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書くのは大人、意見は子供

第三話です。

 子供のころったら、怪人を倒す戦隊ヒーローものに憧れては、学校でよく真似をしていたのを思い出すな。

 アニメの影響でミニ○駆と一緒に自分も走ったら、ミニ○駆が早いのなんの、この時アニメの中の人間達が超人なんだなって思い始めた時か。

 後は、女の子が電撃とか食らってんのを見て妙なエロスを抱いたりとか。あ、やめた方がいいよねその話ね。


 こんな風に、子供のころは下らんロマンとかシチュとか関係なしに、ただそこに写されるあるがままを楽しんでいた。

 なのに大人になった今となっては、演出だの声優さんだの意識して評論家ぶっちゃってさ。ぶっちゃけ俺らが何を言おうが制作側には一切影響与えられないからね。

 も知っていてもネットに書きこんじゃうんだよね。それが人の性なのかね。人じゃねぇな、大人のだな。

 ネットっていえば他人の評価を鵜呑みにしちゃってさ、子供のころはそんな文章で語るより先に勢いとアクションで語ってたさ。それも昔の話なんだろうけどな。


 俺の名前は日橋竹男。ライトノベル作家を夢見る大学生だ。

 作家を夢見てるとは歌舞うが、文法の勉強とかはしてないさ。

 でもプロの作る作品を見ては評論家ぶったりしてちょっと技術盗んでたりは努力してる。ってそれ、パクリって言うんだけどね。

 コンテストに応募したこともない。だってネット小説サイトで評価十点満点中一点の俺がそんなもんに応募したって審査員が一転もしないで目にもしないだろうよ。うん? 無理やりだけどちょっと上手いこと言ったかな俺。

 お気に入り評価だってようやく始まりとも言われている100件だって突破したこともない。話数だけはいっちょ前に100話超えてるけどな。

 文字数だって一話平均1500字とか、変な文法で引きのばしてそれだ。一回感想欄でボロクソ言われて朝まで生討論したことあったわ。それ裏で掲示板で叩かれてたのを知って泣いたんだわ。


 とまぁそんなボロクソ五流ネット詩人の俺だが、夢を持つことは大事というおじいちゃんのかつての名言を美化してここまでやってきたんだわ。ちなみにおじいちゃんは存命してるよ。

 そんな夢を大切にする大学生は今、家に小学生を数名連れ込んでいる。あぁ大丈夫です。別に犯罪とかじゃないから110番だけはご勘弁。

 ちなみにどうしてこんなことになっているかというと、一人の小学生と現代のエンターテイメントについて語り合ったらボロクソ返され、俺の小説を一緒に作ってやるという話になったからだ。

 もう20で酒も飲めるこのお年頃が俺より半分の年齢のやつに言い負かされたあげく協力を仰いでいるっていうね。傍から見たら先なんてないクズ人間だわほんと。

 だがそんな恥に対して意地を張っていても人間は先に進めないわけよ。人間恥を乗り越えてこそ先が開かれるっていうね。てかさっきから俺屁理屈ばっかりだな。


「したらまずはどんなお話を書くかだよねお兄さん」

「あぁ、そうだな」


 と、俺に向かってすかした態度で話しかけてくる明良。

 後ろのガチ小学生のクソガキとまではいかなくてもよ、もう少し子供らしくできないのかねこのガキは。

 ったくちょっと中性的な容姿だからって調子に乗んなよ。リアル男の娘ほど萌えない人種はいないんだよ。男の娘は幻想でこそ輝く希少種なんだよ


「まぁ今回は短編ということだし。頑張って3000字ほど書いてみるか」

「3000字? 小学生の感想文約5枚分で足りるのお兄さん」

「へぇ? んだとこのガキぃ?」


 明良のその人を小馬鹿にした物言いが少し気にいらなかったので、ごめんちょっとガチで気にいらなかったんだよね。

 なので俺は少し大人げなくキレ気味に返した。大人げないって言うんだけどねこういうの。

 すると明良は、首を軽くひねって。お得意の小学生の純粋な意見で俺にこう語る。


「確かに僕らの感想文だと、コンクールでは約1200字以内。お兄さんが書こうとしている物語の半分以下になっちゃうよね」

「だろぉ? ならば3000字も書けば充分小説で成立するだろうが」

「だけどそれはあくまで"感想"を書く話であって、お兄さんが書くのは"小説"。人が直に見たこと感じたことを文章にするのと、一から自分の想像した物語を起承転結で書き切るのでは、お兄さんが馬鹿にしたたかが1200字の、何十倍もの字数を持ってしても足りないんじゃないかな?」

「んぐっ!!」


 たかがと言う明良に乗っかり俺がその発言に言葉を返すなら、その言葉は俺からすれば"たかが"小学生の一意見だ。

 だがたかがというならそこには"されど"という言葉も存在する。すなわち今明良が言った言葉を小学生の一意見というだけで捨て置くのは危険すぎる。

 そこには紛れもない正論も含まれている。大人の汚さを純粋に見て感じ取るが故の小学生だからこそ、軽く言った言葉の数々に正しさが滲み込むもの。

 そんな深みある一意見に、俺が大人の綺麗事で否定していいものか。否、それやったらマジで大人のエゴだよ。エゴだよそれは!!


「……したらこの短編。何字書けばいいんだ?」


 俺は明良にそう答えを求める。普通はそこで答え求めちゃ駄目だろうな、大人の威厳どこかへ丸投げだもんな。


「……100000字は」

「鬼か!!」

「くすっ……。冗談だよお兄さん。そんなの書いたらお兄さん、学校の授業中で寝てしまうかもしれないからね」


 そう意地悪そうに、耳に付くような声で言う明良。

 小学生のくせにドSだとぉ。舐めんなよガキが、ちょっと萌えちまったじゃねえか。


「せめて10000字かな?」

「……それくらいなら頑張れるか」


 なんか担当編集者を前にして小説書いてる気分だ。

 こんな担当いやだなぁ。けど現実の担当編集者ってこれ以上に鬼畜でとんでもないことばかり言いだすんだろうな。

 ま、この際明良はリトル担当編集者と仮定してやってみることにしよう。


「とりあえずどういうストーリーにしようか……」

「そうだねぇ。小説を作るなら登場人物の詳しい設定から、物語のフローチャート。断片的なアクションを段階に分けて大雑把でいいから書いておき、そこからの展開などをプロットにまとめて」

「雛森ぃ~? お前それ何ヶ月かけて作るつもりだぁ? お前ら毎週休み俺ん家来るつもりか絶対いやだかんな!!」


 と、後ろで割と本格的なことを述べているリトル編集者。てかお前そんな知識どっから仕入れたんだよ!!


「まぁ仕方ないよね。勇人、最近どんな番組面白かった?」

「えっとなぁ~。仮面○イダー!」


 そう迷いなく面白かった番組名を言う勇人くん。

 あのね勇人くん。それだと二次創作になっちゃうんだわ。夢はあるだろうけど所詮土台ありのファンアートなんだわ。

 じゃなくてオリジナルを……。すると明良は次に。


「乃亜。最近読んだ本で面白かったのは?」

「う~ん。桃太郎!!」


 そう乃亜くんは答えた。

 桃太郎か。単純だけどおもしろいよな、冒険ものの初心。イッツスタンダードアドベンチャーだよな。

 おそらく学校の図書室で読んだんだろうな。けどな乃亜くん、仮面○イダーと桃太郎だとこのままじゃただの仮面○イダー電王だな。そこで解決して終わりだな。

 と、そんなことは明良にとっては予定調和なのか。ならばと残ったもう一人に請う質問をする。


「獣王。なんか最近面白かったことある?」

「そうだなぁ。お兄がエロゲやってた所かなぁ~」


 そう獣王くんが答えると、俺は心の底から噴き出しそうになったんだわ。

 おいおいこの先の日本社会を支える若人たちよぉ。頼むから小さな種の前で己の性癖は隠そうや。小学生なんて中学に上がった瞬間女と階段登ろうと必死になるんだからさぁ。

 てかやっぱり獣王だわ。獣の王が如く数年後は女侍らせてリアルハーレムラブコメすればいいじゃん。ってごめんね獣王くんね。


「……ライダーと桃太郎とエr……ごほん! なんとかなりそうお兄さん?」

「なるわけねぇだろ!!」


 明良のやろうとしていたことは、三つの適当な要素を組み合わせて一つの物語を作ろうというもの。

 だが揃った三つの要素でなんとかなりそうかと言われても、お兄さんそれじゃなんとかできそうにないわ。

 だって子供の夢二つにとんでもないもんまじっちゃってんだもんな。それ混ぜたら俺もう小さな子供たちに顔向けできなくなるもんな。

 しかもお前、さりげなく最後の要素言おうとして恥ずかしがったよな? そんなエロに恥ずかしがるのはラノベの不器用ヒロインだけで充分なんだよ。

 くそ、ちょっと可愛いなと思ってしまったのが悔しい。こんなクソショタによぉ。


「やるんだとしたらそうだな。桃太郎の俺流アレンジって感じにするわ」

「そっか。いいんじゃないかな? 早くそれ読んでみたいよ」


 またこのガキ思ってもいないことを……。

 でもそう疑ってみても、素直なガキっていうのは案外悪くないもんだな。

 別に子供ならショタでもイケますとかそんなんじゃないですから親御さん方。日橋竹男は純粋な大学生ですよ。


「したらそうだな。犬と猿と雉を美少女に変えてみるとか、結構いいんじゃねぇかなそれ~」

「それだけじゃ狙った感が出過ぎて読者に飽きられるよお兄さん」

「ぐっ……」

「そこで僕ら純粋な、汚れない小学生の意見だよ」


 と、明良は自信満々に言うが……。


「おめぇ。獣王くんを見て汚れないって言い切れるのか?」

「……獣王。最近面白かったことなに?」

「え? 兄ちゃんがエr」

「獣王?」

「ひっ! 明良"ちゃん"睨まないでよぉ~」


 あ、こいつ今無理やり獣王黙らせたな。汚れを見せんと圧力で押し殺したな。

 まぁ俺も大人だ。そこは信じてやろうじゃないか。小学生の汚れなき心ってのをな。


「あったら。勇人、桃太郎を勇人風に改造してみて?」

「え? そうだなぁ~。仮面○イダー全員で鬼ボコボコにしようぜ~」


 勇人くんは本当に仮面○イダー好きなんだなぁ。

 なんでも仮面○イダーで解決だもんなぁ。アイデアとして使えたもんじゃねぇや。


「他人の芝生を出すわけにはいかねぇから。そうだな……主人公が桃太郎に変身する。それくらいならなんとか」

「そこに他の昔話の人物に変身できる人とか追加してみたら?」

「なるほど。日本昔話のクロスオーバーか。って結構面白そうだな」


 俺はこの時、流れるようにそう意見を交換しては、日本昔話のクロスオーバーを純粋に面白いなと思ってしまった。

 日本昔話なんて、今の世の中小さい子でさえ読まないものだと思っていた。

 だけどあえてそこに目をつけて、小さな意見を一つ一つ重ねていけば、次第にアイデアが浮かんでくる。

 色んな物語の人物が出てくるから、その物語にそった能力が出てきたり、そこからさらに本来土台としてある話の組み合わせ次第で広がる世界観。

 二次創作のように土台が存在するものの、現在でいう歴史物の美少女化のように、日本古来から伝わる伝統のアレンジは、やり方次第ではオリジナルと相違ない。

 夢小説にあるリスペクトの要素がオリジナルに反映されていき、そこに作者の伝えたい意図がおのずと組み込まれていく。

 ……ってやべぇ。いつも書いている小説よりなんか捗る。どんどん文章がワードにズラリズラリと打たさっていく。


「雛森! なんか冒頭だけで5000字は軽く超えたぞ!!」

「やるじゃんお兄さん。それで10000字で足りそう?」

「足りねぇ! もっと書ける気がする!!」

「ふふふ。よかったじゃんお兄さん」


 そう明良が俺にほほ笑みかけてくる。やべぇ明良マジ天使!! ショタだけど!!


「くそ。筆が止まった。なんか意見ないか雛森」

「乃亜。桃太郎が女の子と少し喧嘩しちゃったんだけどなんか解決策ないかな?」

「う~ん。結婚すればいいじゃん!!」

「それ採用だ!!」


 ここまでいくと、俺は小学生が言った奇天烈な意見すら、なんのためらいも無しに組み込んで行った。

 小学生はいい。なんせ俺たちみたいに捻くれた意見は一切言わねぇ。ただ頭に浮かんだことをためらいも無しに言ってくれる。

 まったく小学生は最高だぜ! ショタだけどな!!


「さてと敵が出てきた。そこでどうするよ雛森」

「獣王。怖い奴はどんなのがいい?」

「怖いのか~。父ちゃんと母ちゃんかな?」

「採用!!」


 俺はどうしてしまったのか。小学生の言葉一つ一つが天からアイデアが振ってきたとした思えなくなっていた。

 単純な子供の発想、日常の出来事。それらがオリジナリティを画策していく。

 気がつけば5時間。昼前から書いていたのだが時間が経つのすら忘れていた。

 そろそろ小学生は家に帰らなくてはならない時間だ。これ以上は大人として家に帰した方がいいだろう。


「お前ら。夜遅いと危険だから帰れ」

「は~い」


 うん、良い返事だ! 素直な良い子最高!!

 帰り際、俺は明良に素直に例を述べた。


「ありがとな雛森。お前に出会えてよかった」

「なんかお別れみたいだね。公園に行けばいつでも会えるじゃん」

「ふっ……そうだな。またなんかあったら、相談に乗ってくれ」

「いいよ。僕も素直な大人は好きだからさ」


 こうして、大学生と小学生が熱い握手を交わし別れる。

 あと数ページは、俺一人の力で書くべきだ。

 最後くらいは、俺のこだわりと感性で書く。

 ……いや。小さいころの俺を思い浮かべながら、その俺自身と向き合って書くさ。


 そして、最高の短編が完成した。

 気がつけば朝になってた。

 だがこれであのゴリラに一矢報いることができるのなら、俺の努力以上にお釣りがくらぁ。

 俺はそう野望を胸に抱きながら、眠気にストレートパンチを食らうかのようにベッドに倒れる。


 その結果、学校に遅刻したのは内緒なんだぜ。

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