【第一章 第二話 言葉も通じない異世界】
「……あれ? 話しかけても……通じない?」
誠人は目の前の青年たちに手を振ってみる。
だが、返ってくるのは困惑した表情と、聞き慣れない言葉の羅列だった。
――まったく理解できない。
「うわあ……マジで異世界すぎる……」
頭を抱える誠人の肩に、ひらりと小さな影が降りた。
例の妖精――名前はまだ分からない――が、彼の腕や肩に手をかざし、指先で空中に小さな光を描く。
「ちょっと……何してるの?」
誠人が声をかけても、妖精は笑うだけで、くるくる回りながら何かを調整している様子。
――気がつくと、周囲の村人や青年たちの目が少しだけ柔らかくなった。
耳に入る言葉の音も、なんとなく意味がぼんやり理解できるようになっていた。
「……あ、もしかして、この子……通訳してくれてる?」
妖精はにっこり笑って、誠人の肩で小さくくるくる回る。
手足の動き、ちょっとした光の加減で、魔法のように世界を整えているようだった。
しかし、完全には理解できない。
単語や身振りで何となく意図は分かる――そんな微妙な段階。
「……まずは、この村の言葉を少しずつ覚えろってことか?」
誠人は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。
妖精は嬉しそうに光を散らし、くるくると舞い上がった。
まるで、「そう、それでいいの!」と言っているかのようだった。
村の青年たちは依然として警戒しているが、誠人の表情や手振り、妖精の小さな魔法に少しずつ安心した様子を見せる。
――戸惑いながら、異世界に一歩を踏み出す。
そして、誠人は思った。
「……この異世界、もうしばらく見てみるか……妖精さん、頼むよ」
妖精はその言葉に、くるりと空中で回転して小さく光を撒き散らした。
どうやら、彼女もこの世界で誠人と冒険する気満々らしい。




