仲間 -1-
ここから少しずつ、戦車娘の事が分かってきます。
「信じる…思い…!?まさか…俺の言った言葉か!?」
「そう、お前みたいにどんな時でも互いに信頼出来て、長年一緒に居てくれる存在だったら、俺は嬉しいって。それに応える為に私は生まれたの。」
その言葉を彼の横で聞いていた坂口は日下部に耳打ちし喋った。
「その言葉、俺もしっかり聞いたぞ。これはどうやら本物らしいな…」
それに対して日下部も耳打ちした
「じゃあなんで戦車が女子になるんだよ。その理由が分からないと俺は納得できんぞ…信じる思いで人になるなんて…」
2人で話をしていたら騒がしかった人だかりが静寂し、列をなした。後ろを向くと我が部隊の上官。平田 康介三佐であった。三佐の横には女性士官をもいた。
平田三佐が彼女の方へ近づく。すると三佐が喋った。
「懐かしいな、今度は74式戦車が人に身をまとったか」
そのセリフに一同は声を揃えて「ゑっ!?」と声を上げた。坂口が三佐に問いかける。
「三佐殿、もしや貴官殿もこのような事を経験したのでしょうか!?」
真面目な顔をしながら問う坂口を見て三佐は高笑いした。
「はっはっはっはっは!そう固くなるな。ま、簡単に言えばそうだな。どれ、紹介しよう。」
と言って紹介したのは先ほど彼の隣にいた女性士官だった。
「私、平田三佐の務めを補佐します。61式戦車です。前までは換装姿で現役で活躍してましたが、退役してからは装備を外し平田三佐と共に過ごしています。」
「61式お姉様!!」
74式が声を上げる。
「あら、久しぶり。でも、初めて人の姿で会うのだから、初めましてかしら?」
「もう、お姉様ったら。固くならなくていいのに。」
彼女たち2人で会話が弾んでいる。初めて会うはずなのに。
それを疑問に思い坂口は問いかけた。
「私たちはあなた方で言うテレパシーのようなもので繋がってるの。人に変わる前は、テレパシーで会話してたの。」
どうやら彼女たちは常時テレパシーのようなもので繋がっているようだ。
坂口は61式の身体をあちらこちらと見つめて喋った。
「その…装備は今その場で出せるんですか??」
やけに興味津々だ…。わかる気もするが。
「よろしいですか?三佐?」
と61式が三佐に許可を受ける。
「良かろう。皆に見せてやりなさい。」
「承知しました。」
61式が腕を上げスカートの上を払うように振った。すると、腕には引き金の付いた砲塔が現れた。61式戦車の特徴のあるお椀形状の傾斜砲塔。そしてマズルブレーキの砲身のライフル砲。そして各関節部分には保護的役割の装甲が現れ装着されていく。
換装をする姿を目の前で見て彼らはまるで、セー◯ー◯ーンの変身シーンを見ているようだった。これを読んでいる読者の皆様も思うだろう。
「如何でしょうか?」
「決まっておったぞ。まだ衰えていないようだな。」
「そんな…恥ずかしいです…。」
61式の顔が火照るように赤くなる。
「ま、換装を解きなさい。」
彼女が目をつむり、背伸びをすると身にまとっていた装備は解かれた。
61式が少し照れている。彼女らに感情などはあるようだ。
「まあ茶番はこれくらいにして、で、お嬢ちゃんのパートナーは誰かな?」
三佐が74式に聞く。
「私の夫、日下部 裕二!」
日下部の腕を強引に腕を組みくっつく。
「待て!俺は夫じゃ…」
と、照れながらも少し嫌そうな顔をする。勝手にこんなこと決められたら嫌になるだろう。だが彼女はウキウキだ。
「貴方が彼女のパートナーですか。ここで立ちながらではなんだ。場所を変えて珈琲を飲みながらでも話をしては。」
「はっ。」
日下部が返事をすると平田三佐、61式はその場を後にした。それに続き日下部と74式もその場を後にした。
「お、おい!俺を置いていくなよぉ!!」
坂口の存在を忘れていた。彼も日下部の後について行った。
次回は戦車娘の身体の宿る事などを。
今後、74式戦車は74式や74(ななよん)、61式戦車は61式や61(ろくいち)と省略してきます。いずれはあだ名のようなモノを考えようかと思います。
ではまた次回………