【第一章 第五話 からかい妖精と現実か夢か】
誠人は村の小道で立ち止まり、いつになく真剣な表情で肩の上の妖精を見た。
「……で、君は何者なんだ(n回目)?と質問をぶつける 」
妖精はくすくす笑った。
「ふふ、そんなに何回も真面目に聞かなくてもいいでしょ、マコト。
だって、あなた、夢中で小説読んでいるから、こうなっちゃったんだから」
「え? な、何言ってるんだ……?」
誠人は思わず手を頭にやる。
肩の上の小さな存在が、まるでからかうかのように軽く跳ねて光を散らす。
――ほんの少し、周囲の風景がぼやけたように見えた気がした。
青空も、村の畑も、子どもたちの遊ぶ声も、すべてが少しだけ非現実的で、まるで夢の中のようだった。
「ねぇねぇ、マコト、どうするの?
ここでぼんやりしてるだけだと、みんなに怪しまれちゃうよ?」
妖精は肩からひらりと舞い上がり、誠人の耳元でからかうように囁いた。
「怪しまれるって……俺、まだここで何をすればいいかも分からないんだぞ」
誠人は少し語気を強くする。
妖精は手を小さく振り、笑いながら光をくるくる回す。
「大丈夫、大丈夫。焦らなくていいの。
でもね、あなたが夢だと思ってるなら、それはそれで楽しいんだけどね」
「……はぁ?」
誠人は思わず空を見上げる。
本当に夢なのか現実なのか、判別がつかない。
肩の上の妖精の目は、あきらかに悪戯っぽく輝いているのに、どこか本物の温かさもある。
――こんな状況で、どうやって生活すればいいんだ……。
けれど、妙に心が落ち着いている自分もいた。
妖精の小さな光と笑顔が、まるで「安心して」と囁いているように感じるからだ。
「よし……じゃあ、まずは村に慣れるところからだな」
誠人は決心して、小道を歩き出す。
妖精はぴょんと肩に戻り、軽やかに「ふふ、楽しみだね」と囁いた。
――こうして、夢か現実かわからないまま、誠人の異世界生活は進んでいく。




