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モンスターゲート  作者: ケン
第2章  天使
37/42

第37話

 そんな声が聞こえ、上を向くと空中に浮いている白い短髪に黄色のメッシュを入れ、白いローブを両肩が出る長さまで切り、下はズボンタイプに改造しているものを着ている女性天使がいた。

 その女天使は空中から降りると嫌な笑みを浮かべながら俺達の方を見てくる。

「貴方がここにいると言う事は……天界を裏切ったと言う事でいいんですね」

「違いねえ。あたしは戦えればそれでいいんだよ……そもそもNo,1のやり方は気に食わなかったんだ。そもそも悪魔を滅するのが天使の役目じゃねえか。お前もNo.1も分かっちゃいねえ」

「つまり……貴様がNo.2と3を殺したのか」

「あぁ。あいつらの顔は面白かったぜ。あたしにコロッと騙されてよ。まあ数百年一緒にいた奴が裏切るなんてことは露ほども」

「っっ!」

 イスラの怒りの籠った一撃を奴は素手で、さらに言えば片腕だけで受け止めていた。

 これが一桁台の力か……なら!

「手を出すな!」

 俺も戦いに参加しようとした瞬間、イスラにそう叫ばれて思わず足を止めるとイスラの怒りに満ちた顔が目に入る。

「この裏切り者は私が殺す! 貴様は手を出すな!」

 両者ともに真っ白な翼をはやし、上空へと駆け上がりながら戦いを繰り広げていく。

 奴はイスラに任せるとして……俺はあれをどうにかするか。

 破壊された門から続々と侵入してくる魔獣どもを片付けるため、門に向かって駆け出しながらすれ違罪魔に魔獣どもを左腕で切り裂いていく。

 天界で裏切りがあったってことは……冥界でもあるのは不思議じゃないな。

「邪魔だ!」

 熊のような姿をした魔獣を全力で殴り飛ばし、門の前に到着すると入り口のすぐ近くに黒いローブをまとった一人の女性悪魔が立っていた。

 なるほど。奴が別の場所から魔獣を呼び寄せていたと言う事か。

「ちぇ、気づいたか」

「お前……いや、お前らは何をしようとしているんだ」

「単純なことよ……世界を我らの手に!」

 そう叫ぶと同時に上空に時空の歪が発生し、そこから魔獣が次々と出てきて俺に向かってくる。

「世界をねえ…………」

 そう呟きながら天使の左腕を軽く横に振った瞬間、白く輝く衝撃波が放たれ、向かってくる魔獣を一瞬にして塵に変え、魔獣を呼び寄せた奴自身も軽く吹き飛ばした。

「がっ! な、なるほど。流石は天使と契約したことはありますね。天使の契約物は悪魔の契約物よりもある程度は強くなる傾向があるようですし……ですがこれならどうですか!?」

 さらに一際大きい時空に歪が生み出され、そこから何かを混ぜ合わせているかのような不快な音が鳴り響いてきたかと思えばそこから真っ赤な血を腕から滴り落としている巨大な腕が伸びてきて奥の方から低いうなり声のようなものが聞こえてくる。

「…………汚ねぇ」

 時空の歪から出てきたのは50メートルほどの体長の巨人タイプの魔獣だが様々な魔獣をごちゃ混ぜに合成されて生み出されたのか所々、内臓や骨が見えている個所がある。

「いけ!」

 主人の命令通り、その巨大な腕を振り上げて俺に向かって振り下ろしてくる。

「ふぅ……はぁ!」

 左腕を巨大化させ、巨人が振り下ろしてくる拳めがけて腕を突き出すと直撃し、周囲に凄まじい衝撃波が放たれ、力が一瞬の間だけ拮抗するがすぐにその力の拮抗は崩れ、徐々に巨人が後ろへと下げられていく。

「ぐおらぁぁぁぁぁぁ!」

 叫んだ瞬間、左腕が輝きだし、白銀の力が腕から解放されて巨人の上半身を一瞬にして吹き飛ばし、下半身もただの肉片となって崩れていく。

「っっ! な、なんだ今の力は……天使と契約したとはいえこれほどの力は出せないはず!」

「知らねえよ」

「っ!」

「遅い」

 全力で駆け出した瞬間、相手が魔方陣を展開し、魔法を発動させようとするがそれよりも早く俺の左腕が奴の腹部に突き刺さり、見えなくなる距離まで奴を殴り飛ばした。

「とりあえず反省しとけ、ボケ…………あとは」

 空を見上げるとイスラとNo.4が高速で移動しながら戦っている様子が見えた。

 イスラの攻撃はさっきからいなされてばかりか……腐っても相手は天使の一桁ナンバー……二桁ナンバーのイスラが勝てる相手なのか? だがまあ、とりあえずこれ以上天界に魔獣が入り込んでくる心配はない……。

 そんなことを考えていると上空から2人が地上へと急降下していき、砂埃を大量に巻き上げながら地上に着地した。







 門を潜り、イスラが着地した場所へと向かうと傷だらけで息も切れ切れのイスラとまだ余裕綽綽の様子のNo.4の姿があった。

「だから諦めろって。二桁ナンバーのお前は一桁ナンバーのあたしには勝てねえって」

「黙れ……天界を裏切り、破滅させようとする貴様などに……負けはせん」

 強気な口調でそう言うがイスラのボロボロな姿のせいで逆に弱弱しく見えてしまう。

「イスラ、俺も行く。お前に死なれちゃ困るんだよ」

「良いと言ったはずだ……」

「一人増えようがあたしの敵じゃねえよ……2人仲良くまとめて消えろ!」

 No.4の全身からすさまじい量の魔力が放たれ、周囲の地面が大きく凹み、俺達に凄まじいプレッシャーのようなものが襲い掛かってくる。

 全力の一撃で俺達ごと天界を破壊するつもりか。

「イスラ、まだやれるか」

「誰に聞いているんだ。契約物が動けて契約者が動けないわけなど無い」

「全力をぶつける。そうすりゃ天界が滅びることは無くなるだろ」

「良いだろう……ふぅ」

 息を整え、イスラが両手で斧の持ち手を握った瞬間、全身から魔力が放出され、彼女の周囲が淡く輝き始め、徐々に彼女の力が上がっていくのが分かった。

 よし……俺も行くか。

 左腕に力を集中させると今までにないほど腕が輝きを発するとともに頭の中である映像が再生され始めた。

 その映像では俺と同じような白い左腕をしている奴が誰かの背中に今の状況のように光り輝いている掌をつけていた。

 …………今までもこんなことはあった。こんな映像が出てくるたびに新しい力が手に入ったよな……今はこの映像に従うか。

「お、おい何を」

 戸惑うイスラを無視し、掌を彼女の背中に付けた瞬間、左腕に溜まっていた力が俺の腕を通して彼女へと移されていくのを感じた。

 その証拠に左腕の輝きが徐々に失せていっている。

「ち、力が……行くぞ、和也」

「案外、名前で呼ぶの早かったな」

「うるさい……来るぞ!」

「2人まとめて天界ごと消えろ!」

「「うおおぉぉぉおぉ!」」

 No.4が腕を突き出した瞬間、地面を抉りながら俺達に向かって巨大な力の塊が放たれてくるがそれと同時に俺のほぼすべての力を得たイスラも斧を全力で振り下ろし、巨大な白く輝く衝撃波を放った。

 ほぼ同時に放たれたそれらの攻撃は正面からぶつかり合い、俺達を中心にして周囲の地面を異様な勢いでえぐっていく。

「ぐうぅぅぅ!」

 徐々に俺たちの攻撃が押されてくる。

 くそっ! やっぱり俺たち程度じゃ合わせても奴には勝てないのかよ!

「諦めろ!」

「諦めてたまるか! ここは私が生まれ育った世界! そんな世界を……皆が生まれ育ち、思い出のあるこの世界を貴様らごときに滅ぼさせるわけにはいかない! 私は天使として……いや! 神崎和也と契約したイスラという1人の天使として! 天界を裏切った貴様を倒す! であぁぁぁぁぁぁ!」

「ぅぅお!?」

 その瞬間、イスラの全身から俺が与えた力ではないものがあふれ出てきて衝撃波の威力が増大し、さっきまで押し負けていたのが軽く奴の攻撃を押し戻していく。

 そしてそれと同時に彼女の首元に一瞬だけ数字が見えた。

 っっ! お、おいおい! 俺の見間違いじゃなかったら今の数字は!

 衝撃波が白銀色に変色していき、さらに威力が倍増したのか奴の攻撃を押し込んでいく。

「っっ! ふざけんな! この力はあいつのっ! どこまでっ! いったいどこまでてめえはあたしを邪魔すんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 イスラが叫んだ瞬間! 完全にこちら側の攻撃が奴の攻撃を飲み込み、奴に向かってまっすぐ直進していき、大爆発を上げた!








 爆煙が晴れるがそこに奴の姿はなかった。

「ハァ……ハァ」

 先程の一撃で相当消耗したのか額から汗を流しながら斧を杖代わりにして自分の体を倒れないように支えるのがやっとの様子だ。

 今の数字……見間違いじゃないとするなら……でもイスラの数字は12のはず……。

「ふぅ…………天界を落とさせるわけにはいかん」

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