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リブロ

「今日も平和だーー」


見上げる空は雲ひとつない。

こんな日がいつまでも続けばいい。

そんなことを考えながら学園に向かって歩く。




今日は学園の始業式。約一ヶ月の夏期休暇が終わり、授業が再開される。


「えーーみなさん、おはようございます。夏期休暇には訓練は欠かさず行いましたか?休暇前にも伝えた通り、剣も魔法も毎日訓練しなければ……」


ここは王国内最大規模を誇るフェリス王国立グランデ学園。王国騎士になりたい者、宮廷魔法使いになりたい者など、様々な生徒が在籍している。

学費は平民にとって安いものではないが、この学園の生徒は王立奨学金を受けることができるため、実質的に0に近い。

その数は4学年合わせて約2000人。そのそれぞれが剣術科、魔法科、貴族科のどれかに所属している。


「明日は実技テストか……帰ったら魔法の発動確認くらいはしておくか」


自分の所属する魔法科は魔法を使った実技テストが課され、魔法の成績が悪ければもちろん就職先に関わってくる。

地方の魔法兵士というあまり高くはない目標ではあるが、その目標確実なものとするためにもこの学園内で真ん中よりは少し上くらいの成績を維持する必要がある。


「明日の実践テストでは各々夏期休暇の自主訓練の成果を存分に発揮するように。では解散!」


その言葉をきっかけに生徒たちは待ってましたとばかりに四散していく。


「この校長は話がなかなかに早くて優秀だな。前とは大違いだ。さて、家に帰ろう」


オレは学園から歩いて15分ほどにある商店街の隅のアパートに一人で住んでいる。

遠方から来る者は学園寮に入るのが一般的なのだが、父の旧友のツテでタダで貸してもらっている。

学園寮もタダではないので、なんともありがたいことである。


まあありがたいのは金だけが理由なのではないのだが……


オレはこの世界の人間ではない。いや、正確に言えば「ではなかった」かもしれない。

日本のある離島で生まれ育ったオレは地元の高校を卒業し、家業を継ぐつもりでいた。

だが、卒業から一週間後、友人たちと卒業旅行に本州に出掛けていた時、交通事故に遭遇してしまう。

窓際に座っていたオレは窓から投げ出され、グロテスクな音とともに意識は途絶えた。


そして気がつけばオレの精神は赤ん坊の体に乗り移っていたのだ。

当初は言葉もわからずただただ戸惑うばかりであったが、一年もすると言葉も覚え、自分の置かれた状況にも理解できた。


オレは地球とは違うどこか違う世界にいるのだと。

もう家族や友人たちには会えない。地球の日本で暮らしていたオレはもう死んだのだ。

オレは違う世界で今世を生きている。前世のことはもうさっぱり忘れるべきなのだ。


そう心ではわかっているのだが、どうにもできない。

忘れられないのだ。島の家族友人たちの姿、声が。

今でも鮮明に思い出せてしまう。島での思い出。


今世を生きていても、オレの中心にあるのは前世の記憶だった。

そのせいかオレはこの世界と深く関わることからなんとなく遠ざかっていた。


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