出会い
ども、恐縮です。惣流・キリコです。戦車を擬人化した作品なので多少良否の程はあると思います。読者方のイメージする戦車と違うかもしれませ。そこはご了承ください。
執筆は初心者なので目をつむっていただければ幸いです。
それでは始まります。
擬人化。動物、食べ物、自然環境…身近なモノが人へと擬態する現象。これを読んでいるみんなの世界では決してあり得ない現象である…………が。
2016年 6月6日 PM8:12 豊川駐屯地臨時駐留場 晴れ
「あぁぁぁ…今回もやっぱりダメだったよ…」
74式戦車に乗るある男が口をこぼした。
彼の名は日下部裕二。1988年生まれ、28歳 陸上自衛隊第10師団隷下 第10戦車大隊所属 階級は陸曹 74式戦車の車長である。
「え!?ふられた!?」
そう返答したのは同じく陸上自衛隊第10師団隷下 整備兵の坂口啓 27歳 年は1年違うが同期生である。
「だって、彼女に自分が戦車に乗ってるカッコいいところ見せたいだろ?俺のその写真を見せたら、自衛隊の人とは付き合えないって言うんだよ」
どうやら彼の彼女の話だろうか。良い話ではないようだ。
「仕方ないですよ。いずれは僕たち死ぬかも知れないですからね。そんな人とは付き合えないんじゃないんですか?」
「馬鹿言え、死ぬかなんて早いか遅いかだ。なんでそれを分かってくれないのかなぁ…」
「仕方ないですよ。相手も、人間ですからね。」
「…………………………」
どうやら彼は今回も彼女に振られたそうだ。これで3回目のことらしい。
「ま、理由も何も、人の価値観です。いずれは理解してくれる人に出会うと思いますよ。」
「もしお前みたいにどんな時でも互いに信頼出来て、長年一緒に居てくれる存在だったら、俺は嬉しいんだけどなぁ」
と反ば笑いながら74式戦車向かって言った。
「戦車にそれを言います?」
人をちょっと馬鹿にするような口調でで坂口は言った。
「なんだよ、悪いか?俺が今信頼できるのはコイツ(74式)だけだ。俺らと兵器だって、扱う人、扱われる兵器とて信頼持てなきゃ使えねぇだろ?」
「彼女と兵器じゃ違いますからw」
「何をこいつ!!」
「うわ!曹長!勘弁!!」
日下部は坂口を追っかけながらその場を後にした。
6月7日 AM 4:52 豊川駐屯地 宿舎 F2 203号室
大勢の隊員がドタバタと廊下を駆ける音に目覚めた日下部と坂口。それと同時に同僚の隊員が部屋に数名押し入って来た。
「日下部!お前の74式が無くなったぞ!!それと…女性が…そこに座っているんだ…」
ありえない内容が彼の耳に入った時、飛び上がるように起きた。
「おい何言ってやがる、そんなことあるわけ無いだろ。」
「本当だ!!とりあえず臨時駐留場へ行け!!」
部屋に押し入った隊員の凄い剣幕に圧倒されてか、2人は急ぎ着替えて部屋を後にした。
臨時駐留場へたどり着いた。そこには隊員の人だかりが出来ていて奥の様子がわからなかった。
周りの隊員をかき分けて見に行くと、昨晩まであったはずの74式が無い。その代りにその場には1人の女性が地面に直に座っていた。彼女の様子を見ると、どうやら寝ているようだ。
日下部はその女性の姿を見た。女性士官の服を着ていてその周りには大きなパーツがくっついていた。
(丸みをまとった砲塔、そしてその脇には投光器。間違いなく74式戦車の一部だ。だがどうして…)
そんなことを考えていると女性があくびをして腕を上げた。
「ふあぁぁぁぁぁ…んっ…ぁ…」
どうやら目を覚ましたようだ。
突然のあくびの声に驚いた日下部は後ろに倒れて尻餅をついた。それと同時に周りを囲っていた隊員たちも後ろに下がる。
完全に目を覚ました彼女に「あっ…あの〜…どちら様でしょうか…??」尻餅をつきながら日下部が問いかけた。
彼女はそれに答えるな否やいきなり日下部の元へ飛びついてきた。
「ゆうじぃぃぃ〜!!」
大きな声で彼女はそう叫ぶと周りの隊員は激怒した。
「お前最近振られたのにすぐ女つくりやがって!」
「ふざけんな!このたらし!」
今起こっている出来事とは大幅に路線が外れてる。戦車が消えたというのに。すると彼女は叫んだ。
「あなた達!裕二を馬鹿にすると許さないんだから!裕二は生涯私と共に一緒に居ようって誓ってくれたんだから!」
全く訳が分からない。勝手に話が進んでいく。だがまず、彼女が何者かを聞かなければこの馬鹿げた事態が収まる訳がない。
「……お前は何者なんだ??」
未知との遭遇のように少し怯えながら聞いた。
「私??名前は74式戦車。貴方の信じる思いで、私はこうして生まれたの。」
これがふざけたような本当の真実。日下部と彼女 74式戦車の出会いである。
読んで頂きありがとうございます。いかがでしたか?少しでも楽しめましたか?不定期にはなりますが、少しでも更新していけたらと思っています。
では、また次の回で…