何が幸せ?
練習作品です。
これらの練習作品は皆様の評価次第では連載するかもしれません。しいて言うならお気に入り件数か、評価点の合計で決めます。
私は燃え盛る城の中にいた。
今私がいるのは、この城の王の玉座のある場所だが、360度どこを見渡しても炎に包まれている。辺りには首の切り落とされた胴体が無数に転がっており、周囲の炎の塊からはタンパク質の燃える匂いが漂ってくる。
「……?」
それを嘲笑しつつ見ていると、足に何かがしがみついてきたので、ふと足元を見ると、地面には無駄に高価そうな服を着た男が倒れていた。
しがみついてきたところと息をしているところを見ると、まだ生きてはいるらしい。その男はかすれた声を発し懇願し始めた。
「わ、わしが悪かった!! だから命だけは……!!」
「……うるさい」
私はそんな男を一瞥すると、手に持った魔力の塊である槍で躊躇なく頭を切り落とした。首を落とされた胴体は、鮮血を辺りにまき散らしながら重力に惹かれて力なく床に崩れ落ちる。
私は、おもむろに胴体から斬り落としたその男の頭部を掴むと、先ほど殺した奴らの頭と同じように、未だ轟々と燃えている炎の中へと投げ込んだ。
男の頭部は見る見るうちに炭になっていき、数秒後には、骨髄が燃えてスカスカになった骨と肉であったであろう炭が残っているだけだった。
私はそれを確認すると、背中に魔力を集める。すると、私の背中から光で出来た天使のような翼が現れた。
それを確認した私がおもむろに床を蹴ると、身体が重力に逆らうようにふわりと浮かぶ。そして誰に言うわけでもなく、
「これでいいんです。自業自得ですしね」
と呟くと、燃える城を後にした。
…………自分のしたことを胸の奥にとどめながら。
日本では4月に当たる、オリジアの月も終わりに差し掛かったある日のこと。
今日は雲一つない澄んだ青空が広がる晴天です。
ふと顔をあげれば、雲一つない青空から気持ちの良い日差しが降り注ぎ、それに加えて心地の良い風が吹くおかげで、庭にずらりと並んだ数十人分の洗濯物がよく乾きます。
あ、申し遅れました。私の名前は……そうですねー……クラン、とでもお呼びください。本名はもっと長いですし、何というか、名乗りにくいですから。
うん、とりあえず洗濯物は全員分干し終えましたから、次は時間的に昼食の準備ですかね?。洗濯物だけでも数十人分あるので、昼食や夕飯などの料理の支度が少々大変ですが、自ら望んでこうなった以上、投げ出すわけにもいきません。
ああ、説明がまだでしたね。私は小さな村で孤児院を経営しています。
事の始まりは2年ほど前のことでした。2年ほど前、幼馴染や友人が、とある理由で故郷の村を旅立ったので、私も旅しようかなぁ、ということでこの世界、メルティアを自由気ままに放浪していた時に、彼らが出かけた理由でもある、とある理由によって孤児となった命に出会いました。その後、行く先々で拾った命を保護していくうちに、いつの間にか26人の大所帯になっていました。
その中で男の子が15人の、女の子が11人という状況です。幸いにも喧嘩することもなく、家事の手伝いもしてくれるので、私としてはかなり助かっています。
ですが、私としてはもう少し自分に頼ってもらいたいような子もいます。
例えば、この中で1番年長のダリア君とかね。
彼はある村の廃墟で、魔物に襲われているところを助けたのだけれど、その時に自分を逃がしてくれた両親が殺されてしまったようで、その時の恨みが強いのか、魔物を見ると突っ込んで行ってしまうんですよ。
…………まぁ、ダリア君のおかげで食料には困らないんだけどね。それに加えて、偶にスライムとかミニゴーレムみたいな、魔法生命体も狩ってきてくれるからお小遣い稼ぎになりますし。
今、そういった事情は置いといて、とりあえず、今は昼食よりも先に家庭菜園の手入れですかね。しっかり手入れをしないといけません。だって毎日使う食材であるお野菜をいちいち買いに行っていたら人数の関係上、お金がいくらあっても足りませんから。
さて、と。どうやって広い菜園内の全ての野菜に水をやるかだけど、う~ん……。洗濯物を干してしまったから、雨を降らせたら後が怖いし、何より子供たちが外で遊べなくなる。
なら、これで……、
「アクアスライム」
私が、誰に言うわけでもなくそう呟くと、私の手のひらに直径1メートルほどの水球が現れる。私がその水球を地面に投げると、その水球は魔法生命体のスライムようにうねうねと動き出し、野菜と野菜の間を這うようにして動き回っていく。アクアスライムが通った後の土は程よく濡れ、葉には水滴一つ付いていない。
これがこの魔法のいいところです。植物は葉に水を当てると、クチクラ層を持たない植物、特に葉をたべる野菜は枯れてしまうことがあるので、指示したところにしか水を撒かず、葉についた余計な水分をふき取ってくれるこの魔法はとても助かります。
実はこの魔法、実際は敵を捕らえるために使うものらしいですが、こういった有効活用も悪くないと思います。
まぁ私自身、『魔法=攻撃手段』という認識を持つ、この世界の人ではないからこその発想なんでしょうけど。
ええ、最初に『日本では』といったように、私は『転生』か『異世界転移』かよく分かりませんが、目が覚めたら、日本から記憶を持ったままこちらの体になっていました。
子供、というより赤ん坊になっていたので、おそらくは『転生』なんでしょうけど。
もとは大学生だったんですよ? もっとも、さまざまな資格を取るのが趣味で、そちらでも人からは変人と呼ばれたりしていましたが。
その趣味で取った資格も結構役に立ってます。幸い、このメルティアは、動物の代わりに魔物がいること以外は普通の世界で、野菜とかは日本にある食べ物と酷似していました。なので、調理師や管理栄養士とかの資格は役に立ちました。
でも役に立っていないものもあります。それは動物分類検定といった、地球の生物に関わることです。この世界の生物は、地球にいる生物に似ているものでも、それらはすべて魔物ですから。
そんなわけで、今まで夢物語だと思っていた魔法を覚えて、体術・剣術を教わってと、元いた世界では今までできなかったことを学ぶために努力していたのですが、魔法を教わっているとき、大人は『魔法=攻撃手段』だと教えていました。
まあ、それに対して、魔法のない世界出身の私は『魔法=便利な手段』と、とらえていたので、攻撃用の魔法を勝手に改良して使ってました。
…………その我流の改良魔法も、使い方次第では元の魔法よりも断然に殺傷力が強い訳ですが。
例えば、魔力をエネルギー状にして、槍状に凝縮させた『ロンギヌス』とかね。あれは投擲して敵を殲滅したり、振り回して斬り刻んだりと、何かと優秀な魔法でした。
…………まぁ、『ロンギヌス』と、それに加えてもう1つの魔法は、魔法行使の魔力燃費は予想外にも良いんだけど、その圧倒的な威力的な意味で、たぶんもう使うことはないだろうけど。
…………あれの所為で恥ずかしい2つ名がついてしまいましたし。
まぁ、『ロンギヌス』とかに変わって、燃費も良くて、威力も丁度良い『グングニル』とか、新魔法も出来ましたし、良しとしましょう。
まぁ、その後にいろいろあって、何故か男女の幼馴染と友人は、今ではこの世界唯一の大国の信託で、何故か勇者に選ばれて『自称魔王』を倒す旅に出かけたので、暇になった私も旅をして、今は孤児院経営中。
実際のところ、旅なんて2年くらいしかやってない。本音を言うと、もう少しくらいはこの魔法世界を旅して回りたかったんです。
かといって、この子たちを置いていくわけにもいかないし、何よりまた旅に出たところで、目的は観光か魔物討伐くらいになるので、大して後悔しているわけじゃないですが。
彼らが討伐の旅に出たのは、およそ3年前なので、ずいぶんと長い旅だと思います。まだあんな『自称魔王』を倒していないんでしょうかね?
私としては、お偉いさんに言い様に騙されている彼らには負けてほしいですが。でも魔物は厄介ですので、数を減らしてくれると助かりますが。
もっとも、この孤児院の周りは私が張った、少し特殊な結界があるので、魔物は寄ってきませんし、魔族も近寄れませんから、こちらに被害は無いんですけど。
本当にこういった魔法研究をしていてよかったです。ちなみに本来のこの魔法の使い方はフィールドバリアみたいなものらしいですよ?。少し改良して、本来の使い方である、『攻撃を直前に防御する』よりも、『攻撃を事前に防御する』っていう仕様に変えましたけど。
生まれ変わっても、結局改造魔というか、変人っぷりですね。でも、この世界はそうでもしないと生き残れない気がするし、嫌な未来の運命が見えなくもない。
まぁ、とりあえず何が言いたいかというと、この孤児院のある場所は、よほどのイレギュラー、『勇者』や少し前に来た『魔王』でも来ない限りは平穏であるということだね。
さて、結構時間つぶしも出来ましたし、そろそろちょうどいい時間になったので、そろそろ孤児院の昼食を作りに――――――、
「ん?」
――――――行こうとしたらおかしな雰囲気を感じました。これはっと……、
「なんか知りませんが、人間と亜人の複合パーティですね」
うん、亜人が混ざっていることはまず間違いないね。うちの孤児にも亜人はいっぱいいるし。それよりもこの気配……何処かで?
「とりあえず、行ってみますか……。場合によっては……」
私は、そう呟くと歩き出しました。
……起こり得る最悪のケースを想定しながら。
「ここは……?」
「結界の中のようだが……」
「大丈夫よ。少なくとも『魔王』が張った物じゃないのは確かね。魔素が無いもの」
「ですが、このような完全封鎖結界はハイエルフの私ですら見たこともないですよ……!」
「ここにいるのは、それほどの者なのか」
私が気配を感じ取った場所へ行くと、近づくにつれて、5人の男女の声が結界をとして聞こえてきました。
う~ん……。この気配、本当に何処かで? とりあえず先制しとくかな?。
『だれ?』
「「「「「!?」」」」」
私が結界を通して伝えた声に、警戒姿勢を取る5人組。私はさらに問いかけます。
『だから誰だって聞いてるんですが?』
「だったら、先にそちらから姿を見せろ!!」
私がそう問いかけると、5人の中で、戦闘大好き脳筋みたいな話し方をしていた人の声が聞こえてきました。
なんかやけに偉そうな話し方ですねー。とりあえず先に言っておきますか。
『少なくとも、無断で私の結界内に入ってきたのはそっちです。なのに、なんで私が姿を見せないといけないの?』
そう返してみましょう。さて、どんな反応をしますかね?。
「なんだと!?」
「ダイン、いい加減にしなさい。 ……連れがすみません。実は道に迷ってしまいまして」
予想通り怒鳴り返してきた男を、柔らかい雰囲気の声が収めました。この気配、この声……やっぱりどこかで?
『帰るなら目をつぶったまま後ろに戻れば出れるわ。さっさと出て行って』
まぁ、今はどうでもいいです。出来ればこのまま帰ってくれると嬉しいんですけど。
「待ってください!!」
私がそういうと、自称ハイエルフ(実際の姿は見ていないので)の女の人が呼び止めてきた。
『何か用?』
「この結界はなんです? 明らかに古代魔法、しかも神威魔法に近いほどの技術。……あなたは一体何者ですか?」
結構深いところまで突っ込んできますね、この自称ハイエルフは。
……う~ん、やっぱり姿見せた方が早いかなぁ?
「『私は……』クランと申します」
「「「「「なっ!?」」」」」
いきなり現れた私に、5人組は驚いたような表情を浮かべた。
それはそうですよね。いきなり目の前に現れたらびっくりしますよ。
「「「クラールラント!?」」」
「ん?」
いきなり本名を呼ばれたので、俯きがちだった顔を上げて、しっかりと5人の顔を見ると、幼馴染×2と、友人がこちらを指差して呆然としていました。
男女の幼馴染が、マリーンズ兄妹のハイルさんとミランさん。種族は人族です。
友人というのはミルアさんです。種族はエルフだったかな?
もう一人の獣人の男の方はダインと呼ばれてましたね。最後の1人の自称ハイエルフのお姉さんはどちら様でしょうね?
「なんですか。どこかで感じた気配だと思ったらあなたたち3人でしたか」
私がつまらなそうにそう返すと、3人が詰め寄ってくる。
「何でこんなとこにいるんだ!」
「そうだよー!」
「村に居なさいって言ったのに」
すごい言い様ですね?。そこまで言うことじゃないと思いますけど。
「……青髪・碧眼・低身長……? !! おい、お前」
「なんでしょうか?」
先ほどダインと呼ばれていた獣人の人が何かに気付いたかのような表情をすると、私に声をかけてきました。
…………何か嫌な予感がしますけど。
「まさかお前は……『告死天使』か?」
「…………これはまた懐かしいフレーズなことで」
う~ん、まさかまたこの恥ずかしい2つ名を呼ばれるとはね。最後に呼ばれたのは1年ほど前だったかな?
「「「『告死天使』?」」」
ダインさんの言った言葉の意味が分からないのか、首を傾げる故郷3人組。どうやら3人は知らないようですね。
「聞いた事があります。魔力で出来た翼を纏い、魔力が凝縮された槍ですべてを穿ち、斬り裂き、全ての対峙したものに絶対の恐怖を与えし者。……それが『告死天使』と呼ばれる者です。なんでも、『魔王』ですらその者を恐れ、戦いを挑まなかったようです。…………それと噂では国を1つ滅ぼしているとか」
最初にそう言って、私の恥ずかしい2つ名の説明をしてくれるハイエルフの神官様。
というより、私の2つ名ってそんな有名だったんですね。
「そんなものは1年も前の話ですよ。今の私は……」
「おかあさーん!!」
私がそう返そうとしたときに、結界の奥から、保護している孤児の1人のリィンちゃんの声が聞こえてきました。時間を目算するともう昼時でした。
これはいけませんね。
「「「お母さん!?」」」
何か故郷3人組が驚いていますが、気にしてはいられません。
「続きは奥で話しましょうか。どうぞついてきてください」
そう言って、リィンちゃんの手を取ると、5人が何かを言いたそうにしながらも、黙ってついて来るのをおかしく思いつつ孤児院の方へ歩き出す。
さて、これからどう説明するかな?
そんなわけで、やってきました孤児院前。うん、改めて見てみると、意外に大きな建物ですよね。まぁ、あの時はお金も無駄にあったし、人数的にもこれからのこと的にも大きい方がいいかなぁ? という考えで作ったから、大きくないと駄目なんだけど。
まぁ、それはともかく、
「ようこそ、私の経営する孤児院へ」
「えっと……少しよろしいでしょうか?」
私は後ろを振り返りながらそう切り出す。すると、意外そうな顔をしていたハイエルフの神官様が遠慮がちに訪ねてきました。
なんでしょうかね?
「なんです?」
「何故あなたほどの方がこんな結界の中で孤児院なんてものをやっていらっしゃるんでしょうか? あなたほどの腕なら……」
「『魔王』を倒すのも簡単だろうって?」
自称ハイエルフの神官様の言いたいことを察知して、うんざりした感じで私がそう返すと、神官様はコクリ、と頷きました。私の言葉を聞いて、繋いだ右手から振動が伝わってきます。そちらを見なくとも、リィンちゃんがその小さな体を震わせているのが分かります。
…………この話は、このような小さな子の前で話すことではないのに。しかも、それが原因で親を亡くしている子供の前で、なんてね。
「……リィンちゃん。私は少しこの人たちのお話しているから、先にご飯食べててくれる?。アストちゃんに頼めば作ってくれると思うから」
「う、うん。わかった」
私のトーンを落とした声に恐怖のようなものを感じたのか、リィンちゃんは体をビクッと震わしながらも何とか頷くと、孤児院の中へ入っていきます。
彼女の足音が遠くなるのを確認してから5人組に振り向くと、少なからず重い空気が流れていました。
「…………あの子は魔族と人族の対立で親を失ったんです」
「……配慮が足りなくてすまないな。アリアは神官なんだが、少し配慮に欠けるお嬢様なんだ」
私がそういうと、ハイエルフの神官様のアリアさんではなく、ハイルさんが頭を下げてきました。少しおかしい気がしますが、まぁいいでしょう。
「かまいませんよ。……ですが今ので、何で私が孤児院をやっているかもわかったでしょう?」
「まぁ、大体はね」
「「同じく」」
幼馴染2人と友人は理解してくれたようですが、残り2人はいまだ納得がいっていないようで、不満気な表情をしていますね。
「それとこれとは話が別だろう」
「そうですよ! なぜそれほどの力を持ちながら『魔王』と戦わないのですか!?」
「どうでも良いからですよ」
「「なっ!?」」
いきなり詰め寄ってきた2人に、私がうんざりしたようにそう返すと、2人は顔を歪ませました。2人の背後のいた3人も顔を歪めているのが見えました。
そんなに驚くところですかね?
「なんだそれは!?」
「そうです! 人が……多くの人が亡くなっているんですよ!?」
なんだ、本当にそんなことですか。無知って怖いというか、何というかこう、残酷だね。
「…………それがヒトの自業自得でも、ですか?」
「「「「「!?」」」」」
私がぼそりと呟いたことに反応する5人。
なんですか、本当に知らされていなかったようですね。ちなみに私の言う『ヒト』は、メルティアに存在する亜人と人族など、全種族を表したものですよ。
「今回のヒトと魔族の争いは、魔境にあると言われる、多大な資源が欲しいヒトが始めたこと。ならばヒトに荷担する方もおかしいし、魔族と戦う方もおかしいでしょう?」
今回の件は、実際問題ヒトが悪いんですよね。確かに魔境を旅した時に、多くの鉱床があったし、ヒトの領土ではおもに乱獲などですっかり珍しくなった薬草などが数多く自生していた記憶がある。1部のヒトからすれば、それらは喉から手の出るほど欲しい物であろう。
「…………それは本当なのか?」
ダインさんが疑いのまなざしでそう尋ねてくる。ふと周りを見てみると、残りの人たちも、私の話した真実に驚きながらも、こちらに耳を傾けているのが分かります。
「ええ。私があなたが言う、『告死天使』と呼ばれていた時に、直接『魔王』や上級魔族、そして、ヒトに初めに攻められた魔境の村の魔族から聞いた話だから、まず間違いは無い筈ですよ? まぁ、それに加えて、ある国のお偉いさんとかにね? こちらは力ずくだったけど」
魔族や『魔王』に比べて、あの人たちは本当に悪趣味だったから、腹が立って暴れてしまったんですよねー。ヒトも魔族も玩具としか見ていないうえに、魔法で洗脳された子供たちもたくさん出てきましたし。本当に思い出すだけでも腹が立ちますね。
…………もっとも、その人たちはもう、この世にはいませんが。
「力ずくって……まさか!?」
「…………ええ、『死を告げし王国』を引き起こしたのは私です」
アリアさんは心当たりがあるようで何かに気付くと、私の方を見てきたのでそう答えました。
――――――『死を告げし王国』。1年前に私が起こした、私1人と1つの大国の戦争です。
まぁあの時は、国1つを私一人で沈めることになるとは思わなかったけれど。あの戦いが、人生の最初で最後に、ヒトに向かって極大殲滅魔法を使った最後の戦いです。
あ、言い訳に聞こえるかもしれないと思いますが、殺したのは上級階級でありながら、実際に悪人行為をしていた者及び黙認していた者たちだけですよ? 逆に虐げられてきた人たちや善良な人達からは称えられましたし。
「なんで……」
「?」
「何でおれたちに相談しなかったんだ!!」
私の告白に、俯いて肩を震わせていたハイルさんが怒鳴り声をあげました。その怒鳴り声を受けて、アリアさんとダインさんの目が点になっています。
まぁ、今まで優しげに話していた人が怒りだしたらびっくりしますよね。この人、何故か私以外には怒鳴らないし。
「いない相手にどうやって相談するんですか……。それに、あの人たちがやっていたことはさすがに許せなかったし、あなたがいたら確実に止めていたから」
「クラン……」
「だから、良いんです。たとえ私がどんなに血をかぶっても、泥をかぶっても誰かが笑っていられるのなら。どんなに人が死のうとも、善良な人が生きていけるのなら。だから……」
「「「「「!?」」」」」
私はそう言いかけて、右手にあの広範囲殲滅兵器ではなく、『グングニル』を具現化させると、空間を捻じ曲げ、5人を閉じ込めると、何かを感じ取って武器を構えた5人組に自分の思う精いっぱいの笑顔を湛えてこう告げる。
「ここであなたたちは終わりにしてほしいな?」
この行動がエゴだとしても、私は私でいたいから。
続きは…………いつか。
この作品を含む短編は全て思いつきで書いたものですが、感想をもらえればうれしいです。
時間があれば他の作品を読んでいただければ、より嬉しいです。
この文が他の作品の文と同じなのは、何度も書くのが面倒だからです。