【第三章 第二話 霊光の顕現】
街道を吹く風が冷たく頬を打つ。
誠人は歩を止め、目の前の森を見渡した。
緑と影が入り混じる中、低い唸り声が風に混ざる。
「……奴らか」
リルが小さく身をかがめ、耳を澄ませる。
『ブワッ』、草の揺れる音と共に、森の奥から黒い影が飛び出してくる。
群れだ。
オオカミが数十匹、赤い瞳を光らせ、牙を剥きながらこちらに迫ってきた。
誠人は自然と手に力を集める。
何か、いつもとは違う何かが頭に浮かんでくる。
誠人は目を閉じる。
思考が巡り心に浮かんだのはゲームで見た風景、好きな小説に描かれた魔法のイメージ。
そこから光がこぼれ落ちる感覚が体を包む。
「リル、やつらは……無理に倒す必要はない、まずは押さえ込む」
「分かったわ、誠人」
リルは空中へ羽ばたき軌跡を描く。
誠人は息を整え、掌から光の筋を紡ぐ。
思わず口をついて出た言葉は不思議な響きを持つ魔法の呪文となる。
「束ねよ光、繋げよ輝き――形を得て敵を縛れ!≪光の鎖≫!!」
「キャイーーーーーンッ!」手から放たれた光は、オオカミの群れを縦横無尽に駆け回り、次々と倒していく。
オオカミも防ぎ切れない力に圧倒され、次々と力尽きる。
だが数はまだ多い。
誠人は視界の端で、群れの影がまだ森の奥に潜んでいることを感じ取った。
「……まだいる」
「ええ、油断は禁物よ」
リルが声を潜め、目を光らせる。
今度は誠人は手を広げる。
手から光が溢れ出し、オオカミたちに向かっていく。
「捕らえよ光、拡がり囲め――形を得て敵を縛れ!≪光の呪縛≫!!」
『シュンッ』『ビリビリッ』、鎖状の光がオオカミを絡め取り、逃げ場を封じる。
「おお……!」リルの小さな体が空中で震えた。
これまで見たこともない光の力の形に、驚きと興奮が入り混じる。
オオカミたちは鎖に絡め取られ、逃げることも反撃することもできない。
誠人は軽く手を振るだけで、魔力の奔流が森の中に満ち、残る敵を一掃した。
光が散ると、森には再び静寂が戻った。
誠人は深呼吸をしながら、手のひらに残る温かい光の感触を確かめる。
転生後の力と前世の知識、そして現実世界で培った空想的な発想が融合し、新しい魔法形態を自然に生み出したのだ。
「……俺、やっぱり想像以上に強くなってる」
「ええ、前世の力と今回の力が混ざったことで、単純な魔法じゃ表現できない力が出てるわ」リルは小さく拍手をし、翼を震わせる。
誠人は肩をすくめ、軽く笑った。
「でも、これもまだ序章に過ぎないな。町に着くまでに、この力の可能性を全部試すつもりだ」
リルは頷き、草原の上を小さく旋回する。
「ええ、これからもっと面白いことになるわ。探索も戦闘も、色々試してみましょう」
二人は再び歩き出す。
光と呪文のような言葉が自然に紡がれる戦闘の感覚は、誠人の中で新たな領域を切り開きつつあった。
森を抜け、丘を越え、小川を渡る度に、オオカミや小型の魔物たちが立ちはだかる。
しかし、どれも誠人の力の前では単なる訓練台に過ぎない。
「この感覚……前世の力を超えているな」
「ええ、そして転生後の蓄積された力も加わったことで、全く新しい戦闘スタイルが生まれたわ」
丘の上から見下ろす村や町の輪郭。
まだ遠いが、目的地は確かに存在する。誠人は拳を握り、微かに笑った。
「さあ、町までの道中も油断せずに進もう」
リルも小さく跳ねながら、光の粒子を背中に散らす。
「ええ、これからが本当の冒険の始まりね」
草原、森、丘、川――様々な地形を経て、誠人とリルの旅は続く。
光と力が交錯する中、新しい魔法形態の可能性が次々と誕生していく。
その全てが、後の大事件への布石となるのだった。




