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その祭事は細事

駄洒落?ええ駄洒落ですとも。


今回は家族以外のヒロインはいません。家族以外のヒロインがいません


大事な(略)

「ユート、ちとわらわの観光に付き合え」


 おばあちゃん……ティエラさん来襲から数日後の休日、僕の部屋にノック無しで入ってきたティエラさんは……おばあちゃんは開口一番にそう言い放った。


「……観光? お兄ちゃんと……観光…………ギルディ。汝罪有り(イエ、ギルディ)


「あーいいけど……ちょっと、来るタイミングが、悪かったかな」


 そっとユヅキちゃんを抱き寄せて頭を撫で、半目になりながらおばあちゃんを睨んだ。


「そう怒るなユヅキとユート。ただ妾は可愛い孫に……ユートにふるさとの国を案内してもらいたいだけじゃよ」


「…………もしお兄ちゃんに変なことしたら酷い目に遭わせる」


 具体的に何をするかは考えていないらしい。


「よし、決まりじゃな? ユート、明日の昼頃に発つつもりじゃ。それまでに準備を済ませてくれぬか」


「……うん、分かった」


 完全に流されていると悟りながらも、反論するのも少し面倒だったのでそのまま黙っていた。流石に分別をわきまえている大人なのだから、ユヅキちゃんのようにそれとなく人目に付かないような場所に誘導することはないだろうし、間違っても僕の両親……小杉遊斗としての両親に挨拶するにしても、きちんと血縁者と自己紹介するだろうと……油断していた。


 完全に油断してしまっていた。


 慢心の極みだとツッコまれても仕方がないほどに、完全に油断してしまっていた……




「どうじゃユート? わらわの格好は? 可愛いじゃろう?」


「え、まあ……うん、可愛い、けど……」

 何をどう間違えたのか、着物姿で日本への旅行を敢行しようとし、僕に感想を尋ねてきたティエラさんには曖昧な返事をする他なかった。流石に怒ったのか、すねに蹴りを入れられた。


「なんじゃその答えは? そんなにおかしいかえ? わらわの格好がそんなにおかしいか?」


「……まあ、そこまでおかしくはないというか、似合ってはいるんだけど……確実に変な目で見られると思う」


 江戸時代以前ならともかく、今の日本人で着物を普段着にしているのはほんの一握りだろう。

「リリスは祭りに行くならばこの格好がよいといっておったのじゃが……違うのか?」


「……夏祭りなら、正解かな……多分」


 そうか、そういえばもうそんな時期になってたのか……時が経つのは早いね……




「ユートよ! あれはなんじゃ? もしや、リリスがゆーとった焼き寿司かえ?」


 初めての日本のお祭りで、無邪気にはしゃぐティエラちゃんに袖を引かれながら、屋台をめぐっていた。


「あれって……? ああ、あれは焼おにぎり……ですよ。多分」


 焼おにぎりではなく焼きデュエル飯となっているのは何故だろうか?


「おお……! ……? む? ユートよ、リリスに聞いたところによると、寿司とは冷ました米の上に切った魚を載せたものと聞いたのじゃがの……いなりずし、というのは寿司なのか?」


 ティエラちゃんは稲荷寿司の屋台を指差し、首を傾げた。


「稲荷寿司は寿司だけど……って、なんで祭りに稲荷寿司があるの……」


「この祭りはすぐそこの神社の祭りで、そしてそこで祭っている神が狐の神様だから、稲荷寿司の屋台があるの」


 なにげないただの呟きだったのだが、妖狐らしき金髪狐耳の女性が僕の疑問に答えた。


「コン、この屋台の稲荷寿司の在庫を……いえ、稲荷寿司を100個程……12個入りのを9パック下さいな」


「は……はいっ、分かりました」


 9パックの稲荷寿司を袋詰めしてもらっている妖狐が、何か言いたげにチラリと僕達を見た。


「ふぅん……淫魔の姉弟かと思ったけど、詠ちゃん達に近い感じなのね……」


「…………?」


「はて、なんのことじゃ、九尾殿? 心配せずとも、わらわ達は何もせぬぞ?」


 牽制の目線を送るティエラちゃんを鼻で笑い、妖狐さん改め九尾さんは稲荷寿司を受け取りティエラちゃんに背を向けた。


「……それじゃあ、くれぐれもここでイズモちゃんに迷惑かけるような真似はしないで頂戴ね」


「え?」


 直後、九尾さんは最初からそこにいなかったかのように、忽然と姿を消していた。




「……ティエラさん、さっきの九尾の人、知り合いなんですか?」


「まったく見知らぬ九尾じゃ」


「じゃあさっきなんで微妙に喧嘩腰というか」


「……ユート、おぬしの好きな寿司は何じゃ?」


「え? それはハンバー……じゃなくて、ネギトロですかね」


「それでは、それを100個食べられるか?」


「流石に15貫くらいが限界ですけど……」


「……あやつが買ったのは100と少しじゃ。つまり……」


「早い話が惚気と……じゃまされたくないからしょうもない理由じゃないですか。心配して損しました」


「じゃな。わらわもまさかそのような些細な事で釘を刺されるとは思わなんわい」


 そう言って、ティエラちゃんは早足で綿飴の屋台へと近付いた。


「店主よ、ワタアメとやらを2つくれ。御金はちゃあんと払う。のう、ユート」


「……はいはい」


 ティエラちゃんは子供なのか大人なのか、未だにはっきりとわからなかった。

次回からギャグメインの中編に入るっぽい?

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