【第一章 第三話 村人との接触】
誠人は妖精の小さな光に導かれながら、村の道をゆっくりと歩き始めた。
石畳の道では、子どもたちが遊んでいる。羊や鶏がのんびりと歩き回る。
空気は乾いていて、どこか懐かしいような、心が落ち着く匂いがする。
村人は、遠目に彼と妖精の姿を見つけると、いぶかしげに顔を覗かせた。
――誠人も警戒心は消えない。
しかし妖精はぴょん、と彼の肩に乗って、ちょこんと光を散らしながら村人を見る。
どうやら「怖くないよ」と伝えているようだ。
一歩、また一歩と、誠人は道を進む。
子どもたちは一瞬立ち止まり、興味深そうにこちらを見ている。
大人たちは口元を固く閉じ、作業の手を止めて遠くから観察しているだけだった。
「……お、恐る恐るって感じだな」
小声で誠人はつぶやく。
妖精は軽く「ぴょん」と跳ね、彼の耳元で小さく囁くように笑った。
名前はまだ分からないが、その声には不思議と安心感があった。
やがて、一人の老婆が、杖をつきながらこちらにゆっくりと近づいてきた。
目は鋭いが、表情には優しさがにじんでいる。
「……あんた、どこから来たのかね?」
老婆の声は低く、ゆっくりとした口調。
言葉は完全には分からないが、意味はなんとなく伝わる。
――問いかけているのだな、と誠人は理解する。
誠人は片手を上げて、ぎこちなく挨拶した。
妖精も肩で小さく光を揺らし、彼の緊張を和らげるように舞った。
老婆は少し首を傾げ、再び杖をつきながら笑った。
「……ふむ。まあ、ここは田舎だ。のんびりしていくといい」
誠人は胸の奥でほっと息をつく。
どうやら敵対はないらしい。
村は穏やかで、時間の流れもゆったりしている。
――まだ言葉も世界も完全には分からない。
妖精は肩で光を散らし、くるくると跳ね回った。
まるで、「これからの冒険、楽しみだね」と言っているかのように。




