【第三章 第一話 蒼天の旅路と魔力の融合】
今回より第三章に突入です。
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評価や感想を頂けたら尚うれしい今日この頃です。
m(_ _"m)作者
誠人は草原を歩きながら、目の前の地形をざっと確認した。
丘が連なり、ところどころに小さな森や岩場が見える。
風は冷たく、空気は澄んでいるが、どこか張りつめた緊張感も漂っていた。
視界の隅では野草が揺れ、遠くの丘の輪郭は夕日に赤く染まっている。
「リル、実際この世界って前世からどれくらい経ってるんだ?」
誠人は素直に疑問を口にした。
あの日の英雄としての自分の姿が、まるで昨日のことのように思い出される。
しかし、現実にはこの世界では数十年、もしかするとそれ以上経過しているかもしれない。
リルは肩の上で、少し考えるように目を細めた。
「正確にはわからないわ。あの村の周りだけでは情報が乏しくて……。けれど、少なくともかなりの年月が経過しているのは確かね」
「かなりって……?」
「数十年?、それ以上かもしれない」
誠人は唇を噛む。
自分の感覚では昨日までのことのように思える前世の記憶が、今の世界ではすでに遠い過去になっているのかもしれない。
「つまり、魔王軍の現状もまだ把握できないってことか」
リルは頷く。
「そう。だから、無難なのは大きな街を目指すことよ。そこに行けば情報も得られるし、必要なら物資も揃えられるわ」
誠人は遠くの丘陵を見つめる。
村から少し離れるだけで未知の地形が続く。
危険も多い。しかし、力の制御を学ぶには挑戦の場が必要だと直感した。
「分かった……街までの道中、色々な場所を探索しながら進もう。修行も兼ねてな」
リルは微笑み、誠人の肩でクルクルと舞った。
丘を越え、小川沿いを進む。
前世の力と転生後に蓄えた力が、体内で微かにざわめき、草木や小石に触れるだけで微細な魔力の波動を感じ取れる。
「……やっぱり、俺の力、かなり増えてるな」
「ええ、前世の力と今回の転生の力が融合しているわ。純粋に、膨大な魔力が手元にあるの」
誠人は草を撫でるように魔力を流すと、葉や小枝が波打つように揺れ、空気が微かに震えた。
力の増幅と制御の安定は、前世で培った技術と転生後の蓄積が合わさった結果だった。
森に差し掛かると、誠人は意識を研ぎ澄ませる。
微かな気配の変化や風の揺らぎを感じ取り、森の奥から何かが近づくのを察知した。
「……雑魚の下級魔物だ。ここで実戦形式の訓練になるな」
リルは杖を握り直し、指示を出す。
「左側を抑えて! 誠人、真ん中から一掃して」
誠人は手のひらに魔力を集中させる。
風が巻き、草木がざわめき、指先から放たれた光が魔物たちを包み込む。
魔物たちは一瞬でひるみ、続けざまに制圧される。
全力でも力の加減をすれば雑魚敵は問題なく処理できることを確認した誠人は、微笑みながらも油断せず周囲を警戒する。
戦いを終えた二人は、点在する祠や小さな遺跡を巡り、前世の痕跡を確認しながら進む。
朽ちた鳥居の奥には光る魔法陣や古びた武器の残滓があり、誠人は手をかざして微かに反応する魔力を追った。記憶と現実が交錯し、胸に熱い感覚が込み上げる。
「ここ……覚えてる……気がする」
「前世の痕跡ね。魔法陣や武具の残滓が残っているわ」
リルは微笑み、誠人の横に立つ。
その眼差しには、確かな信頼と期待が混ざっていた。
魔法陣の前で、誠人は微かに光を帯びる剣を手に取り、その感触を確かめる。
手に伝わる振動は、前世と現在の自分の力が共鳴していることを示していた。
草原を抜け、丘を越え、古い集落跡にたどり着くと、森の奥から低い唸り声が聞こえた。
黒い影が動き、数体の魔物が姿を現す。
大きさは人の背丈ほどで、目が赤く光っている。
「リル、行くぞ」
「ええ、気をつけて」
誠人は手のひらに魔力を集中させる。
指先から放たれる光が魔物たちを包み込む。
風が巻き、木の葉が舞い上がる。
魔物はひるみ、続けざまに誠人の力で制圧された。
「……やっぱり、この力なら雑魚程度なら問題ないな」
「ええ、でも油断は禁物よ」
その後も二人は点在する遺跡や祠を巡り、前世の痕跡を確認しながら進んだ。
洞窟や小道も探索し、微かな魔力の痕跡を追う。
誠人はその都度、体内で前世と現世の力が融合する感覚を確かめ、制御法を微調整した。
夕暮れ、二人は小高い丘の上で足を止める。
遠くに次の村や町の輪郭が見える。
風が吹き、草がざわめく中、誠人は拳を軽く握った。
「この先が目標の町か……ここまで色々あったな」
「ええ、でもここまでの探索で力の進化も確認できたし、次はもっと大きな発見がありそうね」
リルは楽しげに空を見上げ、手を広げる。夕日に照らされた姿は自由で軽やかだ。
「さあ、町までの道中も気を抜かずに進もう」
「そうだな……でも、少しワクワクするな」
二人は丘を下り、次の探索ポイントへと歩みを進める。
前世の痕跡と転生後の力が融合しつつある誠人の新たな冒険は、まだ始まったばかりだった。
町での情報収集や、新たな発見が二人をさらに強く成長させるだろう。
前世の英雄の記憶を背負いながら、彼らの旅は蒼天の下、悠久の大地を駆け抜けていく。




