたんだが…彼女らには、兵器としての聖霊があるらしくての。」
「聖霊…?」
日下部、坂口が首をかしげる。
「軍神という神が存在して、その神が聖霊を生み出すそうだ。」
「それが、兵器を女の子にするんですか??」
坂口ががっついてくる。
「実際そうだが、それだけでは人間の身体を身にまとえない。兵器を大切にする。兵器を信頼し戦場に身を投じるその精神。そして何よりも大事なのが、その兵器に選ばれる事。この3つの中からだ。」
「じゃあ、日下部の言ったあの言葉と、彼女がそれに惚れた?から74式が人の姿になったと言うのか。」
すると74式が喋る。
「そうよ!裕二は私に乗っている時いつも、優しく扱ってくれたのよ♡そこに惚れたの♡」
日下部が咽せる。私に乗ってるって…もうちょっと言葉を選べよ…。
「そして、昨日の夜、誓いの言葉を述べたの♡」
とてもウキウキだ。本当にこれが戦車なのだろうか…。
「誓いの言葉…では、日下部君は彼女に対して言葉を述べたと?」
「偶発的になりますが、そうですね…」
「はっはっはっ!だが、これも2人の縁だ。彼女を大切にしなさい。」
日下部は照れながらも頭を下げた。こんなにも私に溺愛?する女性だが、普通に可愛い。これから一緒に過ごすのかと思うと…いや、これ以上考えるのはやめておこう。
坂口が深刻そうな顔で話を切り出した。
「さっき61式殿が装備を出してましたが、やはり戦闘するのでしょうか?」
確かにそうだ。元は戦車、戦うのが目的だ。やはり攻撃を受ければダメージを受けたり、血が流れたりするのだろうか…。日下部の脳裏にそれが浮かんだ。
「戦闘はする。だが安心しろ。死にはしない。腕とかも吹っ飛んだりはしないが、それ相応の痛みは感じるらしいがな。交戦規定とすれば領土の所有権とかだな。」
やはり領土所有権を争って戦う。よくあることだ。
「三佐殿と61式殿は、何か戦闘をしたのですか?」
坂口が聞く。それに三佐が応える。
「沖縄返還を知っているね?あれを決めたのは、実は擬人化戦車での戦闘なんだ。」
!?
3人は目を見開いた。あの沖縄返還を成功させた大元が、擬人化戦車の戦闘だなんて。その後、静寂が続く。
「まあ昔のことだ。そこまで気にしないでくれ。私たちも苦労したが、今はこうして一緒にいる。安心してくれ。」
「珈琲をお持ちしました」
そうこうしている内に先ほど注文した珈琲が来たようだ。行き詰まった空気に水がさした。タイミングが良い。では、美味しい珈琲を一杯っと…。
「………………あの、珈琲だけを頼んだんですが。」
三佐が頼んだ珈琲には、サラダ、ゆで卵、トーストが付いていた。
「知らんのか?珈琲といえばこれだろう?」
おそらく彼が頼んだのは「モーニング」という東海地方、朝限定の食べ物。珈琲=珈琲、サラダ、ゆで卵、トーストが付くらしい。店それぞれで一部品が違うが、筆者の近くのお店はこれらしい。
日下部、坂口は他県出身なのでこのようなモノは初めてだった。
「頂きます」
5人が手を合わせた時だった。何か違和感に気付いた。
「おい待て!お前普通に飯を食うのかよ!?」
「何言うのよ。私だって人間よ??」
人間よって…あんた昨日まで戦車だったろ…。すると坂口がトーストを頬張りながら喋る。上官が前に居るというのに…。
「オイルや鋼材、弾薬を食べないのか?」
どこの某ゲームなんだ…。これ以上言うと危ないから止めておく。すると61式が口を開いた。
「私たちはあなた方と同じように食事をとって補給します。武装の方は資材を必要としますが。」
と、冷静な口調で話した。
改めて擬人化戦車の特徴を知ることができた。その後、5人は話し合いながら朝食を済ませた。
「ありがとうございました。こんな美味しいものが食べれるなんて。お金なら私が払いますのに。」
「何、こうして何かと困ってる人がいたんだ。助けるのは当然だ。それと、この娘たちのことも色々聞けただろう。」
「はい、本当にありがとうございました。」
「では行こうか。61式。」
「はい、三佐。」
と言うと2人はその場を後にした。
「さ、俺らも宿舎へ戻るか。装備のメンテも必要らしいしな。整備員は大変だぜ。」
「そうだな、じゃ、戻ろっか。」
「あなたが私の装備を見るの?変なことしないでよね?」
「するわけないじゃないですか!戦車長の妻ですよ!」
「キャハ!妻だって!あたし達やっぱりお似合いなんだわ!」
「馬鹿っ!坂口!余計なことを!!」
ボケなのか本気なのか分からないことを言うから、74式が日下部に抱きついた。
「でもお二人ともお似合いですよ?」
笑いながら茶化す坂口。
「おいこらぁ!待て坂口ぃ!」
こうして、日下部、坂口、74式はお互いに過ごすのである……。
次回はサブストーリーを挟みます。
ロシア編です。ロシアは偉大だ(いろんな意味で)
ではまた次回で……………