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モンスターゲート  作者: ケン
第1章 実地研修期間
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第4話

 初めての依頼をこなした翌日の朝、家の留守番をシャラスに頼み、学校へと向かう道の途中で俺はまたもや、不良共に囲まれて、四方八方から睨まれていた。

 金髪にピアス、ズボンから見えている動くたびにジャラジャラとうるさい音を奏でるチェーン……こいつら、それがカッコいいと思ってやっているのかね。ああ、泣いている親御さんのお顔がはっきりと想像出来るぜ。

 まあ、俺も一般的に見ればこんなことを言える立場じゃないんだけどさ。

「よう。あんたが神崎和也か」

「そうだけど……何か用?」

「この町の頭がお前って聞いてよ。その頭を俺達が貰いに来たわけ」

 この町の頭って誰がそんな話し広めたんだか。

 俺にとっては迷惑の何者でもないんだけど……それよりもこいつら、どう見ても高校生じゃないな。違う町の中学生辺りか? どうせ、小学生までは普通の子だったんだけど中学に入学してから上の学年のワルどもに感化されてぐれた奴らだろ。

 まだ、こいつらの格好なんか見ていても可愛いって感じしかしないし。

「分かった。この町の頭っていう称号はお前らにくれてやるから。というか是非もらってほしい。俺はこれから学校に行かなくちゃならないから。じゃあね」

 そう言い、その場を去ろうとするが不良の壁を無理やり通ろうとするが向こうさんには通す気はないらしく、逆にはじかれてしまった。

「俺達を嘗めんじゃねぇぞ!」

 そう叫び、1人の不良が金属バットを振り下ろそうとするが余りにも隙だらけだったので思わず、絶好のチャンスだと思ってしまい鼻を潰す勢いで殴ってしまった。

「おぐぅ!」

「お、おい大丈夫かよ!」

「ひ、ひぃ! は、鼻が! 鼻が!」

 ドクドクと血が出る鼻を押さえながら、痛みの余り地面にのたうちまわり、辺りの自分に自分の血をまき散らして赤色に汚し始めた。

 なんかいつもよりも体が速く動くというか……力もいつもの半分くらいのつもりだったんだけど…………今度は後ろか。

「よっと」

「うぐぉ!」

 何故か、後ろから殴りかかってくるのが分かり、振り向きざまに裏拳を叩きこむとこれまた綺麗に相手の顎にクリーンヒットして相手の意識を一撃で刈り取った。

 おぉ! こりゃあ、凄いことになったぞ! 何かいつも以上に相手の動きが分かるし殴る力も前の何倍も強くなってる!

「くそ! 一気に畳みこむぞ!」

 その一言に不良全員が頷き、そして一斉に俺に向かって武器を振り下ろしてきた。

 とにかく、俺は一番近くの不良の胸倉を掴んでそいつをジャイアントスイングの要領で胸倉を掴んだまま、振り回した!

「イテェ!」

「ごえぇ!」

「ひ、卑怯だぞ!」

「はっ! 卑怯もクソもあるか! 戦いなんて勝ってなんぼのもんだろ!」

 振り回していた奴の胸倉を離し、何人かを纏めて倒すとそれに意識を取られていた奴に全力でアッパーをかましてやるとそのまま上方向に体が浮き、地面に頭から落ちた。

「い、今体浮いたぞ!」

「どうする? これ以上、俺に関わらないと誓えば見逃してやるぞ?」

「ク、クソが! 覚えておけよ!」

 何人か気絶している奴らを担いで不良共は命からがらといった感じで逃げていった。

「ふぅ。正義は勝つ……どっちが正義か分からんが。警察呼ばれないうちに行くか」

 周りに人がいないことを確認し、学校へと向かってゆっくりと歩き始めた。

 シャラスと契約したから身体能力云々が強化されたのか……なんか生物の理を外れるとか言ってたけど本当なんだな。

「っっ!? サイレン」

 その瞬間、モンスターゲートから異怪がこの世界に出てきたことを告げるけたたましいサイレンが鳴り響いた。

「マジかよ」

 サイレンが鳴った時、危険度がそれぞれ分かれている。

 その危険度は携帯などに一斉に国から送られてくる非常用メールに載っているんだけど、今回の危険度はっと………ゲッ! 危険度マックスじゃねぇか!

 ポケットから取り出した携帯の画面には今回、こっちの世界に入ってきた異怪の危険度やその予測到達地点なんかの情報が書かれているんだが…………どうやら、今回はかなりヤバイ奴がこっちの世界に入って来たらしい。

「和也!」

「シャ、シャラス!? なんでここにいるんだよ!」

「忘れもの届けようと思ったんだけど……どうやら、異怪が現れたみたいね」

「ああ、まあッッ! 伏せろ!」

 俺の視界に巨大な鳥がこちらに向かって急降下してくるのが見え、シャラスを無理やりしゃがみこませて地面に伏すと、俺達のすぐ上の巨大な鳥が通り過ぎていき、凄まじい強さの風が俺達に襲いかかった!

『グガァァ!』

 どうやら巨大な鳥は俺達を餌と認識しているのか、その大きなクチバシからポタポタと漏れ出るくらいに唾液を垂らしていた。

 絶対絶命とはこういう事だな。ていうか、この町まで異怪が来るのも珍しいなおい。人類の希望の聖域隊は何をやっているんですかって話だ。

「さあ! 和也の出番よ!」

「なんで!?」

「なに言ってんのよ! そんなの私の点数の為に決まっているでしょうが!」

「そこはせめて命の為って言えよ! ま、また来るぞ!」

 バサバサと巨大な両翼を羽ばたかせながら、再度、巨大な鳥が俺達に突っ込むためのウォーミングアップらしき運動をしていた。

「今のうちに逃げるぞ!」

「ちょ! ちょっと! 私の点数!」

 シャラスの手を取り、一刻も早く巨大な鳥から離れるべく今、出せる全力の速度で走りはじめた。

「わ、私の点数がぁぁぁぁ!」

「良いから! 今は生きることだけを考えろ!」

 泣きわめくシャラスを宥めながら巨大な鳥から逃げていくが、向こうもせっかくの餌を逃がしたくないらしく、その巨大な翼をはばたかせて突風を巻き起こしながら俺達を追いかけてくる。

「点数! 私の点数が近付いてきた!」

「バカ! 何が点数だ……ってここでまさかの行き止まり!」

 必死に走ってきたからいつの間にか行き止まりがある方向へと走っているのに気づくのが遅れ、慌てて戻ろうと後ろを振り返った時には既に背後に鳥が待ち構えていた。

「ほら! 点数が自分から来てくれているじゃない! サクッと倒しなさいよ!」

「い、今の状況で俺に言うか!?」

 シャラスと言い合いをしている最中、ザシュッ! といった肉に鋭い物が刺さるなるべく聞きたくないような音が聞こえ、ビチャビチャっと液体が地面にこぼれる音が聞こえた。   

 巨大な鳥がいた方向を見るとさっきまであんなに元気だった巨大な鳥が首筋の辺りに何本もの剣を突き刺されて絶命していた。

「目標殲滅完了。事後処理に移るわよ。FとGは残骸処理。HとIは辺りに散らばった体液の処理。一分以内で終わらせなさい」

 冷たいと感じるほどの声。

 巨大な鳥の上にパワードスーツと呼ばれるもので武装し5五人の男女が乗っていた。

 白いパワードスーツから赤色、青色など色取り取りの武装を身につけた人物達の中の2人が始末した鳥の遺骸を持ち上げ、残りの2人は辺りに散らばった体液の清掃を始める。

 体液を拭きとらないと散らばった異怪の体液を体内に誤って入れた野良猫なんかが変異を起こして新たな異怪となってしまうらしい。

 そして4人に指示を飛ばしていた最後の1人が俺達に近づいてきた。

 人くらいのサイズの異怪は警察ならば周囲を10人以上の警官で囲んで異怪用に開発、配備されている拳銃で発砲、丸腰の一般人ならナイフなんかの刃物で異怪の頭を刺せば一瞬で殺せるらしいが、怪獣みたいに巨大な異怪を倒せるのはこの世でただ一つ――――――聖域武装だけ。

 顔もヘルメットの様な物を被っており、表情すら分からない。

『よく、異怪に追い詰められていながらケンカできるわね』

 エコーがかかった声が聞こえ、フルフェイスのヘルメットを外すと綺麗な黒髪が弾け飛ぶようにダランと外に毀れた。

 十分に手入れが行き届いている腰に届きそうなくらいの黒髪。整った顔。一般的に美人と呼ばれる女性だった。

 ……今時、珍しい純和風の黒髪美人だな。超美人。

「良いカップルね。異怪が目の前に居ても喧嘩し続けるなんて」

「カップルって何?」

「……俺達が愛し合ってるってこと」

「ふざけんじゃないわよ! ていうかあんたたち誰よ! 私の点モガッ!」

「助けていただいてありがとうございました。ほら、お前も」

 渋々といった感じにシャラスも俺と同じように聖域武装を纏った女性に頭を下げ、助けてくれたことに対してのお礼の言葉を言った。

 聖域武装を纏い、異怪と戦う者達は世界中の人間から尊敬のまなざしを受けており、それに伴い権力なども若干、一般市民よりも高い。

 そりゃ、命かけて闘ってんだからそれくらいのことは仕方がないだろうと世間では言われている。ちなみに給料もめちゃくちゃ良いんだとか。

 そのかわり隊員が不祥事を起こした時の処罰は凄まじいほど重いらしく噂では一生、陽の目を拝む事が出来なくなるとか。

「ま、あなた達に怪我がなくて良かったわ。今度からは警報が鳴ったら建物の中に入っておきなさい。異怪に食べられちゃうわよ」

 最後に薄らと笑みを浮かべ、黒髪美人の女性は鉄で地面を打ち付けた時に聞こえる音をたてながら、後始末をしていた隊員たちのところへと戻って行き、ヘルメットをかぶって何も推進力を得る物を背負っていないにもかかわらずまるでその人がいる周りの無重力が無いかのように少し飛びあがるだけでそのまま空へと上がって行く。

 ある程度の高さまで上がると、背中にあるエンジンの様な物を使ってどこかへと飛んでいった。

 聖域武装…………この世で異怪を倒すことのできる武装。あり得ないことを捻じ曲げてあり得ることへと変化させることができる人間の常識をはるかに超えた武装。

「ちょっと! なんでさっき、邪魔したのよ!」

 さっきの奴らが見えなくなってからシャラスが俺に怒鳴り散らしてきた。

「言い忘れていたけど聖域武装を纏っている奴らは一般市民以上に権力が与えられているんだよ。だから自らの意志で拘束することも出来る。聖域部隊の隊員の中には性格がクズみたいなやつもいるらしいからな。反抗しただけで刑務所に数年行かされるなんてよく聞く話だ」

 いくら一般市民が何もしていないと言い張っても向こうは世界を護っている巨大組織。人間一人を冤罪で刑務所にぶち込むことも世界から消すことさえ簡単にできる。

 だから数年前にそれ関連の問題を専門に取り扱う弁護士なんかも出てきてはいるらしいがやはり弁護士でも個人であり一般市民。でかい組織の前じゃ何をやっても効果は無い。せいぜい金を毟り取って刑期を短くするくらいだ。

「そう……じゃあ、尚更あんたが力を使えるようにならないとね」

「力を使えるようになっても戦いたくはないけどな」

「それじゃ私の留年が決定しちゃう」

 他人の留年なんか知るか……といいたいところだがこいつと契約した時点で寿命なんていうものは消えているから俺は殺されるまで生きるらしい……留年? そう言えば何か忘れているような気が…………なんだっけ?

「ところであんた学校は?」

「……あ」

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