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四面祖華

この世界には楚がそもそも存在していないのでこの字にしました(棒読み)

「そんな……ダアトちゃんまで……」

 瀕死の状態で倒れたダアトちゃんを介抱しながら相手を見た……ある意味では禁遊屍人デッドマン以上に恐ろしい敵といっても過言ではないその相手を……

「次の相手は誰じゃ?」

 膝ほどもある長い黒髪を腰の辺りで一纏まりに束ねた幼女は、家畜を見下すような冷たい目で言った。

 ユヅキちゃんやエキドナさん、アリスちゃんもイアリちゃんも真理ちゃんも力尽き倒れ、もはや戦えるのはミラさんに魔女先輩……それに、シーホースさんしか残っていない。しかもその3人でさえ……かろうじて意識をたもっている状況だった。

 ……この人には絶対に勝てない。そんな絶望が僕達4人に広まった。

 そうする間にも、あの人は……ティエラちゃんは口を開き、死の呪文を唱えた。どのような即死呪文よりもはるかに威力のある、指摘の言葉という呪文を……

「ダルク殿、精一杯のおめかしをして来たようじゃが……そろそろ歳を考えてはどうかの? 確かおぬしは」

「や……やめなさい。やめてください。確かに人間換算でもう2、30回くらい世代交代してる程には生きてるけれど、流石にお洒落を自粛するほどじゃな」

「それに……ユートとの歳の差はいくつじゃ?」

「ぐふっ……」

「吐血した!?」

 僕の親戚を名乗るティエラという少女は僕に好意を持っている女の子を母さんから聞き、僕に相応しい相手なのかを判断するために全員を呼んだのだが……

 まあ結果はやりすぎている。完全にやりすぎている。「こんなの圧迫面接ですらない」と抗議をしても無視された。

「さてと……次はどちらを餌食にしようかの~」

「う……私が……私が行きますっ!」

 覚悟を決めたシーホースさんが、ミラさんを庇うようにして両腕を広げ、立ちはだかるようにうごいた。

「ほう、人魚娘が前に出たか……その勇気だけは認めよう。じゃがまず……成長しておる割には蛇娘もそうじゃが胸が貧相じゃのう」

「最初からクライマックスです!」

「へ……蛇種には貧乳が多いんですの!」

「二方よ、その調子ではま……ユートを満足させることなど、夢のまた夢ぞ」

「「くっ……」」

 2人とも、胸を押さえて膝を……膝をついた。2人とも厳密には脚がないので不適切かもしれないが、とにかく膝をついたと言っておく。こういうのは言った者勝ちなのだ。

「ほれほれ、おぬしら、もう降参かえ? わらわはまだまだ言いたいことが山ほどあるぞ? ……これで降参というのなら……ぬしらにユートの嫁になる権利はないということに」

「なんで……勘違いしていますの……!」

「まだまだ……ハニーのお嫁さんになる為なら……この程度、蜜蜂にさされた位ですわ……!」

「まぁ……ボクも……お嫁さんになりたいっていうワケじゃないけどさぁ……言われっぱなしはちょっと癪に障るんだよねぇ……!」

「私も……あの程度の罵倒になんて、芸能界の荒波に揉まれて……とっくに慣れっこですよ」

「…………アタシの心に……久しぶりに心からの怒りを呼び覚ましてくれて……感謝するわ、ティエラ。だから……今度はこっちのターンよ」

「あの程度の罵倒……ちょっと寝てスッキリすればすっかり忘れられる……鉄の強さも鋼の意志も感じない、所詮は凡百の罵倒だったわ。だからティエラ……ここからはこの私、古き神ダアトのターンよ!」

「グフッ……しょ、所詮は、事実を淡々とならべたてられただけ……このミロン・エキドナ、心の強さはそこそこ強いのよ……!」

「あなたが誰なのかは知らない。でも……ただの親戚ごときにユヅキちゃんとお兄ちゃんの仲を邪魔されたくない……」


「……まだアリスはいける……お兄ちゃんの為なら、アリス……例えママに逆らうことになっても頑張れる……!」

 ティエラちゃんの罵倒によって倒れた全員が起き上がり、仲間になど絶対にならないと言わんばかりの、殺意に近い感情を込めた視線を向けた。

 ……ん? アリスちゃんの一言ちょっと待って。

 今の僕はリリス母さんの息子で、そのリリス母さんとかなり歳の離れた実の妹のアリスちゃんは僕の叔母に当たる。そして、アリスちゃんの母親ということはリリス母さんの母親……つまり僕の祖母に当たる。

 ……つまりティエラちゃん、もといティエラさんの正体は……

「…………おばあちゃん?」

「や、やめんかユート! せっかくわらわのの正体を隠しておったというのに……!」

 アリスちゃんが計画通りと言わんばかりの可愛いけどすこしあくどい笑みを浮かべ、チラリとユヅキちゃんを見た。

「……へー」

「そうだったんだ」

「ティエラが小杉ユートの祖母だったなんてね……」

 しまったと言わんばかりで、ティエラさんは僕に助けてと言わんばかりの目を向けたけれど、ダアトちゃん曰く『保健所に連れて行かれる野良の動物を見るような目』を向けておいた。ネズミのようにお騒がせな彼女にはこれくらい厳しく対応しなければなるまい。

「え、ユート! おぬしまでもがそちら側に」

「誰だって大切な人達が傷つけられたら怒るからね。 流石にフォローどころか容赦は出来ないかな。それじゃあ……頃合いを見て戻るから、ゆっくりと仲良くしていってね? おばあちゃん?」

 よかれと思って、これから三途の川に向かう予定のおばあちゃんに敬礼し、ちょっとユウ君達の部屋に遊びに行くことにした。


「……う゛ぅぅ……ユヅキだぢにぎらわれだぁ……」

 その日の夜、娘であるリリスに泣きつくティエラがいた。

「まあまあ、ユヅキちゃんもアリスちゃんも、本気でお母さんの事を嫌いになったワケじゃないわよ。多分」

「……ぐず、ユートにもきらわれておらぬか?」

「……ええ。ユートちゃんが嫌うような相手なんて、ほんの一握りだから大丈夫よきっと」

「……本当か?」

「本当よ。」

「本当に本当か?」

「本当に本当よ」

「……そう、か……ふ、流石はあれほどのはぁれむを築いた男じゃ。わらわの弟……ネヘモスのように広い心を持っておるの」

 泣き止んだティエラは颯爽とリリスから離れ、残っていた涙を拭った。

「……ところでリリス、ちといくつか頼みたいことがあるのじゃが」

 そう言ってティエラはリリスの耳元でいくつかの用件を囁いた。

「一つ目の……ユートちゃんとの1日デートなら、なんとか説得して取り付けて見せるわ。でも残りの二つはちょっと時間がかかりそうね。面白そうではあるけれど……」

「なるほどな……なら手筈通り」

「ええ。ユートちゃんには母さんの観光の案内とつたえておくわ」

ババア結婚する気かよ!(そんな描写はさほどない)


ちなみにババア様ことティエラさんの指摘の中身ですが、全てブーメランです!

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