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執事を書くため執事カフェへ  作者: 紡里


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2/2

お嬢様体験

 予約の十分前になった。

 ハキハキとした執事が、待合スペースに案内してくれる。


 時間になり、廊下を案内されたその先に……執事が二名でお出迎えだ。

 え、すごい。二人もいる。

 ハウススチュワードとフットマンということで、自己紹介された。


 ハウススチュワードは物腰は柔らかいけれど、貫禄がある。

 年齢を重ねないと出せない雰囲気だ。

 たとえるなら、看護師長のような、経験を重ねた頼もしさを感じた。若い看護師さんもプロとして頼もしいんだけど、経験の差は滲み出る。



 その場でハウススチュワードにコートを預けた。

 海外のカフェでチップを渡してクロークに預ける、あれみたい。

 座席にコートを持ち込まないだけで、スマートさが爆上がりでございます。




 では、ここから本格的に、お嬢様体験のスタートです。


 フットマンが荷物を持ってくれます。

 手ぶらでカフェの中を歩くのは、気恥ずかしく違和感あり。普段は自分で荷物を運びますもので……。



 大きなシャンデリアが見えました。

 ちょうど、その下の席に案内されます。


 席に座るときは椅子を引かれ、それに合わせて座ります。

 よくある、二人いて一人だけが引いてもらうご案内とは違いました。

 近くからすっと別の執事が来て、二人とも優雅に座ります。


 その執事くんに対して「周りを見ながら判断して動けて偉いぞ」と、一瞬、社会人目線が出そうになりました。

 しっかり研修を受けて、質の高いサービスを提供してくれる方々。そこで作られる空間は、とても気持ちがいいものです。


 背後から英語が聞こえます。海外からもお客様……いえ、お嬢様がご帰宅されているようです。


 友達と二人でシャンデリアを見上げ、どちらからともなく出てきた言葉が「掃除が大変そう」でした。

 何かの漫画で、メイドたちが一日がかりでシャンデリアを掃除するエピソードがありました。


 ――駄目ですね。もう、お嬢様じゃなくて使用人の視点です。



 テーブルは、それほど大きくもないですが、ゆとりのあるサイズ。お皿やティーカップ、ポットなどを置くときに、隙間を探して置く必要はありません。

 ということは、友達としゃべるときに小声では届かないのです。


 執事たちが優雅に動く空間では、自然と背筋が伸びて、テーブルに肘をついてだらけた姿などできません。

 話題も「人に聞かれてもいいもの」を選んでしまいます。


 緊張するというか……意識してしまって、「自宅にいるリラックス」感には、ほど遠くなりました。



「初めてのご帰宅ですか? ふふ、日本語としておかしいかもしれませんが」

 とフットマンに微笑まれました。


 気の効いた反応ができなくて、ごめんなさいね。

 普通に「初回です」と答えました。

「まあ、何を言うの、セバスチャン」とでも言えばよかったでしょうか。



 アフタヌーンティーの三段トレーが運ばれてきました。

 取り皿はありません。

 何段目から食べるか訊かれて、その段のお皿ごと目の前に置いてくれるスタイルです。


 紅茶はポットから美しい所作で注がれます。

 私はラプサンスーチョンがメインのブレンドティーを頼んだので、燻製のスモーキーな香りが広がりました。

 ポットはティーコジーをかけて保温。


 ティーカップの下のソーサーは、縁が高い形です。

 紅茶を冷ますためにソーサーに入れて飲むという……あまり見栄えの良くないアレができますね。どれだけ猫舌なのかと思いますが、アンティークの本のティーカップの説明に出てきました。



 アフタヌーンティーのスタンドからお皿を取るのも、紅茶のおかわりを注ぐのもフットマンがやってくれます。

 常に気を配って先回りしてくれるので、テーブルの上のベルで呼ぶ必要がありませんでした。



 あの、あれですわ。

 悪役が「使用人は家具」として人間扱いしないという設定がありますが、その境地にならないと気を緩められない気がしました。


 ピシッと隙のない執事たちが、至るところにいるわけです。

 椅子の背もたれに背中を付けてはいけません――というマナー本の知識が頭をよぎります。



 お手洗いに行くときも、エスコートですよ。

 フットマンは案内した後にさっと立ち去り、その場で待ったりはしません。安心ですね。

 席に戻るときもエスコートするので赤い絨毯の上で待つようにと、言われました。


 私がお手洗いを出るタイミングで、他のお嬢様が案内されてきました。私はその執事にエスコートされて、優雅に席に戻ります。



 予想以上に煌びやかで、しっかり執事教育された世界でした。

 衣装を着て少し丁寧な接客をするだけかと思っていましたが、立ち姿も所作も、楽しませようという心もプロフェッショナルでした。


 問題は、わたくしの方。

 テーマパークでも照れてしまい、ノリが悪いタイプだったのですわ。そういえば。

 当然、帰るときに「いってきます」とは言えず。


 何一つ、執事カフェらしい振る舞いをできずに終わりました。

 完全敗北です。



 ですが、ちゃんと小説に使えそうなネタはゲットしてきましたよ。

 お楽しみに。


2026年3月5日 一晩経って不要だと感じた部分を削除

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